Chemical Reaction & Catalyst Design
医薬品や農薬、電子材料のような機能性物質に応用される有用有機化合物群は、多くの場合化学反応を用いて開発され生産されています。結合切断と結合形成の新たな原理を見出し、これに基づく新様式の化学反応を確立することができれば、有機合成の既存概念を刷新し合理的な分子創出が実現します。当研究室では、地球環境破壊や資源枯渇の問題が深刻化する現代社会の要請に応え、低環境負荷・省エネルギーでの物質創製に貢献する化学反応の開発に挑戦します。また、人類の健康増進に寄与し、食生活を支え、暮らしを豊かにする優れた機能性分子群の開発促進を指向し、未知有用化合物の効率的創出に資する革新的合成方法論の確立に挑戦します。これらを実現する鍵の一つは、「触媒のデザイン・創出」であり、これまでに蓄積した遷移金属触媒と有機分子触媒に関する独自の知見を基に、世界の化学反応開発を先導する研究を展開していきます。
化石燃料や植物等から容易に入手できる化合物を用い、薬や機能性材料に応用可能な有用有機化合物を直接合成することができれば、エネルギー消費を抑制し廃棄物を低減する未来志向の物質創製が実現します。C–H結合の直接官能基化はその基軸となる環境調和型化学反応ですが、効率よく選択的に進行させるのは容易ではありません。ブレイクスルーとなる新触媒原理を探求し開発を進めています。
触媒は不活性基質を活性化し化学反応を促進する特別な分子です。遷移金属触媒は中心金属と配位子から構成されますが、優れた触媒活性を発現させるには配位子構造を工夫する必要があります。遅い反応の高速化や、革新的な反応様式の実現、鏡像異性体の高度つくりわけをめざし、特徴ある触媒のデザイン・創出を行っています。
ホウ素(B)やケイ素(Si)はメタロイド元素と呼ばれ、金属と非金属の中間の性質を有しています。メタロイド元素を含む有機化合物は、有機合成のビルディングブロックとして有用ですが、近年は医農薬や機能性材料への応用が進められつつあります。このような研究展開を強力に後押しする、メタロイド元素導入の新戦略確立に取り組んでいます。
Recent Publications
In Situ Dehydrogenative Generation of Vinyl Groups Bound to Heteroatoms by the Use of Ethyl Groups as Surrogates in Iridium-Catalyzed Intramolecular C–H/C–H Coupling
Kaito Yagi, Toshimichi Ohmura, Michinori Suginome
ACS Catal., 2024, 14, 2014-2021. 10.1021/acscatal.3c05965
今なお進化するBuchwald配位子 −触媒的不斉合成の新展開− (written in Japanese)
大村 智通
月刊 化学(2024年1月号), 化学同人, 2024, 79, 70-71.
ヒドロホウ素化の常識を打ち破る! (written in Japanese)
大村 智通
ドラマチック有機合成化学ー感動の瞬間100, 有機合成化学協会編, 化学同人, 2023, 174-175.
遷移金属触媒によるsp3炭素−水素結合活性化に基づく合成反応のデザイン・創出 (written in Japanese)
大村 智通
Organometallic News, 2023, 48-53.
有機金属化学に魅せられて (written in Japanese)
大村 智通
有機合成化学協会誌 2023, 81, 364-365. 10.5059/yukigoseikyokaishi.81.364 (Open Access)
稲垣 実希(M2)
今 秋華(M2)
丸谷 知寛(M2)
安江 智香(M2)
岡本 良紀(M1)
奥田 智子(M1)
川崎 智葵(M1)
妹尾 優馬(M1)
三木田 恭平(M1)
赤丸 実祈
岡島 空舞
嶋田 千珠子
高田 悠希
中島 大輝
山本 駿太
2024.10.26(土)、第51回オルガノメタリックセミナーを本学で開催します。ぜひお越しください!
2024.9.9-11
第70回有機金属化学討論会 (大阪公立大学中百舌鳥キャンパス)において、丸谷、奥田の2名が研究成果発表を行いました。
2024.8.26-29
The 34th International Symposium on Chirality (CHIRALITY 2024、京都テルサ)において、安江が研究成果発表を行いました。