記 事: タイ王国キングモンクート大学Anak先生との再会
学生との国際会議
Anak先生との再会
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タイ王国キングモンクート大学Anak先生との再会

左から,関先生,Anak先生,私,Nuttさん

【出会い】
Anak先生が所属するタイ王国キングモンクート大学(KMUTT)は,すでに本学と国際交流協定を結んでおり,建築系の先生方との交流は進んでいます.しかし,工学系分野とのコミュニケーションはありませんでした.

偶然にも昨年,Anak先生が学長代理として本学を訪問され,その流れで私の研究室を見学されました.その時に知ったのは,Anak先生の専門が私のそれと非常に近いことだけでなく,人間的な魅力でした.「ふッ」と人に引き寄せられる感覚は初めての経験でした.

【研究室間交流開始】
その時はそれで終わったのですが,記憶のどこかにAnak先生がいて,ふと研究室間の交流をしてはどうかと思い立ちました.そこでAnak先生にコンタクトしたところ,研究室間の交流は強く望んでいるとの回答でした.

しかし,私の頭の中でタイ王国は映画「王様と私」でしかなかったので,先方の事情や状況を知らずに学生の交流はできません.結局,とてつもなく忙しいAnak先生にお願いしてKMUTTを訪問しました.本学国際企画課皆様のサポートがあってこそ,それが可能となりました.


ワットポーにて(私はほとんど写真を撮らないのだが,強い力を感じて撮りました)

【学生の思い】
もう一つ重要だったのは,私が望んでも研究室所属の学生が海外での滞在を望んでいるのかという点でした.日本の現状況を考えれば,学生が自らの事柄を最優先することを否定できなかったからです.意外だったのは,彼ら全員が国際交流を望んでおり,若者らしく「自分自身に対して挑戦する姿勢」を示したことです.

マスコミは「今の若者はハングリー精神がない.だから挑戦しないし,外国へ行きたがらない」と批判的ですが,全く正しくありません.高度成長期に安定な社会で渡航が「かっこいい」から彼らは行っただけでは?下手に外国へ行けば,その人の将来が危ぶまれるような社会を作った年寄りこそ批判されるべきです.

【タイ王国】
出発当日(1月24日),まれに見る大寒波が来襲し,国内や近隣諸国へのフライトは全滅でした.幸運にも,私は定刻にKIXから出発してバンコクに到着しました.タイでは,エアポートリンクおよび地下鉄でホテルの最寄り駅に到着しました.改札装置の仕組みや時刻表がない点で,北京と同じでした(シーメンスは中国企業か?).

初日に滞在したホテルはSilomというバンコクの新宿歌舞伎町的地域でした.直感的に危ない地域だと思いました(汚さ,ごみ).日本バブルの名残で,近くには看板がすべて日本語というStreetがありました.適当にレストランに入ったところ,食事+ビール1本で500バーツ(1800円)でした.ただ,失敗なくして物事は理解できません.





滞在した学生の写真から(Anak先生のパーティを含めてたらふく食べたようです)

【タクシー】
翌日,KMUTTへ向かうため,ホテルにタクシーを依頼しました.これが曲者で,2500バーツ(9000円,通常タクシーの20倍!)払わされました.十分時間的余裕を見ていたのですが,ホテルの手配人が「いや,あなたはバンコクの交通事情を知らない.今から出発して1時間,いや2時間かかるかも」と言われ,結局,それに負けて手配されたホテルお抱えのタクシーに乗りました.先述の通り,失敗なくして物事は理解できません.

とは言え,運転手は英語が話せる楽しい人で,きれいな車(日本車)の中で,タイに来る「各種」日本人の話,いわゆる夜の話,彼の不倫の話(奥さん,子供,2番目の人の写真を見せてもらったり),中国人は好きでない話,彼の人生話やらで十分情報も得られたし,とにかく楽しかったです.またKMUTTには,スムーズに「25分」(2時間じゃないのかい!)で到着しました.

 1日貸切状態だったので,打合せもろもろ3時間経過後,先方の事務員の前で「スーと」正面玄関でお出迎えでした(ちょっとかっこいい).その上ホテルでの休息を挟んで,ホテルの正面玄関から「スーと」懇親会会場へ送ってもらいました.

結局,専用運転手を1日雇った訳で,金持ちになった感覚を満喫しました.十分満足でした.


     機械系学科の建物            Anak先生の研究設備(バイオ系)

ステントの編み機                Anak研はこんな感じ

   ゲストハウスはこんな感じ※      宿泊施設の1FはAnak先生が誘致した
                          日本料理屋

※せっかくテニスでコミュニケーションを取ろうとラケットを持参したが,タイは暑いので
ほとんど誰もテニスをしない.不完全燃焼ゆえ,とりあえず素振りをする北丸君.

【Anak先生との再会】
KMUTTでは,Anak先生のインド人の秘書に連れられて会議室へ入りました.そこには同大学のアドバイザーである阪大名誉教授の関先生が来られ,Anak先生が来られるまで話をし,非常に有用な情報(タイの実情,日本企業の話,タイへ学生を送る日本の大学の話等)を得ました.関先生,本当にありがとうございました.

