東京大学物性研短期研究会
ガラスに関連する分野の最先端研究
2024年10月30日―11月1日
研究会趣旨
ガラス転移温度(Tg)で非晶質な構造を保ったまま流動性を失いガラス状態へと遷移するガラス転移は様々な物質系に遍在している.応用面でも,長期に安定な記憶媒体,吸収されやすい薬剤の開発,低温での生体物質の保護機構の解明などガラス状態が関係する現象は多岐にわたっており,ガラス状態およびガラス転移の機構の解明は,現代社会をより豊かにする上で欠かせない要素である.
このガラスを理解するにあたり,魅力であると同時に,その研究を難しくしているのは,緩和時間がガラス転移温度(Tg)に近づく際に発散的に増大することであろう。この長大な緩和時間を回避する手法として,実験的には真空物理蒸着法を用いて高密度の超安定ガラスを作成する方法、理論的には過冷却状態にある液体中の粒子を仮想的に不動化(ピン)するランダムピニングという手法を用いて実効的なガラス転移温度を引き上げる方法,数値計算の観点からは,スワップモンテカルロと呼ばれる平衡化を加速する手法や,機械学習を用いて安定構造を探る試みも注目を集めている.その他,微視的な物理量をターゲットに,液体状態から冷却してTgに近づくと明確になる静的・動的な不均一性を構造解析や誘電緩和,NMR測定により検出することを目指す試みも依然として活発である.
関連分野として,アクティブマター,生体内流動,蛋白質、粉体、スピングラス、電荷ガラスのような遅いダイナミクスを持つ系の性質をガラス研究の知見を援用して理解しようという試みも近年では増加している.ガラス自身の物性も、ボゾンピークのような問題に加え、エイジングや結晶化も再注目されている。
こうした状況において、ガラスに関わる実験、理論、数値計算の研究者、さらには、アクティブマター,蛋白質、粉体、固体物理(スピン・電荷のガラス)などの周辺分野の研究者が一同に会し、将来の研究の方向について議論することは有意義である。物性研は20年以上にわたりガラス分野の研究会を主催してきている。本研究会では,これまでの参加者に加え,周辺分野を含め将来に向けて積極的な交流を図る場としたい.
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研究会情報
日時:2024年10月30日(水) 10:00ごろ ~ 11月1日(金) 17:00ごろ(3日間)
場所:東京大学物性研究所 柏図書館メディアホール(〒277-8581 千葉県柏市柏の葉5-1-5)
主催:東京大学物性研究所
定員:200名
使用言語 : 日本語または英語(外国人の発表も歓迎します)
参加費:無料
世話人:辰巳 創一(京都工芸繊維大学)、古府 麻衣子(日本原子力研究開発機構)、山室 修(東京大学物性研)、池田 昌司(東京大学大学院総合文化研究科)、齋藤 真器名(東北大学理学研究科)、川﨑 猛史(名古屋大学大学院理学研究科)、秋葉 宙(東京大学物性研)
連絡先:辰巳 創一(statsumi@kit.ac.jp, 075-724-7738)
事務連絡先:本田裕子(y-honda@issp.u-tokyo.ac.jp, 04-7136-3374)
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発表について
概要集:こちらより概要集を公開しておりますので,ご確認ください.
ポスター発表:講演会場横のスペースにポスター用の発表スペースを用意しております.ポスターの発表時間は10月31日 15:30 - 18:00 としておりますが,会期中は張り出しておいて構いませんので,該当の場所に各自貼り出して下さい.スペースは,縦120cm×横90cmになります.
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参加の申し込み及びアブストラクトの提出
申込方法:受付ページより参加申し込み,アブストラクトの提出,宿泊・旅費援助申請,懇親会の申込を行う様になっております(Google form 使用)。下記の案内に従い、申込をお願いいたします。
期日:申し込みは締め切りました.飛び込みでのポスターの発表を希望する方は上記連絡先か,当日直接スタッフにご連絡ください.
