食道神経系における壁内神経細胞の機能的役割

 ○藏本博史(京都工繊大・応用生物)

 食道腔内に食塊が入ると、食道内に分布する知覚神経がその圧力を感知し、その刺激は迷走神経を経由して求心的に延髄に伝えられる。その後、その情報は中枢神経系内で統合され、延髄疑核からの食道運動神経や迷走神経背側運動核からの副交感神経によって遠心的信号として食道に伝達される、という一連の神経経路において食道運動はコントロールされている。さらに、上記のような外来性神経に加え、交感神経や遠心的な効果を及ぼす一部の知覚神経などの外来性神経支配によっても食道運動の調節が行われていると考えられている。一方、食道壁内には、胃や腸と同様に粘膜下や筋層間に神経叢が発達しており、それらには神経細胞を有した神経節が多数存在している。食道の壁内神経細胞の存在は以前から知られていたが、これらが食道運動に関与しているか否かは明らかにされていない。ラットやマウスなどの齧歯類の食道壁は、平滑筋で構成されている下部食道括約筋を除けば、全長にわたって横紋筋で構成されているのが特徴である。近年、ラット食道神経系の免疫組織化学的研究により、壁内神経細胞の形態学的および化学的な特徴が明らかにされ、それらの機能的意義が解明されつつある。

 我々はこれまでの研究において、食道には食道粘膜から筋層まで多数の一酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase, NOS)陽性神経線維が存在し、筋層間神経叢には多くの NOS 陽性神経細胞が分布していることを報告した。特に顕著な所見は、横紋筋上の運動終板に NOS 陽性神経終末が局在していることであった。さらに、これらの NOS 陽性神経終末はニューロペプチドの一つであるガラニンを含有することも見い出した。従って、食道横紋筋は延髄疑核に存在するコリン作動性運動神経と NOS 陽性神経の二重支配を受けており、神経支配の点で通常の骨格筋とは異なっていることが判った。NO(あるいはガラニン)の一般的な薬理作用から、恐らく NOS 陽性神経から放出された NO は横紋筋に対して抑制的に働くのではないかと推測される。次に、食道横紋筋を支配する NOS 陽性神経終末の由来を明らかにするために、迷走神経切除実験を行った。その結果、切除ラットにおける運動終板の NOS 陽性神経終末数は正常ラットのそれとほとんど変わらなかった。このことから、食道横紋筋を支配する NOS 陽性神経終末は壁内 NOS 陽性神経細胞に由来することが推測される。また、NOS 陽性反応は食道壁内神経細胞数全体の約 65 %に認められており、恐らくそれらの NOS 陽性神経細胞の一部は運動神経として食道横紋筋を支配しているものと考えられる。

 食道には腸管と同様に VIP、サブスタンス P(SP)、エンケファリン、ガラニンなど数種類のニューロペプチド含有神経の存在が報告されている。特に SP 含有神経と壁内神経細胞の関係はほとんど判っていない。我々は食道神経系における SP の作用部位を限定し、壁内神経細胞のさらなる形態的特徴を明らかにするために、SP に選択的なタキキニン・レセプターである neurokinin 1 receptor(NK1-R)の食道神経系内の局在を調べた。その結果、NK1-R 陽性反応は多数の壁内細胞に認められ、それらの全陽性神経細胞数の約 77 %が choline acetyl- transferase(ChAT)陽性を、約 23 %が NOS 陽性を示した。また、ほとんどの NK1-R 陽性神経細胞に SP 陽性線維終末との接触が見られた。これらの所見から、SP 線維から放出された SP は NK1-R を介して優位にコリン作動性神経細胞に作用し、食道神経系内における伝達あるいは食道運動に影響を及ぼすものと考えられる。

 食道壁内神経細胞の chemical coding によるサブタイプの存在がどのように食道蠕動運動の運動パターンを反映しているのかは今後の課題である。

     シンポジウム:消化管運動をコントロールするシグナル より
     第108回日本解剖学会全国学術集会(2003年04月01-03日、福岡・福岡)

 

