誘電体を用いたメタマテリアル

この研究課題では,人工構造体の磁気的性質の一つである実効透磁率の値を人為的に操作する方法として, 高い誘電率を有する誘電体の塊(形状としては球,円柱,立方体など) の集合体を用いたメタマテリアルの研究に取り組んでいます. メタマテリアルの研究では,一般に,構造体の磁気的性質を操作する方法として,スプリットリング共振器 などの金属微小構造体の集合体を用いる場合が多い. これに対して,本研究の特徴は,非金属である誘電体で人工磁気構造体を実現しているところにあります.

誘電体は一般に,入射してくる電磁波に対して電気的性質にしか影響を与えません. しかし誘電体に限らず,金属からなる場合でもそうですが,構造体が共振状態に近づくと, 時間的に振動する磁気双極子(場合によっては電気双極子あるいはそれらの多重双極子)のような振舞いをするので, 波長に比べて十分小さな構造体は,原子・分子が磁気分極(あるいは電気分極)を起こしたのと 類似の性質を示します。 その共振状態を上手く選択利用することにより,構造体の実効透磁率(あるいは実効誘電率)の値を 変えることができます。もちろん正の値だけではなく,値を0にしたり, 負の値を持たせたりすることができます。

最近の研究成果では,この誘電体共振器の集合体から負の実効透磁率を実現し,さらに負の誘電率 を与える金属メッシュ板構造との組み合わせからなる積層構造を用いて3次元負屈折率構造 (独立な3方向に対して負屈折率)を実現しています.


研究成果発表



Last update: April 5, 2012

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