Research

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かご型シルセスキオキサン元素ブロック材料の開拓

かご型スルセスキオキサンは剛直な無機元素ブロックに柔軟な有機鎖が元素レベルで複合化した構造の明確な元素ブロックであり、 その対称性や有機置換基を制御することで、これまでになかった性質を発現する。またその連結方法や空間配置を精密に制御することで、 同一組成ながら、そのバルク物性である熱特性や光学特性が異なる例や、透明性と結晶性という従来はトレードオフの考えられる特性を併せ持つなど、 これまでになかった物性・機能を発現する可能性があることが示されている。 置換基の制御だけでなく無機骨格ユニットの立体構造制御の物性に及ぼす影響の体系的研究によって、 将来の物性要求に対応できる分子レベルで構造を精密制御された元素ブロック高分子材料の創出が期待される。
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単一成分シルセスキオキサン分子性材料の開拓

分子レベルで構造が制御されたシルセスキオキサンとして、単純なアルキル鎖を有するかご型シルセスキオキサン(POSS)の多くは 結晶性の高い単一化合物であるため成形加工性に乏しく、有機高分子をマトリックスとしたフィラーや、ポリマー側鎖への導入、 または架橋剤を用いたネットワーク構造形成などへの利用が開発されているが、POSS単独での材料応用はこれまでほとんど達成されていません。 我々は対称性を低下させることで結晶化が抑制され単一のPOSS化合物のみで透明膜が得られるのではないかというコンセプトのもと、 ダンベル型またはスター型POSS誘導体を合成することで、単一のPOSS化合物が低温処理による成型加工可能な熱可塑性材料と成り得ることを初めて示しました。 さらに三脚型POSS誘導体など異種の構造のPOSSユニットの組み合わせを選択することによってそれらの特性を制御できる単一成分のハイブリッド材料の開発を行っています。
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かご型シルセスキオキサンを基盤とした表面偏析技術の開拓

表面改質法の中で表面偏析法は少量添加する異種セグメントの樹脂中での自己組織化を利用しており、 特別な装置や化学処理などの多段階工程が不必要な低エネルギープロセスである。 一般的にはエンタルピー的に有利な疎水性成分が表面偏析する。 一方で防曇性や耐着雪性に優れた材料のため樹脂表面の親水化の要望が高いが、親水性セグメントのエンタルピー的不利のため、 表面偏析による親水化は一般的には困難である。私たちは柔軟な親水性有機鎖を各頂点に有するご型シルセスキオキサン化合物が 単純なキャスト法でエントロピー駆動型表面偏析による表面親水化に成功しています。
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機能創製を志向した有機ヒ素化学の開拓

ヒ素化合物は古くから毒物として使用され、極めて猛毒というイメージが広く一般に知れ渡っているため、 ヒ化ガリウム単結晶などの電子材料を除いて、現在では材料としてヒ素を利用しようという試みはほとんど行われていません。 一方、ある種の微生物や藻類はヒ素を取込んで体内で毒性の低い有機ヒ素化合物に変換することが知られています。 つまりヒ素化合物のうち猛毒なものは亜ヒ酸などの無機ヒ素であり、ヒ素を有機化することによりその毒性は一般的に大きく低下することになります。 さらに、ヒ素は必須元素であることが知られていて、最近では猛毒の亜ヒ酸が白血病の治療薬として使われています。 私たちは不揮発性ヒ素前駆体から容易に誘導できる様々なヒ素中間体を用いた安全かつ簡便に調製できる有用な炭素-ヒ素結合形成法を開発することで、 多種多様な有機ヒ素化合物や高分子が合成できるようになりました。これらの技術を基盤とし、 ヒ素化合物ならではの特性を理解することで従来にはない有用機能を有する材料創出に向けた研究を進めています。
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ヒ素元素特性理解による有機高分子系光増感剤の開発

共役系高分子にヒ素元素を導入すると、光照射によって空気中で一重項酸素を効率良く発生し、 その量子収率は単独の共役系高分子増感剤では最も高い54%であり、 さらに一重項酸素が発生するにも関わらず24時間経過しても全く分解が認められないという極めて優れた耐性を発現するヒ素含有共役系高分子を見出した。 一般的な有機色素増感剤では、自分自身が発生した一重項酸素によって、分解される。 これに対してこの結果は強力な酸化剤である一重項酸素に対してヒ素含有共役系高分子は極めて優れた耐性を有していることを示すものであり、 リサイクル可能な高効率光酸化触媒としての応用が期待される。
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生物によって生み出される有機‐無機複合材料の人工的作成技術の創製

生物は従来の技術では達成されないような極めて高性能高機能な有機-無機ナノ複合体を水中で極めて穏和な条件下で生み出しています。 私たちは高分子配位子とカルシウムイオンとの高分子錯体形成動的制御を基盤とした独自の手法である、 粒径、形態および安定性を任意に制御できる炭酸カルシウム-有機高分子ナノ複合微粒子作製法を開発しました。
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