<関連論文>
 1. Kuramoto H, Yoshimura R, Sakamoto H, Kadowaki M.
Regional variations in the number distribution of intrinsic myenteric neurons and coinnervated motor endplates on the striated muscles in the rat esophagus.
Auton Neurosci. 2019 Jul;219:25-32; Mar 25 Available online. [IF:2.247(2018)] DOI: 10.1016/j.autneu.2019.03.004

 2. Kuramoto H, Kadowaki M, Sakamoto H, Yuasa K, Todo A, Shirai R
Distinct morphology of serotonin-containing enterochromaffin (EC) cells in the rat distal colon.
Arch Histol Cytol. 2007 Nov;70(4):235-41. [IF:0.986] DOI:10.1679/aohc.70.235

 3. Kuramoto H, Kadowaki M.
Vagus nerve stimulation preferentially induces Fos expression in nitrergic neurons of rat esophagus.
Cell Tissue Res. 2006 Jun;324(3):361-7. Epub 2006 Feb 1. [IF:2.580] DOI:10.1007/s00441-005-0124-x

 4. Kuramoto H, Kadowaki M, Yamamoto T, Kuwano R.
Calbindin is predominantly expressed in nitrergic neurons in rat esophagus.
Neurosci Lett. 2006 Jun 19;401(1-2):174-7. Epub 2006 Apr 4. [IF:2.092] DOI:10.1016/j.neulet.2006.03.019

 5. Kadowaki M, Kuramoto H, Takaki M.
Combined determination with functional and morphological studies of origin of nerve fibers expressing transient receptor potential vanilloid 1 in the myenteric plexus of the rat jejunum.
Auton Neurosci. 2004 Nov 30;116(1-2):11-8. [IF:0.930]

 6. Kuramoto H, Oomori Y, Murabayashi H, Kadowaki M, Karaki S, Kuwahara A.
Localization of neurokinin 1 receptor (NK1R) immunoreactivity in rat esophagus.
J Comp Neurol. 2004 Oct 4;478(1):11-21. [IF:3.515]

 7. Kadowaki M, Kuramoto H, Kuwahara A. (1999) Morphological relationship between serotonergic neurons and nitrergic neurons for electrolytes secretion in the submucous plexus of the guinea pig distal colon. Brain Res.831:288-91. [IF:2.489]

 8. Kuramoto H, Kawano H, Sakamoto H, Furness JB. (1999) Motor innervation by enteric nerve fibers containing both nitric oxide synthase and galanin immunoreactivities in the striated muscle of the rat esophagus. Cell Tissue Res.295:241-5. [IF:2.492]

 9. Kuramoto H, Kato Y, Sakamoto H, Endo Y. (1996) Galanin-containing nerve terminals that are involved in a dual innervation of the striated muscles of the rat esophagus. Brain Res.734:186-92. [IF:2.489]

 10. Kuramoto H, Endo Y. (1995) Galanin-immunoreactive nerve terminals innervating the striated muscle fibers of the rat esophagus. Neurosci Lett.188:171-4. [IF:1.898 (2005)]

 11. Kuramoto H, Kuwano R. (1995) Location of sensory nerve cells that provide calbindin-containing laminar nerve endings in myenteric ganglia of the rat esophagus. J Auton Nerv Syst.54:126-36. [IF:2.177]

 12. Kuramoto H, Kuwano R. (1994) Immunohistochemical demonstration of calbindin-containing nerve endings in the rat esophagus. Cell Tissue Res.278:57-64. [IF:2.492]

 

<学会発表要旨>
2009
ラット食道におけるα-synuclein陽性線維の分布と由来
 ○藏本博史、門脇 真、吉田憲正(京工繊大院 工芸科、富山大 和漢医薬学総研、京都第一赤十字病院 消化器科)

