京都工芸繊維大学

1-2.グルタチオントランスポーターの発見

 大腸菌は生合成したグルタチオン(GSH)の一部を菌体外に蓄積します。野生株の大腸菌ではその後このGSHは速やかに減少していきます。一方、GGT欠損株ではグルタチオンの減少は緩やかになります。しかし、長時間培養を続けるとグルタチオンが減少していくことから、GGT以外にも菌体外のグルタチオンを減少させるものがある。グルタチオンのインポーターが存在するのでは?と考えました。

 そこで、グルタチオンインポーターをコードすると予想される遺伝子の検索を行いました。機能のよく分からないybiKはCysBレギュロンに属することが報告されていました。ybiKとその下流のyliABCDはオペロンを形成していると考えられました。ybiK下流のyliABCDはアミノ酸配列からペリプラズム結合タンパク質依存型ABCトランスポーターを形成すると予測されました。YliABCDはペプチドトランスポーターのペリプラズム結合タンパク質と高い相同性が見られました。以上のことから、YliABCDがグルタチオンインポーターではないかと予想しました。

グルタチオンインポーターをコードすると予想される遺伝子の検索

 トランスポートアッセイをすると、GGT欠損株ではグルタチオンの取り込みがありましたが、GGT欠損に加えてyli(A-B)にデレションを入れた株では全くグルタチオンの取り込みが見られなくなりました。一方、ybiKオペロンをのせたプラスミドを導入すると、取り込みが相補されました。また、このグルタチオン取り込みはATPase阻害剤で阻害されました。

 以上のことから、YliABCDがグルタチオントランスポーターであると結論づけました。これは、バクテリアで始めて見つかったグルタチオントランスポーターであるとともに、グルタチオンを細胞内へ取り込むABCトランスポーターとして、最初の例です。

Transport assay of YliABCD transporter

参考文献

H. Suzuki, T. Koyanagi, S. Izuka, A. Onishi, and H. Kumagai.  yliA, B, C, and Dgenes ofEscherichia coliK-12 encode a novel glutathione importer with ATP-binding cassette.  Journal of Bacteriology,187(17), 5861-5867 (2005).