ウェスタン・ブロッティング

ゲルの作製(SDS-PAGE):

ストック溶液の調製

30% アクリルアミドストック溶液 (200 mL 4°C保存)
 アクリルアミド(モノマー):58 g (final 29%)
 N,N'-メチレンビスアクリルアミド:2 g (final 1%)
 DWでTotal 200 mL

1.5 M Tris-HCl (pH 8.8)
 Tris:54.5 g
 少なめのDWに溶解し、HClでpH8.8に調整後、Total 300 mLにメスアップ(4°C保存)

0.5 M Tris-HCl (pH 6.8)
 Tris:6.0 g
 少なめのDWに溶解し、HClでpH6.8に調整後、Total 100 mLにメスアップ(4°C保存)

10% SDS
 SDS 10 g
 DW 100 mL
 Total 100 mL 室温保存

10% APS
 過硫酸アンモニウム 0.1 g
 DW 1 mL
  Total 1 mL 4°C保存 遮光2週間のみ使用可
TEMED そのまま使用


・ ゲル板を組み立てる。
running gel (10%) 1枚分 (17 mL)
アクリルアミドストック 5.7 mL (10%)
1.5 M Tris-HCl (pH 8.8) 4.25 mL (375 M)
10% SDS 170 μL (0.1%)
10% APS 57 μL (0.033%)
DW 6.85 mL
Total 17 mL
+TEMED 8.5 μL (0.05%)

・ TEMED以外のrunningゲル溶液を混合
・ アスピレータで脱気
・ 必要量のTEMEDを加え、すぐに混和しゲル板に注ぐ。
・ 蒸留水を静かに重層する。
・ 1時間静置し重合させる。
・ 流水で洗う。
・ 洗瓶の蒸留水で2回リンスする。
・ 蒸留水を重層しラップをかけて4°Cで保存。

stacking gel 1枚分 (5 mL)
アクリルアミドストック 0.79 mL (4.75%)
0.5 M Tris-HCl (pH 6.8) 1.25 mL (125 mM)
10% SDS 50 μL (0.1%)
10% APS 17 μL (0.033%)
DW 2.89 mL
Total 5 mL
+TEMED 5 μL (0.1%)
・ 重層した水を捨てる。ゲル板をペーパータオル上に倒立させ、バッファーをよく除く。
・ TEMED以外のstuckingゲル溶液を混合
・ アスピレータで脱気
・ 必要量のTEMEDを加え、すぐに混和しゲル板に注ぐ。
・ コームを差し込み、蒸留水を薄く重層し、1時間以上放置する。


サンプル調製:
サンプルバッファーの調製(以下の1,2どちらでも良い。大差ない)
2×Sample Buffer 1
0.25 M Tris-HCl (pH 6.8) 25 mL (125 mM)
SDS 2 g (4%)
β-mercaptoethanol 5 mL (10%)
Sucrose 5 g (10%)
1% BPB 数滴
D. W. __
Total 50 mL 4°C保存(長期保存時はβ-MEは入れない)

2×Sample Buffer 2
0.5 M Tris-HCl (pH 6.8) 2 mL (100 mM)
10% SDS 4 mL (4%)
β-mercaptoethanol 1.2 mL (12%)
grycerol 2 mL (20%)
D. W. 0.8 mL
1% BPB 数滴
Total 10 mL

・ サンプルにサンプルバッファーを加え、ホモジナイズかボルテックスにより混和する。
・ 沸騰水中3分後、不溶物があれば遠心し、上清を泳動サンプルとする。


タンパク質量の決定:
2% DOC (deoxycholate)(毎回作り直す方が良い)
24% TCA (Trichloroacetic acid)
0.2 N NaOH
* UV spectrophotometer

Sample 1 μL
Add H2O 1 mL
Add 2% DOC 9 μL
Vortex, Stand for 15 min

Add 24% TCA 330 μL
Vortex, Stand for 15 min

Cfg at 10,000-14,000 rpm for 5 min
Discard sup

Add 0.2 N NaOH 200 μL to ppt

Measure A280, A260
Protein conc (mg/mL) = 1.55A280 - 0.76A260
or
Protein conc (mg/mL) = ~ A280


タンパク量が多すぎると泳動パターンが乱れる。粗抽出サンプルでは 10〜20 μg protein/lane 以下にした方がよい。


電気泳動:
泳動バッファーの調製(pH調製不要、常温保存可能)
Tris 15.15 g
グリシン 72.05 g
DW __
Total 5 L
+SDS 5 g

・ ゲルの上部を水道水と蒸留水で洗い、コームを抜く。
・ 泳動バッファーをウェルに満たす。泳動バッファーを捨て、もう一度泳動バッファー
でウェルを洗う。
・ ゲル板を泳動槽にセットし気泡を追い出す。
・ サンプルをウェルに注入する。
・ Stacking gelまで20 mA×約1時間、running gelから40 mA×約1時間に設定し
定電流にて泳動する。


蛋白質のブロッティング(Laemmli法で泳動したゲルのブロッティング)