 【背景と目的】Alpha-synuclein(α-Syn)はパーキンソン病や痴呆症患者の脳に出現するLewy小体や神経突起の主な構成要素で、線維化し蓄積した異常タンパク質として知られている。また、α-Synは正常な中枢神経系にも分布しており、延髄の迷走神経背側運動核ニューロンに発現することが示されている。このことから、α-Synは食道へ投射する迷走神経副交感線維を同定する有効なマーカーとなる可能性が示唆される。今回の研究では、食道におけるα-Synの分布とその由来を調べ、上述の可能性を検討した。【材料と方法】ラット食道をZamboni液で固定し、膜片標本を作製し、α-Syn抗体および各種抗体を用いて免疫染色を行った。また、α-Syn含有神経線維の由来を調べるために、神経逆行性トレーサーであるFast Blueを下部食道に注入した。【結果】免疫染色の結果、食道神経節内には多数のα-Syn陽性線維が出現した。また運動終板にも陽性反応が見られたが、陽性ニューロンは認められなかった。これらの陽性線維のほとんどがChAT陽性反応を示した。【考察】食道内の陽性神経線維はすべて外来性であり、コリン作動性であることが判った。さらのい、神経逆行性トレーサー注入実験の結果から、α-Syn陽性神経線維の由来について詳細に検討した。
     第114回日本解剖学会全国学術集会(2009年03月28-30日、岡山理大・岡山)

 

2008
食道壁在性NOニューロンを介した迷走神経による下部食道括約筋の支配
 ○藏本博史、門脇 真、吉田憲正(京工繊大院 工芸科、富山大 和漢医薬学総研、京府医大院 医)

 【背景と目的】迷走神経の刺激によって下部食道括約筋が弛緩することは知られているが、その神経経路は明らかにされていない。以前の研究報告において、下部食道の一部の壁在性ニューロンが下部食道括約筋運動に関係すると示唆されていることから、我々は迷走神経副交感繊維が下部食道括約筋を弛緩させるのではないかと推測した。今回の研究では、この一連の神経経路の存在を証明するために、ラットを用いて実験を行った。【材料と方法】神経逆行性トレーサーであるFluoroGold (FG)をラット下部食道括約筋に注入後、2ー3日後目に頚部迷走神経を電気刺激し、食道を4% paraformaldehyde溶液で固定した。その後、食道の膜片標本を作製し、FosおよびNOS抗体を用いて免疫染色を行った。【結果】FG標識ニューロンは下部食道括約筋から2ー2.5 cm以内の下部食道領域に認められた。免疫染色では、FG標識ニューロンの約85%がNOS陽性反応を示した。電気刺激の結果、FG標識ニューロンの約1/4がFos/NOS陽性反応を示した。【考察】以上の結果より、下部食道の一部の壁在性NOニューロンは下部食道括約筋を支配し、それらは迷走神経副交感線維によって支配されていることが判った。この一連の神経経路は下部食道括約筋の弛緩に深く関与していることが示唆される。
     第113回日本解剖学会全国学術集会(2008年03月27-29日、大分大学医学部・大分)

 

2007
Characterization of enteric neurons that express calbindin in the rat esophagus
 Hirofumi Kuramoto, Makoto Kadowaki, Takeshi Yamamoto and Ryozo Kuwano

     5th Congress of the International Society for Autonomic Neuroscience (ISAN 2007)
     (2007年10月05-08日、京都テルサ・京都)
     Autonomic Neuroscience Volume 135, Issues 1-2, 30 September 2007, Pages 124-12

 

2006
ラット副腎におけるサブスタンスP陽性細胞および神経についての免疫組織化学および免疫電顕的研究
 ○村林宏、蔵本博史、河野史、大森行雄 (日本赤十字北海道看護大・看護、京都工繊大・繊維、佐賀大・医)

 本研究ではラット副腎におけるサブスタンスP(SP)免疫活性について光学顕微鏡、電子顕微鏡を用いて明らかにした。皮質では少数のSP陽性神経線維が血管周囲に、また皮質を貫いて髄質に達する神経線維束も観察された。髄質では、ごく少数のSP陽性クロム親和性細胞が見られ、またこれらの細胞はフェニルエタノラミンNメチルトランスフェラーゼ(PNMT)との二重染色でPNMT陽性および陰性を示した。SP陽性クロム親和性細胞の免疫反応物は主に細胞内の顆粒芯に見られた。SP陽性神経線維は、カテコールアミン蛍光を示すNA細胞の集団に密接していた。これらのSP陽性神経線維の免疫反応用生産物は神経細胞質と有芯小胞に見られたが無芯小胞には見られなかった。SP、コリンアセチルトランスフェレース(ChAT)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、ニューロペプチドY(NPY)、一酸化窒素合成酵素(NOS)、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、血管作動性小腸ペプチド(VIP)を用いた二重染色では、髄質においてSP単独、SP/ChAT、SP/CGRP、SP/NOS、SP/PACAP陽性神経線維が見られた。また皮質の血管では、SP/CGRP、SP/NPY、SP/NOS、SP/VIP陽性神経線維が見られた。
     第111回日本解剖学会全国学術集会(2006年03月29-31日、北里大相模原キャンパス・神奈川)