アブストラクト:A5の雛形をこちらからダウンロードし,記入後にPDFに変換したものをご提出ください.
懇親会:10月31日にカフェテリアにて,懇親会を開催いたします.費用は学生3,000円,PD以上5,000円となります.受付ページから入力できますので,申し込み時に懇親会への参加の有無も入力してください.懇親会だけの参加も歓迎いたします.変更については,10月24日まで受け付けます.
ゲストハウスの申し込み及び旅費援助については締め切りました.
なお,当日の飛び入りも歓迎いたしますが,研究会の開催を文科省に報告する必要があるため,参加のみの方についても、出来る限り受付ページより申し込んでいただけますよう,よろしくお願いいたします.
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プログラム
10月30日 |
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開会 |
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10:30 |
所長挨拶・趣旨説明 |
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特別講演 |
座長;辰巳 創一 |
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10:45 |
山室 修 |
東大物性研 |
分子ガラスの熱力学、構造、フォノン |
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11:30 |
川﨑 猛史 |
名大・物理 |
ジャミング転移と多様な非線形レオロジーの統一的理解 |
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昼休憩 |
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ガラス転移1 |
座長;吉野 元 |
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13:00 |
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田中 肇 |
東大先端研 |
ガラス形成液体における遅いダイナミクスと協同性の構造的起源 |
13:25 |
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金 鋼 |
阪大基礎工 |
深層学習によるガラスの特徴量抽出 |
13:50 |
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柳島 大輝 |
京大理 |
局所ビリアル応力均一化(VHG)による超安定ガラスの形成・VHG法の改良 |
14:15 |
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古川 亮 |
東大生産研 |
過冷却液体における Stokes-Einstein則の破れについて |
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ジャミング1 |
座長;川崎 猛史 |
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14:50 |
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桂木 洋光 |
阪大理 |
磁石粒子を用いた二分散性粒子系配置の一様な無秩序化 |
15:15 |
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早川 尚男 |
京大基研 |
潤滑と摩擦のクロスオーバーによる非線形レオロジー |
15:40 |
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大槻 道夫 |
阪大基礎工 |
粉体流動におけるジャミング転移 |
16:05 |
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Kianoosh Taghizadeh |
京産大 |
Particle networks in granular mixtures by X-ray tomography |
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ガラス転移2 |
座長;田中 肇 |
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16:40 |
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吉野 元 |
阪大CMC |
空間変化するガラス物性を記述する第一原理的平均場理論の構築 |
17:05 |
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西川 宜彦 |
北里大 |
格子ガラス模型の協同的な緩和ダイナミクスと熱力学的性質の関係 |
17:30 |
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齋藤 一弥 |
筑波大CCS・阪大院理 |
マクロに縮退した最安定相に相転移するスピンモデル |
17:55 |
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小田垣 孝 |
科教総研 |
ガラス形成物質の温度変化後のエージングについて |
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10月31日 |
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特別講演 |
座長;古府 麻衣子 |
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9:00 |
鹿野田 一司 |
東大新領域 |
有機三角格子物質に実現する電子のガラス |
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電子・スピンガラス1 |
座長;堀田 知佐 |
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9:45 |
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中澤 康浩 |
阪大 |
電子相関に誘引されるフォノンのガラス状態の熱力学的特徴 |
