分子合成化学研究室 京都工芸繊維大学 応用化学課程 分子化学デザインコース

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研究内容

医療診断用蛍光発光センサーの開発

 特定の分子を検出する「蛍光発光センサー」は、その検出感度の高さと分析操作の簡便さのため医療診断等多方面へ応用されている。我々は蛍光発光性分子にアミジノ基を2個または4個置換させたアミジンが、ジカルボン酸と安定な会合体を形成して特異な蛍光発光を示すことを見出しており、ヒト尿中ジカルボン酸の検出にも成功している。尿中ジカルボン酸を検出することで、ジカルボン酸尿症等の代謝異常を迅速・簡便に検出するセンサーとしての利用が期待されている。種々の分子構造の蛍光発光性のアミジンを合成することで、特定のメチレン鎖長のジカルボン酸を認識して発光したり、メチレン鎖長によって発光色が異なるセンサーの開発を行なっている。

化学兵器の使用痕跡を検出する蛍光発光センサーの開発

 近年、戦争・紛争・テロなどでの化学兵器(化学剤)の使用が増加している。有機リン系化学剤は容易に気化や分解が進行するため、成分の特定やその使用を裏付けるのが困難であり、被災者の治療開始に時間を要することなどが問題となっている。当研究室では、サリンやソマンなどの有機リン系化学剤の分解物であるメチルホスホン酸やメチルホスホン酸モノエステルを認識して蛍光発光を示すセンサーの開発を行っている。懐中電灯型ブラックライトを使用することで、電気のない戦場・テロ現場でも検出可能な分析方法の開発を目指している。

機械的刺激に応答する蛍光発光性分子の開発

 近年、すりつぶしなどの力学的刺激によって蛍光発光色の変化を引き起こすメカノフルオロクロミック材料が注目されている。これらの材料は圧力などの外部刺激のセンサーとしての利用や、刺激を与えたところのみ色が変化する特性を利用して、書き換え可能な記録デバイスなどへの応用が期待されている。メカノフルオロクロミック分子の多くが、金属原子や多数の芳香族環を含んでおり、シンプルな化合物での報告例は少ない。当研究室ではアントラセンにフェニル基が置換したシンプルな構造のフェニルアントラセン誘導体の固体が、すりつぶしを行うことで発光色が変化するメカノクロミズム特性を示すことを見出した。また、すりつぶし後の固体は加熱や溶媒蒸気に曝すことで、もとの発光色を示し、可逆的に発光色をコントロールできることを明らかにしている。