 

食道におけるTRPV1陽性神経の分布と起源
 ○藏本博史、吉村亮一、山本 武、門脇 真(京都工繊大・応用生物、富山医科薬科大)

Origin and distribution of TRPV1-positive nerve fibers in rat esophagus
 Hirofumi Kuramoto1, Ryoichi Yoshimura1, Takeshi Yamamoto2, Makoto Kadowaki2 (1Division of Applied Biology, Graduate school of science and technology, Kyoto Institute of Technology, Kyoto, Japan, 2Department of Bioscience, Institute of Natural Medicine, Toyama University, Toyama, Japan)

 To examine the prigin and distribution of transient receptor potential vanilloid receptor 1 (TRPV1)-positive nerve fibers in rat esophage, we used immunohistochemicstry combined with a retrograde tracing method. Numerous TRPV1-positive nerve fibers were distributed in the myenteric plexus throughout th eesophagus, and most of them exhibited either SP- or CGRP-immunoreactivity (IR). An injection of Fast blue (FB) into the lower esophagus indicated that some labeled neurons were located in the doesal root ganglia (DRG) of C1 to T13, and the majority of them occured in T5 to T12 of DRG. Most of the FB neurons that exhibited TRPV1-IR showed either SP- or CGRP-IR. Thus, these findings suggest that TRPV1-positive nerve fibers in the lower esophagus primarily originate from TRPV1/SP- and/or TRPV1/CGRP-positive sensory neurons in the thoracic DRG.
     第29回日本神経科学大会(2006年07月19-21日、国立京都国際会館・京都)

 

2005
食道を支配する迷走神経副交感線維に関する免疫組織化学的研究
 ○藏本博史、門脇 真(京都工繊大・応用生物、富山医科薬科大)

Electrical stimulation of vagal nerves preferentially induces Fos expression in NOS neurons in the rat esophagus
 Hirofumi Kuramoto1, Makoto Kadowaki2 (1Department of Applied Biology, Kyoto Institute of Technology, Kyoto, Japan, 2Department of Bioscience, Institute of Natural Medicine, Toyama Medical & Pharmaceutical University, Toyama, Japan)

 To identify esophageal neurons that are innervated by vagal preganglionic efferents, we immunohistochemically examined the expression of Fos in the rat esophagus after electrical stimulation of the left and right vagus (v.). The stimulation indicated that the Fos neurons increased from the oral to the aboral of the esophagus. Double immunolabeling showed that NOS-IR occurred in most of the Fos neurons in the esophagus (86% in left v. and 84% in right v.), and a small proportion of them exhibited ChAT-IR (8% in left v. and 7% in right v.). The higher frequency of Fos neurons with NOS-IR induced by the stimulation of the vagal nerves suggests a preferential innervation by the vagal efferents to NOS neurons in the esophagus. This connectivity between the vagal efferents and NOS neurons might be involved in inhibitory actions on esophageal motility.
     第28回日本神経科学大会(2005年07月25-27日、パシフィコ横浜・神奈川)

 

ラット遠位結腸におけるEC細胞の形態的特徴
 ○藏本博史、白井 良、坂本宏史、門脇 真(京都工繊大・応用生物、健康科学大、富山医科薬科大)

