研究内容

原子衝突を用いた表面改質と新物質創製

 宇宙の誕生以来,「原子衝突」を繰り返しながら,原子・分子・物質・生命までもが誕生してきました.我々は,広いエネルギー範囲での原子衝突過程を,イオンビームとプラズマを利用して研究しています.その応用として,低圧プラズマ・低エネルギーイオンビームによる金属ナノ粒子の表面改質および金属ナノワイヤの創製,高速イオンビームによる特殊無機材料表面修飾と表面高機能化に取り組んでおります.
 低圧Arプラズマを利用したAgナノ粒子表面改質の研究は、米国プラズマ発生装置メーカーのホームページで取り上げられております.
高配向性黒鉛のイオンビーム照射前のリップルパターン構造 高配向性黒鉛のイオンビーム照射後のリップルパターン構造

新規環境触媒材料の開発

 CeO2-ZrO2固溶体(CZ)で代表される酸素貯蔵材料は,自動車触媒として必要不可欠な材料です.我々は,固体内部に酸化物イオン欠陥を有するFe系複合酸化物が既存のCZを越える酸素貯蔵能を有することを,放射光X線吸収分光法等を利用して見出しました.また,この材料を活用したPd触媒は自動車排ガス浄化に極めて有効に作用し,表面だけでなく固体内部も触媒反応に大きく関与していることを明らかにしました.これらの研究成果を背景として,年々深刻化していくことが予想される環境汚染や石油資源の枯渇問題の解決を目指して,「環境・エネルギー」の観点から,新規触媒材料の開発を進めています.

粒子線による物質キャラクタリゼーション

 イオン加速器から得られる高速イオンビームを使って,材料表面層(約1 μm)の組成分析(元素の種類と濃度)や構造評価(結晶構造・結晶性)を行っております.また,イオン加速器を利用することなく,放射性同位体を用いた表面分析技術を開発しています.さらに,X線光電子分光を利用したリアルナノ・サブナノ構造体のサイズ評価法の確立を目指しております.

省エネルギー型無機材料合成法による金属酸化物ナノ結晶の合成

 グリコール等の有機溶媒を利用した非水系ソルボサーマル法により様々な高機能性無機材料の開発を行っています.本処方は,有機化学特有の反応形式をも利用しえるため,300 ℃以下の穏やかな条件で金属酸化物を合成できる特徴があります.我々はこれまでに,ソルボサーマル法を活用し,常法では得ることのできない形態や欠陥構造を持つ数多くの金属酸化物ナノ結晶の合成に成功しています.ソルボサーマル法という特異な反応場で合成された材料の特徴を生かして,固体触媒の飛躍的な機能向上を目指し,研究を進めています.