10:10 |
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宇田川 将文 |
学習院大 |
幾何学的フラストレーションから生じる局所保存則と電荷ガラス現象 |
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電子・スピンガラス2 |
座長;鹿野田 一司 |
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10:45 |
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堀田 知佐 |
東大総合文化 |
固体物質中のグラス |
11:10 |
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山下 智史 |
阪大院理 |
電場制御による電荷ガラス状態 |
11:35 |
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古府 麻衣子 |
原子力機構 |
スピングラスの磁気ボゾンピーク |
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昼休憩 |
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無機ガラス・金属ガラス |
座長;辰巳 創一 |
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13:00 |
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小原 真司 |
NIMS |
正四面体構造を持つ非晶質物質の中距離構造 |
13:25 |
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市坪 哲 |
東北大金研 |
フラジャイル金属ガラスにおける構造不均一性の起源 |
13:50 |
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佐々木 海渡 |
東海大理 |
グリセロール水溶液の高圧その場誘電緩和測定とガラス転移 |
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ソフトマター |
座長;深尾 浩次 |
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14:25 |
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富永 圭介 |
神戸大分子フォト |
広帯域誘電分光と分子動力学シミュレーションによる水和したソフトマターのダイナミクス;動力学転移様の振舞いについて |
14:50 |
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水野 英如 |
東大院総合文化 |
散逸があるアモルファス固体の有効媒質理論 |
15:15 |
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栗田 玲 |
都立大物理 |
泡沫における気泡と液体の運動学的結合 |
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15:40 |
ポスターセッション |
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18:00 |
懇親会@カフェテリア |
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11月1日 |
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アクティブガラス |
座長;池田 昌司 |
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9:00 |
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宮崎 州正 |
名大・物理 |
Hyperuniforimityとアクティブジャミング、アクティブガラス、アクティブ結晶 |
9:25 |
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水野 大介 |
九大 |
ガラス的細胞質の非平衡揺らぎと自己組織化臨界レオロジー |
9:50 |
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吉井 究 |
名大理 |
変形粒子系におけるガラス転移のフラジリティ |
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高分子 |
座長;宮崎 州正 |
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10:25 |
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深尾 浩次 |
立命館大 |
高分子系での遅い過程とエージングダイナミクス |
10:50 |
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戸田 昭彦 |
広島大先進理工 |
温度変調・高速DSC 法によるエンタルピー回復のキネティクスと緩和 |
11:15 |
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畝山 多加志 |
名大・工 |
高分子ガラスの線形粘弾性緩和とその温度依存性 |
11:40 |
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石川 満 |
城西大理化 |
蛍光単一分子プローブを使って眺めたガラス転移関連の異風景 |
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昼休憩 |
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ジャミング2・ボゾンピーク |
座長;古川 亮 |
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13:05 |
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瀬戸 亮平 |
Wenzhou Institute, UCAS |
摩擦粒子懸濁液の流体モデルについて |
13:30 |