 ヒト体内におけるセロトニン(5HT)はその 95%が消化管に含まれており、平滑筋収縮、分泌促進等の効果を及ぼすことが知られている。特に下痢や嘔吐などの症状は 5HT の影響によるものが多く、炎症性腸疾患などの疾病も 5HT と深く関連していると考えられている。また、消化管における 5HT の 90%は粘膜上皮の腸クロム親和性細胞(EC 細胞)で産生・分泌されることがわかっており、従って消化管の EC 細胞は生体の 5HT 供給源として極めて重要な役割を果たしている。今回の研究において、我々は免疫染色により、細長い細胞質突起を有する EC 細胞を多数ラット遠位結腸粘膜上皮内に発見した。このような細胞質突起を持つ EC 細胞は全 EC 細胞の 60%以上を占め、陰窩上半分の部位に多く認められた。これらのほとんどの細胞体は基底側に偏在し、細胞質突起は双極性で、腸管の長軸方向と垂直に内腔側および筋層側の両方向に基底膜に沿って伸びていた。突起の長さは様々で、約 100 um に及ぶ突起も認められたが、筋層側突起の方が内腔側のものより長い傾向が見られた。多くの場合、内腔側突起は先端を陰窩の内腔に出しており、一方、筋層側突起では陰窩底部にまで達するものも見られたが、基底膜を突き抜けて粘膜固有層に達している突起は観察されなかった。このような特徴的な細胞質突起の存在、神経線維との関係、他の動物の EC 細胞との比較から、遠位結腸における EC 細胞の機能的役割を考察する。
     第110回日本解剖学会全国学術集会(2005年03月29-31日、富山医科薬科大・富山)

 

2004
Immunohistochemical Features of Calbindin Immunoreactive Neurons in the Rat Esophagus
 H. Kuramoto1, M. Kadowaki2 (1Dept. Applied Biol., Kyoto Inst. Tech., 2Dept Physiol. II, Nara Med. Univ.)

 Calbindin (Calb) is a calcium binding protein widely distributed in the enteric nervous system. Immunohistochemical studies in the guinea-pig small intestine demonstrated that most of Dogiel type II neurons are Calb positive, suggesting that these are the primary sensory neurons in the small intestine. Our previous studies revealed that myenteric neurons in the laminar nerve endings surrounding the myenteric ganglia showed Calb-immunoreactivity (IR) and that most of the positive laminar endings originate from sensory neurons located in the nodose ganglion. In the present study, we immunohistochemically investigated the relationship between Calb and cholin acetyltransferase (ChAT) or nitric oxide synthase (NOS) in the nervous system of the rat esophagus to verify functional roles of the Calb positive neurons. Calb positive neurons were most frequent in the abdominal esophagus, occupying more than 50% of the total positive neurons, and the cervical and thoracic portions of the esophagus showed an occurrence- frequency of less than 20%. Calb-IR was also found in some nerve fibers among the muscularis mucosae, but not in motor endoplates on the striated muscle fibers. Double immunolabeling in the esophagus indicated that Calb neurons containing NOS-IR were 84% of the total Calb positive neurons and those containing ChAT-IR were 23% of them. In addition, numerous Calb positive fibers among the muscularis mucosae showed NOS-IR. In contrast, about 90% of Calb neurons showed ChAT-IR and very few exhibited NOS-IR in the myenteric ganglia of the ileum and distal colon. These findings suggest that Calb neurons in the esophagus play as motor neurons to the muscularis mucosae or interneurons, not as promary sensory neurons and that the expression of Calb might not be directly associated with distribution patterns or functions of excitatory (ACh) or inhibitory (NO) neurotransmitters in the enteric neurons.
      16th International Congress of the IFAA, and 109th Annual Meeting
     of Japanese Association of Anatomists (August 22~27,2004,Kyoto,JAPAN)
     

 

2003
ラット食道における calbindin 陽性神経細胞の免疫組織化学的特徴
 ○藏本博史(京都工繊大・応用生物)

