ビスマス系III-V族半金属半導体の創製とデバイス応用 †ビスマス系III-V族半金属半導体は、V族元素としてビスマス(Bi)を含むIII-V族半導体です。この半導体は半金属と半導体の合金と考えられ、禁制帯幅の温度係数の低減など特異な物性が期待できます。従来、Biを含むIII-V族半導体の製作は困難と考えられてきました。本研究室は世界に先駆けてビスマス系化合物半導体の創製とデバイス製作を進めてきました。最近では、高品質のビスマス系化合物半導体が得られるようになり、レーザーダイオードを試作しレーザ発振を実現しています。 応用物理学会の会誌「応用物理」に本研究の解説が掲載されています。応用物理 第85巻 第2号(2016)113-117 ページ 主な発表論文:電流注入レーザ発振、1.2 μmでのレーザ発振、光励起によるGaAsBiのレーザ発振、GaAsBi/GaAs超格子の実現、GaNAsBiの創製、InGaAsBiの創製、GaAsBiのMBE成長、GaAsBiの局在準位と正孔移動度 Si-SiC複合基板(Si-on-SiC)の開発とデバイス応用 †シリコンカーバイド(SiC)の熱伝導率はシリコンの約3倍で銅よりも大きく、また、電気的には半絶縁性、p形、n形のいずれにも制御可能です。このことからSiCは、単独でデバイスに応用することはもとより、他の半導体と組み合わせることで、新しいデバイスを実現できる可能性を秘めています。 例えば、SOI(silicon-on-insulator) 構造やパワートランジスタにおいて、放熱は重要な問題です。SOI構造では、熱伝導率がシリコン(Si)より小さい二酸化シリコン(SiO2)層があるため、SOI構造上のデバイスの温度は、自己発熱により上昇し、特性劣化を招きます。このため、SiCを絶縁基板とするSOI基板上にシリコンデバイスを製作することで、デバイスから発生する熱を効率的に逃がすことができます。また、よりハイパワー、高温下での動作も期待できます。さらに、SiCの導電性制御(pn制御)により、良好な熱伝導と電気伝導を兼ね備えた基板構造も実現できます。 本研究室では、単結晶SiCウェハにSiウェハを直接、貼り合わせたSi-on-SiC基板を提案し、その基板の製作とデバイス応用を進めています。 主な発表論文:Si-on-SiC基板の製作とSiデバイス応用(高温動作を含む)、MOSFETにおける自己発熱による温度上昇の抑制 インライン検査装置の開発に向けたシリコン極微構造の物性評価 †シリコンデバイスは、集積回路(CPUやメモリなど)を中心として大きく発展し、現代社会を支える基盤技術となりました。一見、シリコンデバイスはシリコン単体により成り立っているように思われます。しかし、仔細にみるとシリコンデバイスは、多元化合物や多元混合物から成り立っていることが分かります。例えば、MOSFETのソースやドレインの近傍には、シリコンのほかに、ホウ素などのドーパント、フッ素、ゲルマニウム、電極金属(ニッケルなど)がそれぞれ数パーセント近く含まれています。さらにこれらの元素はナノメートルレベルで、深さ方向や横方向に濃度分布をもっています。このような極めて複雑な材料系の性質を、的確に理解し、シリコンテクノロジーに寄与することを目指しています。 本テーマでは、製造ラインや研究開発拠点で製作された試料を、Deep Level Transient Spectroscopy(DLTS)法などの電気的測定や、ホトルミネセンス法、ラマン分光法を用いて詳細に評価しています。最終的には、得られた知見を、インライン検査装置(生産現場における検査装置)に応用することを目指しています。 主な発表論文:極浅接合の評価 ラマン分光、ホトルミネセンス、DLTS、シリコン極浅接合のホトルミネセンスのまとめ 顕微ホトルミネセンス法による結晶欠陥評価 †通常の光学レンズを用いた顕微ホトルミネセンス(PL)観測装置は,半導体材料やデバイスの局所的な電子構造を解析するために広く用いられてきました。通常の光学系を用いた顕微測定では、解像度は観測波長の半分程度に制限されますが、装置構成が簡単で操作性もよく、高感度の光学測定が簡便にできます。すでに、室温測定では、高解像度の対物レンズを用いて、サブミクロンの解像度で顕微PL測定が広く行われています。 本研究室では、本研究では、操作性良く、波長の半分程度の解像度をもつ顕微PL測定を極低温で行うために、顕微PL装置を開発しました。これを用いて、シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)の極低温顕微PL像を観測し、主に結晶欠陥の評価を行っています。 GaNパワーデバイスに関する研究 †(工事中) 酸化物半導体に関する研究 †(工事中) |