しばらくしてAnak先生が,本研究室へ来たNuttさんを連れて来られ,学生交流の詳細をつめました.その後,大学の各所を紹介してもらいました.

特に印象的だったのは,KMUTTのF1フォーミュラチームの会合(結構な人数)に連れて行ってもらったことです.本学のF1チームは優勝経験がありますが,Anak先生のチームもタイの優勝チームで,日本にも来ていて10位くらいです.彼らにとって,優勝経験がある本学(KIT)は有名大学でした.

【偽教授との出会い】
私は海外へ行くと文化を求めて歩き回る癖があります.関先生のアドバイスに従い,翌日はホテルから電車で河まで出て,船に乗って王宮方面へ向かいました.

目的は博物館へ行くことだったのですが,船から降りて方向を見定めていた時,「お困りのようだが?私は近くの大学の教授だ.」と声をかけてきた人がいました.見ると,ブレザー+ネクタイの人がいました.すぐにガイドブックで調べたところ,確かに近くに芸術系大学がありました.

彼は私の目的を聞くと,「博物館は今日は休み.タイを知りたければ・・・に行って,・・・に行って,それから」と早口の英語で説明を始めました.日本人相手の「こつ」は早口の英語でしゃべって質問をさせないことなんですね.

しばらく聞いていたのですが,初めから偽であることはわかっていたので「ありがとう.とても役に立ちました.実は,私も大学の先生です」と言ったところ,彼の肩が「びくっ」と少し上がりました.「私は一人で歩くのが好きなので.ご親切にどうも(必要以上に強くシェイクハンド)」で分かれました.

なぜ偽だと思ったのか?簡単です.タイの大学人は普通,ブレザーを着ないし,ましてネクタイも締めませんから.その後,この手の人に会った日本人の先生と話したところ,パターンとしては,詐欺師分の費用を払わされて観光旅行か,高額な骨董品店や宝石店へ連れて行かれるて購入強要,です.

けれども,彼の情報は正しく,博物館が休みなのは事実で無駄が省けましたし,教えてくれた日本人が行かない寺院は素晴らしかった.経験的に面白く,とても役に立ちました.「偽教授,ありがとう.」


移動は基本タクシー                研究室にて               

先方の学生との食事                 北丸君,岡君
                            (北丸君のお父さんのお知合いとの食事)


【研究室相互交流】 
3月1日から2週間,当研究室岡君,北丸君がAnak研で,また3月7日から2週間,Anak研所属のNuttさんが当研究室で,それぞれ研究を行いました.タイでは岡君が形状記憶合金,北丸君がステントの性能改善に関わる熱処理研究を行いました.Nuttさんは,当研究室で主として三次元プリンタ製チタン合金の研究を行いました.相互に有用な経験を積んで帰国したと思います.

元世界チャンピオンの岡君はタイでその卓越したルービックキューブのを披露し,またAnak先生によれば最初は話さなかった北丸君は急に話し始め,女子学生から「ハーキュリー」と言われていたそうです(裸になったのか?).その上,彼らの写真を見せてもらったのですが,どれだけ色々行ったのかと,少々うらやましくも思いました(少なくとも,私はアユタヤへ行けなった.公務なので).

一方,Nuttさんは当研究室の安達君および古川君が一緒に活動しました.初日には,Welcome Partyを開きました.また,研究室皆で一緒に北山に登り,私の秘密の場所(「法」の上)から京都を一望しました.滞在期間中にNuttさんは好きな日本ラーメンを8回以上食べたようです.とにかく,他の学生と同様に活動し,最後の発表では「考える暇もなかった」と言っていました.

後日再々会したAnak先生によれば,「Jai(Nuttさん)は,日本人にもWarmheartedな先生や学生がいる」と言って宣伝してくれているようでした.Nuttさんは最終日に,研究室で得た知識や経験をきれいなスライドで発表してくれました.帰国後,タイでもAnak先生の前で同じ発表をして褒められたそうです.


初日のウェルカムパーティにて         安達君,古川君とすし屋にて

       Nuttさん最終日の発表                  桜の前で

Nuttさん自撮り

【Anak先生との再々会】
3月31日に京都駅で,多忙なAnak先生と再々会しました.私的にはとても楽しかったです.その際,本学学部生1〜2年生をKUTTへ送る関係から,国際企画課の見目麗しい2名の方が同伴されました.

彼女らが打合せを行った後,Anak先生と私の研究室間の相互交流の話をしました.本年度は,まず2名:2名で研究室間で学生を交換し,1月以降に予算的目処が立てば追加の交流をすることとなりました.さらに共同研究を進めるため,今後,相互にテーマを出し合うことになり,楽しみ一杯の再々会となりました.

国際交流で大切なことは,嘘がない形で話をし,それを発展させることなのだと思います.私はまた,タイへ行こうと思います(というか行きたい).名刺もらっているので,先のタクシー運転手とも会いたいし.


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