1. 光学顕微鏡取り扱い上の注意

 a. 持ち運びの注意

  顕微鏡を持ち運ぶときは、右手で鏡腕を握り、左手で鏡台(鏡脚)を下から支える。

 b. 手入れ

  レンズやコンデンサーについた埃は、レンズクリーナー(またはキムワイプ)で軽く拭く。どのような場合もレンズのガラス面に手を触れないこと。


 

2. 観察の方法

 a. 準備と照明

  一般の光学顕微鏡は同高焦準に作られており、10倍の対物レンズで焦準を合わせたのち40倍の対物レンズに変えた場合、微動つまみ1/2回転以内で焦準が合う。対物レンズを変えるためにレボルバーを回す時は、必ずレボルバーの「ぎざぎざ」の部分を持って回すこと。対物レンズに指をかけて回すのは、光軸を狂わせる原因になるので良くない。

  双眼顕微鏡の場合はうまく両眼視ができるように、自分の眼幅に合わせて左右の接眼レンズの幅を調節する。また次のようにして左右の視度差を補正する。右眼で右接眼レンズを覗き標本にピントを合わせ、続いて左眼で左の接眼レンズを覗き、左接眼レンズの視度調節リングを回して合焦させる。

  照明光は数枚のレンズの組み合わせからなるコンデンサーで集光され標本に達する。コンデンサーの絞りの調節の際には、まず標本に焦準し、絞りを小さくすると、絞りの縁が黒い輪となって視野に見える。そこで絞りを次第に開いてゆき、対物レンズの黒い縁よりやや内側で止める。このとき最も見やすい像になるはずである。対物レンズの倍率を変える度にこの操作を行わなければならない。40倍、100倍の観察の時にはコンデンサーの高さは一番高い位置にまで上げる。10倍の時にはステージから適当に下げて用いた方がよい。

 b. まず弱拡大、それから強拡大で

  焦準があったら、左手で微動つまみを調節しながら右手でスケッチする。初めは必ず弱拡大で観察し、その後強拡大で観察すること。高倍率になるほど、一時には標本のある一部にしか焦点が合わないであろう。従って、全体的な像の正確な姿をとらえようとするためには、観察中微動つまみは連続的にごくゆっくりと動かすことになる。

 

3. 観察および記載のしかたについての注意点

  標本を観察する際には、顕微鏡で観察する前にまず手にとって肉眼で調べる。次に弱拡大で観察し、標本の概観を頭に入れる。続いて強拡大で注意深く観察する。標本の全体を見て、典型的な視野を選択するのは重要で基本的な訓練の一つである。

  スケッチは標本を、自身の目と頭脳でどのように観察し判断し理解したかを端的に表現するものである。

  スケッチには必ず材料と各部の名称を記入する。

  長時間かけて美しい絵を描くことが目的ではない。標本の内容と出来映えを評価し、時間の配分を考えて有効な観察と記録を行うように努力しよう。

 

4. 主な染色法について

  1. クリューバー・バレラ染色:神経線維の髄鞘の染色に用いられる。脂質に親和性のあるルクソール・ファースト青により髄鞘やミトコンドリアなどの多重膜構造が青く染まる。
  2. 鍍銀染色:銀塩液の銀を還元することで細胞構造に沈着させ黒染する染色法。重要な神経染色法であり多数の変法が存在する。処理によって様々な構造が染め出される。
  3. マッソン・ゴールドナー染色:結合組織を染めるための染色法。核をヘマトキシリンで染めるため明瞭な細胞像が得られ情報量の多い標本をもたらす。このため一般染色としても用いられる。
  4. ヘマトキシリン・エオジン染色:代表的な一般染色法であり広く使われる。塩基性色素のヘマトキシリンで核(DNAに富む)やエルガストプラズマ(RNAに富む細胞質)が青紫色に染まり、酸性色素であるエオジンで多くの細胞質が種々な程度に赤く、分泌顆粒・ミトコンドリアなどが赤く、膠原繊維が淡紅色に染まる。
  5. PAS反応(糖の検出):多糖類の染色。過ヨウ素酸の作用でグリコールから2つのアルデヒドを形成させ、これにSCHIFF試薬を作用させて呈色させるというものである。この反応によって単純な多糖類、中性および酸性粘液タンパク、あるいはレクチンが陽性に染色され、酸性粘液多糖類は陰性、中性粘液多糖類は条件により反応する。