準備:
・ ブロッティング用緩衝液の調製
低分子量蛋白質転写バッファー(<120〜150kD)
Glycine 14.4 g (20 mM)
Tris 3.0 g (25 mM)
Methanol 200 mL (20%)
Total 1,000 mL pH調節不要、常温保存
・ ゲルと同じ大きさに切ったクリアブロットP膜(以下P膜)を100%メタノールに1
分間浸し、直ちに転写バッファーに30分以上浸漬する。
 ※浸漬時間が短いとゲルと膜の間に気泡が入りやすくなる。
・ ゲルと同じ大きさに切ったアブソーベントペーパー(電極用濾紙;以下A紙)をゲル
1枚につき6枚用意し、転写バッファーに浸漬する。
 ※A紙の大きさがゲルよりも5 mm以上大きいと、ゲル以外に電流が流れてブロッティングパターンが乱れる原因
となる。
 ※A紙は厚さ0.8 mm以上あるものを用いるか、数枚重ねて同等の厚さになるようにする。
セッティング:
・ 湿らせておいた下部電極(+)に転写バッファーに浸したA紙を1枚ずつ3枚重ねる。
・ さらにP膜を重ね、転写バッファーを数mlかけて気泡が入らないようにゲルを乗せ
る。
・ ゲルの上から転写バッファーを少量かけ、転写バッファーに浸しておいたA紙を1
枚ずつ3枚重ねる。しっかりと押さえてそれぞれを密着させる。
・ ゲルを2枚以上積載し同時にブロッティングを行う際には、転写バッファーを含むA
紙-P膜-ゲル-転写バッファーを含むA紙を1単位として重ねていく。単位間には透析膜
またはセロハンをはさみ、相互汚染を防ぐ。
※通電が終了するまで電極板は動かさないこと。

通電:
・ 陽陰極を確認し、安全ターミナル付リード線で装置と電源を接続する。
・ ゲル(通電)面積1 cm2あたり2 mA定電流に設定し、30(20〜60)分通電する。
または、25 V定電圧、45分
・ 通電終了後電源をOFFにしてから安全ターミナル付リード線をはずし、安全カバーを
上げる。
・ 使用後の本体と安全カバーは洗浄・保管する。

検出(染色):
一般タンパク染色
[クマシーブリリアントブルー染色液・脱色液の調製]
CBB染色液
クマシーブリリアントブルーR250 0.5 g (0.25%)
メタノール 10 mL (5%)
酢酸 15 mL (7.5%)
DW -
Total 200 mL

脱色液
メタノール 500 mL (25%)
酢酸 150 mL (7.5%)
DW -
Total 2,000 mL

・ CBB染色液50〜100 mlにゲルを浸し30分から2時間振とうする。
・ 染色終了後、脱色液に浸す。脱色液は数回取り替え(数十分から数時間)、バンドが
適切に検出できるまで脱色する。
・ ゲルをDWの中で5分以上振とうする。
・ ゲルを撮影、または乾燥後撮影。


免疫染色:(免疫組織化学に準ずるが、一般に使用する抗体などの濃度はより低めで良い)
Tween-PBS (0.1%Tween, PBS)
Tween 20 1 mL (0.1%)
PBS 1 L
Total 1 L

ブロッキング溶液(1% スキムミルク/0.1% Tween PBS)
スキムミルク 2 g
Tween-PBS 200 mL
200 mL 用時調製

・ 転写後、メンブレンをTween-PBSで振とうしながら洗浄する(5分×2)
・ ブロッキング(1時間振盪)
・ Tween-PBSで軽く洗浄。
・ 1次抗体 in Tween-PBSで反応。(5 ml/ 8×10 cm膜;1h or o/n 4°C)
・ Tween-PBSで洗浄(10分×3回)。
・ 2次抗体 in Tween-PBSにて反応。(5 ml/ 8×10 cm膜;1時間)
・ Tween-PBSで洗浄(10分×3回)。

ABC(Avidin-Biotin Complex)反応
 (Vector社#PK-6100, VECTASTAIN Elite ABC KIT STANDARD使用)
 あらかじめA液とB液とをPBSに対して(A:B:PBS)=(1:1:100)の割合で混和し、室温にて30分間静置した溶液
・ 室温、1時間

・ 洗 浄 PBS 室温、10分×3回

DAB反応液
3-3' Diaminobenzidine 10 mg (0.2%)
50 mM Tris-HCl 50 mL (50 mM)
Total 50 mL 用時調製

30% H2O2

・ 反応液50 mlにつき7.5μLの30% H2O2を加えメンブレンを浸す。
・ バンドが見えてきたら、メンブレンをDWでよく洗い、風乾する。
・ 写真撮影

参考文献:
1. タンパクなんてこわくない/バイオ実験イラストレイテッド5 西方敬人(秀潤社)1997
2. [改訂]タンパク質実験ノート(上・下)/無敵のバイオテクニカルシリーズ 岡田雅人・宮崎 香(羊土社)1999
3. 分子組織化学/神経科学研究の先端技術プロトコールI(厚生社)
4. Western blotting ウエスタンブロッティングのコツ(ATTO社 実験のコツシリーズ http://www.atto.co.jp/kotsu_series.html)