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池田 昌司 |
東大総合文化 |
ソフトジャム固体における異常粘性損失とボゾンピークの関係 |
13:55 |
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森 龍也 |
筑波大学 |
不均一弾性体理論を用いたガラスのボゾンピークスペクトルからのナノ機械特性抽出 |
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ガラス構造 |
座長;古府 麻衣子 |
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14:30 |
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尾原 幸治 |
島根大 |
イオン伝導ガラスにおける分子振動と Li イオン輸送 |
14:55 |
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平田 秋彦 |
早大 |
オングストロームビーム電子回折によるガラスの構造解析 |
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結晶化・構造緩和 |
座長;山室 修 |
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15:30 |
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川上 亘作 |
NIMS |
ガラス/過冷却液体状態の有機低分子の結晶核形成に関する考察 |
15:55 |
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髙羽 悠樹 |
東大総合文化 |
熱にのみ運動が駆動されるガラスで観察されるアバランチ臨界性 |
16:15 |
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HAN XUE |
NIMS |
Influence of Pore Size of Mesoporous Silica on Physical Stability of Overloaded Celecoxib Glass |
16:35 |
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辰巳 創一 |
京工繊 |
超安定蒸着フェノールフタレインガラスにおける sub-Tg endotherm の発見 |
閉会 |
ポスターセッション; 10月31日 15:30 - 18:00 |
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P1. 野嵜 龍介 |
北海道大学 |
過冷却液体はガラス転移温度に近づいても過冷却液体か? |
P2. 吉川 航平 |
大阪大学 |
水の局所秩序を特徴づける秩序変数の機械学習による探索 |
P3. 奥村 皇太 |
立命館大院理工 |
P2VP/P4VPh ブレンド系のガラス転移温度とフラジリティ評価 |
P4. 登 弘樹 |
立命館大学 |
ナノ細孔内でのイオン性液晶の相転移とダイナミクス |
P5. 池田 晴國 |
学習院物理 |
量子ゆらぎが自由体積に与える影響 :一粒子模型による解析 |
P6. 齋藤 駿一 |
東大理 |
ラポナイト水溶液における不均一構造のエイジングとその直接観察 |
P7. 古野 伊吹 |
京工繊大 |
超安定蒸着フェノールフタレインガラスの熱特性 |
P8. 山口 智之 |
京工繊大 |
α-methyl styrene 系におけるダイマー・ポリマー混合系のガラス転移のポリマー分子量 依存性 |
P9. 高山 宗一郎 |
京工繊大 |
超安定蒸着フェノールフタレインガラスの表面構造 |
P10. 佐々木 海渡 |
東海大理 |
ポリアモルフィック転移前後でのマンニトールのβ緩和 |
P11. Min Liu |
東大総文 |
Study of relations between low-frequency localized vibrations and static structures in glasses via deep learning |
P12. 佐々木 勇人 |
阪大宇宙地球 |
液面浮遊粒子層のシアジャミング:スロー地震のメカニズム理解を目指して |
P13. 能登滉太 |
京大基研 |
拡張されたヘッセ行列法による不安定モードの記述 |
P14. 名越 篤史 |
国士大理工 |
シリカ細孔の形状に依存したトリステアリンの結晶化挙動 |
P15. 樋口 将馬 |
東海大理 |
氷結フルクトース水溶液の誘電緩和と氷構造の関係 |
P16. 小田垣 孝 |
科教総研 |
SAP を説明する一つの現象論 |
P17. 山室 憲子 |
東京電機大 |
架橋デキストランゲル Sephadex G-25 に吸着・内包した水の凍結・融解挙動 |
P18. 髙松 宣道 |
東大物性研 |
DNAオリガミ製ナノスプリングを用いた Kinesin-3モータータンパク質 KIF1Aの力計測 |
P19. 後藤 頌太 |
阪大院基礎工 |
トポロジカルガラスの起源解明:環状高分子へのパーシステントホモロジー解析 |
P20. 荒井 祐嘉 |
東海大理 |
氷結した高分子水溶液中の氷結晶構造と氷の緩和 |
P21. K.P Safna Hussan |
東海大理 |
Formulation and Evaluation of Amorphous Solid Dispersions of Erlotinib HCl |
P22. 野地 隼平 |
東大物性研 |
濃厚コロイド懸濁液の緩和過程における近接場の流体力学的な相互作用 |
P23. 小林 拓矢 |
埼玉大理 |
ESR 測定によるθ-(BEDT-TTF)2RbZn(SCN)4 の電荷ガラス状態と電荷結晶化の研究 |
P24. 椎橋 裕樹 |
埼玉大理 |
θ-(BEDT-TTF)2RbZn(SCN)4 の電荷ガラス状態と電荷結晶化に対する不純物効果 |
P25. 柳沢 直也 |
東大総合文化 |
分子量が極めて多分散な線状高分子PEG水溶液のシアシニング |
P26. 佐藤 駿 |
東大物性研 |
金属ー有機構造体 MIL-101 に吸蔵されたアセトニトリルおよび Mg 電解質の中性子準弾性散乱と熱容量 |
P27. Menghan Zhang |
東大物性研 |
Structure and Dynamics of Amorphous Methane Hydrate |
P28. 秋葉 宙 |
東大物性研 |
中性子分光器 AGNES を用いた強靭性および紫外線応答性ポリマーガラスの研究 |