 Calbindin は消化管神経系に広く分布するカルシウム結合タンパクの一つである。モルモット小腸の研究では、筋層間神経叢の大多数の Dogiel II 型神経細胞が calbindin 陽性反応を示すことや陽性神経細胞の突起の極性から、これらの神経細胞は小腸神経系固有の知覚神経細胞と考えられている。我々は以前のラット食道の免疫組織化学的研究において、筋層間神経叢に calbindin 陽性神経細胞と特異的な陽性神経終末を発見した。陽性神経終末は葉状を呈して神経節を取り囲む様に分布し、迷走神経切除実験により、これらの神経終末は壁内 calbindin 陽性神経細胞からの突起ではなく、それらのほとんどが節状神経節の知覚神経細胞に由来することが判った。今回の研究では、食道の calbindin 陽性神経細胞の機能的役割を明らかにするために、これらの形態的および化学的特徴を調べ、他の消化管部位に出現する calbindin 陽性神経細胞のそれと比較した。食道の calbindin 陽性神経終末は小腸や大腸の細胞と比べ小型で、そのほとんどが Dogiel I 型に属していた。また、小腸や大腸のほとんどの calbindin 陽性神経細胞は一酸化窒素合成酵素(NOS)陰性であったが、食道の calbindin 陽性細胞の約 50 %は NOS 陽性であった。食道 calbindin 陽性神経細胞のこれらの特徴について考察する。
     第108回日本解剖学会全国学術集会(2003年04月01-03日、福岡・福岡)

 

2002
ラット食道神経系における ENK8 とδ-opioid receptor の関係
 ○藏本博史(京都工繊大・応用生物)、門脇 真(奈良県立医大・生理)

 腸管にはエンケファリン(ENK)含有神経が多数分布し、これらが腸管運動の抑制に関与することが示されている。食道神経系にも同様に多くの ENK 含有神経が存在するが、これらの神経が一連の食道内伝達経路あるいは食道運動にどのように関連を持つかは明らかにされていない。今回の研究では、食道における神経伝達物質あるいは運動の抑制系という観点から、食道神経系における ENK と opioid receptor の関係を免疫組織化学的に調べることにより、ENK の作用部位を決定し、ENK 神経の食道における機能的役割を検討した。Met-ENK-Alg-Gly-Leu (ENK8) 抗体でラット食道を染色した結果、多数の神経細胞と神経線維が ENK 陽性反応を示した。特に、横紋筋層では ENK8 陽性神経終末が多数の運動終板上に認められ、またこれが nitric oxide synthese (NOS) 陽性であることが分かった。さらにδ-opioid receptor (DOR) 抗体で染色した結果、同様に多数の運動終板上の神経終末が陽性を示した。以上のことから、横紋筋層の運動終板上の ENK/NOS/DOR 陽性神経終末から放出された ENK8 はオートレセプター的にそれ自身の神経終末に作用し、NO の放出を抑制することが示唆される。
     第25回日本神経科学大会(2002年07月07-09日、東京ビッグサイト・東京)

 

ラット食道神経系における neurokinin 1 receptor (NK1R) とコリン作動性神経の関係
 ○藏本博史(京都工繊大)

 食道神経系には多数のサブスタンス P(SP)含有神経が分布しているが、この神経が食道内にどのように分布し、食道運動にどのような影響を及ぼすのかはよく判っていない。そこで、我々は SP の受容体と考えられている neurokinin 1 receptor (NK1R) の食道内分布を検索することで、食道における SP 含有神経の機能的役割をより明確にできるものと考えた。今回、特に食道内に分布するコリン作動性神経と NK1R の関係を調べるため、免疫組織化学的に検索した。NK1R 陽性反応は筋層間神経節の一部の小型から中型のニューロンに認められ、これらのほとんどは Dogiel I 型のニューロンに属していた。二重染色の結果、NK1R 陽性ニューロンの 76.5+/-9.3 %(n=4)が ChAT 陽性を示した。また、NK1R/ChAT 陽性ニューロンは ChAT 陽性ニューロン全体の 13.9+/-2.9 %(n=4)を占めていた。一方、ほとんどすべての NK1R 陽性ニューロンには SP 陽性神経終末との接触が認められた。以上の結果より、SP 神経線維から放出された SP は NK1R を介し、優位にコリン作動性ニューロンに作用し、食道神経系における伝達あるいは食道運動に影響を及ぼすものと考えられる。
     第107回日本解剖学会全国学術集会(2002年03月29-31日、浜松医大・浜松)

 

2001
ラット食道神経系における NK1 receptor の局在
 ○藏本博史(京都工繊大・応用生物)

