多糖類検出のためもっともよく使用される反応である。PAS反応はperiodic acid-SCIFF反応の略で、ドイツでPJS反応と略されることがある。この反応の原理は、過ヨウ素酸の作用でグリコールから2つのアルデヒドを形成させ、これにSCHIFF試薬を作用させて呈色させるというものである。この反応によって単純な多糖類、中性および酸性粘液タンパク、あるいはレクチンが陽性に染色され、酸性粘液多糖類は陰性、中性粘液多糖類は条件により反応する。
SCHIFF試薬は、塩基性フクシンを過剰の亜硫酸と混合して脱色したもので、正確にはC-sulfonic N-sulfonic acid leuco parafuchsine (4,4-aminosulfintriphenilmethane sulfonic acid) である。この試薬はアルデヒドが存在すると赤紫色の化合物を形成する。その際、2分子のアルデヒドと1分子の試薬とが結合する。
方法:
- 切片を脱パラフィン後蒸留水で十分洗い、0.5%過ヨウ素酸水溶液に入れる。5分。
- 水道水で洗った後、さらに蒸留水ですすぐ。
- SCHIFF試薬につける。15分。
- SO2洗浄液で洗う。2分3回。
- 流水で洗う。
- アルコール系列で脱水、透徹、封入。
SCHIFF試薬の作り方:
- 塩基性フクシン1gを煮沸した蒸留水200ccの中に加える。激しく泡立つので少量ずつ注意しながら入れる。
- よく混合して完全に色素が溶解したら50゚Cまで冷却し、濾過した後1N塩酸20ccを加える。
- さらに25゚Cまで冷やし、重亜硫酸ナトリウム(亜硫酸水素ナトリウム; NaHSO3)1gを加える。
- 濃紅紫色の液は次第に退色し、24〜48時間後に薄桃色または薄い麦色になる。
注)
- 使用するフクシンは塩基性フクシンを用いる。
- 1N塩酸は濃塩酸(比重1.16)98.3ccに蒸留水を加え、1,000ccにすることにより作製する。
- 液は冷暗所に保存し、空気があまり入らないように適当な大きさの容器一杯に満たして入れておく。
- 活性炭の粉末(100ccに対して0.25g)を加えて、撹拌後濾過すると無色透明な液が得られる。ただしこの操作は必須ではない。
- 液は1ヶ月以上経ると赤みを帯びてくる。これはフクシンが再生されたためで、厳密な組織化学的反応に使用できなくなる。また、Schiff試薬は塩基や緩衝能力のある物質により中性化されるとフクシンを再生する。この場合には多糖類以外の組織成分が染色されてしまう。
SO2洗浄液の作り方:
- 以下を混合する。
・10%重亜硫酸ナトリウム(結晶)水溶液 10cc
・1N塩酸 10cc
・水道水 200cc
この液は繰り返し使用すると桃色になるから、そのときは新しいものと取りかえる。
結果:
- 組織切片中に含まれる多くの多糖類が紫紅色あるいは赤紅色に染まる。腸管の粘膜や十分栄養を摂取したあとの肝臓は紫紅色となり、腎臓の基底膜、皮膚、格子線維などは紫紅色〜赤に染まる。PAS反応で呈色した物質はPAS陽性物質、逆に呈色しない物質はPAS陰性物質とよぶ。
注)
- 反応の判定には、常に陽性に染まる対照標本を同時に染色することが必要である。
- 重染色としては、第一にヘマトキシリンによる核染色が推奨される。核酸が酸化されて塩基性色素に対する親和性が増しているので、染色時間は普通の時より短くて良い。
参照文献:組織学研究法 佐野豊 著(南山堂)
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