細胞・組織培養法

背景

 生体の一部あるいは腫瘍組織の一部を体外に取り出し、適当な培地の下、培養器の中で生かし続ける技術が培養法である。培養する生体の構成要素のレベルによって、細胞培養・組織培養・器官培養のように区別される。組織培養・器官培養は、初代培養のみ可能であるが、細胞培養系には初代培養に加えて継代可能な系がある。

 その増殖形態は大きく付着性(単層培養)、浮遊性(浮遊培養)に分けられる。幾代にもわたって増殖し、継代できる系を、樹立細胞系あるいは細胞株と呼び、これはいわゆる無限増殖能を獲得した細胞である。一方、初代培養系は有限増殖系である。また、培養細胞がin vitroで形態や増殖能の変化を示すことをトランスフォーメーションと呼び、形質転換と訳される。

 生きたままの培養細胞は一般に倒立型位相差顕微鏡で観察する。固定・染色を行った細胞は透過型光学顕微鏡で観察する。また、透過型電子顕微鏡・走査型電子顕微鏡を用いてより微細な構造、細胞表面の構造を観察可能である。

 細胞培養法は、生体の複雑な生命現象を単純化した生物研究技法のひとつであり、薬剤刺激など様々な操作を加えることが比較的容易である。解析手法として免疫細胞化学は、細胞・組織中の物質(おもに蛋白質)を抗原抗体反応を利用して証明する方法で、光学顕微鏡用の免疫染色と、電子顕微鏡用免疫染色がある。その他、オートラジオグラフィによる放射性物質の取り込み・結合の検出や、in situ ハイブリダイゼーション法によるmRNAの発現局在の証明などがあり、目的に応じて使い分けられる。

細胞培養法
組織培養法

細胞培養法
組織培養法