 ラット食道神経系には多数のサブスタンスP(SP)含有神経が分布している。しかし、この神経が一連の食道内神経伝達経路にどのように関わり、結果的に食道運動にどのような影響を及ぼすのかは明らかにされていない。我々は食道に分布するSP含有神経の食道神経系における機能的役割を解明することを目的として、今回 SP の受容体と考えられている neurokinin 1 receptor (NK1R) の抗体を用い、食道における NK1R の局在ならびに食道内に分布するコリン作動性神経、NO 作動性神経およびSP含有神経と NK1R の関係を免疫組織化学的に調べた。その結果、NK1R 陽性反応は筋層間神経節の一部のニューロンに認められ、これらの陽性ニューロンのうち約 80 %が ChAT 陽性反応を、約 35 %が NOS 陽性反応を示した。また NK1R/ChAT 陽性ニューロンは NOS 陽性ニューロン全体の約5%を、NK1R/NOS 陽性ニューロンはNOS陽性ニューロンの約2%を占めていた。一方、ほとんどすべての NK1R 陽性ニューロンには SP 陽性神経終末との接触が認められた。以上の結果より、食道内の SP 陽性神経は優位にコリン作動性ニューロンを介して食道運動に影響を及ぼすことが示唆される。
     第24回日本神経科学・第44回日本神経化学合同大会(2001年09月26-28日、京都国際会館・京都)

 

食道の一酸化窒素合成酵素(NOS)ニューロンを支配する迷走神経副交感線維
 ○藏本博史(京都工繊大)

 食道筋層間神経節ニューロンは迷走神経副交感線維の入力を受けているが、その神経の支配様式や食道運動における機能的役割は判っていない。今回我々は、迷走神経副交感線維が食道の特別な内在性ニューロンに支配を及ぼすのかという点を明らかにするために、迷走神経の電気刺激による Fos タンパクの発現を利用して、免疫組織化学的に検索を行った。ラットの左側頸部迷走神経を切断し、その遠位端を30分間、電気刺激(1 mA-rectangular pulses, 16 Hz, 0.5 ms-pulse duration, 10 s on and off-pulse train)した。電気刺激終了1時間後、食道を Zamboni 液で固定し、膜片標本を作製した。Fos 陽性反応は食道内在性ニューロンの核に局在していた。陽性細胞数は食道の吻側から尾側に向かって増加する傾向があり、胃に近い下部食道で最も多数認められた。二重蛍光染色では、Fos 陽性細胞の約 85 %が NOS 陽性を示し、また約8%が choline acetyltransferase (ChAT) 陽性を示した。以上の結果から、多数の食道内在性 NOS ニューロンは迷走神経副交感線維によって直接的あるいは間接的に支配を受けていることが示唆される。
     第 106 回日本解剖学会全国学術集会(2001 年4月 2-4 日、高知医大・高知)

 

2000
Direct evidence for innervation by enkephalin-containing nerve fibers on vagal motor neurons projecting to the esophagus
 ○藏本博史、河野 史(京都工繊大・応用生物、佐賀医大・解剖)
     第23回日本神経科学大会・第10回日本神経回路学会大会合同大会(2000年09月04-06日、パシフィコ横浜・横浜)

 

Polarized innervation pattern of the rat esophagus
 Hirofumi Kuramoto(Kyoto Inst Tech)

 A retrograde tracing method with DiI in combination with immunohistochemistry of choline acetyltransferase (ChAT) and nitric oxude synthase (NOS) was used to characterize the projection of neuron located in the myenteric plexus of he rat esophagus. After applying DiI to the inner muscle layer, 80+/-5% of labelled cell bodies were NOS-immunoreactive, and were located primarily orally, whereas the fewer ChAT immunoreactive neurins were located aborally. This indicates the presence of the descending NOS neurons and ascending ChAT neurons in the enteric nervous system of the rat esophagus. This polarity of projection is similar to that of the stomach and intestines, raising the question of wheter these neurons contribute to esophageal motility.
     第 105 回日本解剖学会全国学術集会(2000年03月29-31日、パシフィコ横浜・横浜)