ギャップ結合チャネル・ヘミチャネルを介した
昆虫細胞・組織の情報伝達機構
 ギャップ結合は、物理的・電気的および化学的に二つの細胞を連結し、細胞間情報伝達に重要な役割を果たすチャネルである。イネキシン innexins は、無脊椎動物においてギャップ結合チャネル複合体を形成する蛋白質群であるが、脊椎動物におけるギャップ結合関連蛋白であるコネキシン connexins とアミノ酸配列において相同性がない。最近、興味深いことに、イネキシンに対する脊椎動物の相同遺伝子が見いだされ、無脊椎・脊椎動物に共通のギャップ結合分子としてパネキシン pannexin と命名された。これは実際にギャップ結合の性質を持ち、脊椎動物の中枢神経系を中心に発現していることが明らかになった。しかしその細胞・組織学的な解析は未だ不充分である。我々は、通常電顕法と蛍光色素細胞内微小注入法を用い、ワモンゴキブリの消化管筋細胞間におけるギャップ結合の存在を証明した。次に、ギャップ結合の発現・局在から機能を明らかにすることを目的として、カイコ・イネキシン(Bm-Inx2)の配列よりC末端ペプチドを調製し、マウスで特異抗体を作製した。この抗体を用い、ゴキブリ、カイコなど昆虫の組織や培養細胞を免疫組織(細胞)化学、およびウェスタンブロットを行った。また、パネキシンがヒトの赤血球で発現しているという報告や、寄生蜂のもつ Polydnavirus にイネキシン様配列が存在するという報告から、ギャップ結合を形成しないヘミチャネルが、細胞内外の物質移動に関わることが示唆されるため、カイコ血球におけるイネキシンの免疫細胞化学的検討や、昆虫組織および培養細胞系にギャップ結合チャネル通過性の蛍光物質カルセインを用い、蛍光物質の放出を測定したり FRAP (Fluorescence Recovery After Photobleaching) 法を行い、ヘミチャネルの性質についても細胞生物学的に検討した。

 

<関連論文>
 1. Yoshimura R, Suetsugu T, Kawahara A, Nakata K, Shikata M, Tanaka S, Ono T, Fushiki D, Endo Y.
Formation of functional innexin hemichannels, as well as gap junctional channels, in an insect cell line, NIAs-AeAl-2, derived from Asian tiger mosquito Aedes albopictus (Diptera: Culicidae): A partial but significant contribution of innexin 2.
J Insect Physiol. Epub 2020 May 21[Online ahead of print]. [IF:2.862(2018)] DOI: 10.1016/j.jinsphys.2020.104060

 2. Yoshimura R, Suetsugu T, Endo Y.
Serotonergic transmission and gap junctional coupling in proventricular muscle cells in the American cockroach, Periplaneta americana.
J Insect Physiol. 2017 May;99:122-129. Epub 2017 Apr 19. [IF:2.733] DOI: 10.1016/j.jinsphys.2017.04.006

 3. Fushiki D, Yoshimura R, Endo Y.
Immunocytochemical study of gap junction-related protein, innexin 2, in Periplaneta americana (Blattodea: Blattidae).
Appl Entomol Zool (Jpn). 2010;45(2):245-51. [IF(2009):0.616] DOI:10.1303/aez.2010.245

 4. Fushiki D, Hamada Y, Yoshimura R, Endo Y.
Phylogenetic and bioinformatic analysis of gap junction-related proteins, innexins, pannexins and connexins.
Biomed Res. 2010;31(2):133-42. [IF(2009):1.146] DOI:10.2220/biomedres.31.133

<学会発表要旨>
アミロイドβによるパネキシンチャネルからの ATP 放出
ATP release from pannexin channels by amyloid beta

 ○辻祐史,吉村亮一,遠藤泰久(京都工繊大・院・応生)
 Tsuji Yuji,Yoshimura Ryoichi,Endo Yasuhisa

 パネキシンは無脊椎動物のギャップ結合タンパク質であるイネキシンのホモログとして脊椎動物で同定された。コネキシンとは相同性がなく、ギャップ結合ではなくヘミチャネルとして機能すると報告されているが、機能については未だ不明な点が多い。神経系の培養細胞(PC12, C6)及びマウスの大脳スライスと特異的阻害剤カルベノキソロンを用いて調べた結果、脱分極、低血糖などの刺激だけでなく、アミロイドβによっても ATP 放出が観察された。
     日本動物学会第86回大会(2015年09月17-19日、新潟コンベンションセンター 朱鷺メッセ・新潟)

 

ギャップ結合タンパク質であるinnexinを経由した細胞間情報伝達機能の解析

 ○細井和真、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・応用生物)

 ギャップ結合はすべての多細胞動物に存在するが、構成タンパク質は相同性のないconnexinとinnexin-pannexinの2ファミリーに分かれる。我々はショウジョウバエの培養細胞においてinnexinがギャップ結合としてだけでなく細胞間で対合していないヘミチャネルとして存在し、ATPの放出による細胞間情報伝達に関与する事を報告した。今回ワモンゴキブリ成虫より摘出した脳、消化管などの器官を用い、組織におけるヘミチャネルからのATP流出に関わる因子についてin vitroで検討した。その結果、組織においてもヘミチャネルからATP放出にカルシウムイオンが関与し、器官によって差異があることが明らかとなった。哺乳類とは異なる構造を有するイネキシンヘミチャネルは害虫防除の新たな標的として期待できる。
     日本応用動物昆虫学会第58回大会(2014年03月26-28日、高知大学朝倉キャンパス・高知)

 

カイコ血球のhemichannelによるATP放出とその生理的機能

 ○辻祐史、長岡純治、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・応用生物)

 様々なパラクリンシグナルの中で、ATPなどのプリン作動性シグナル伝達は神経、免疫系において重要な細胞間情報伝達機能のひとつである。我々は以前、カイコ血球にギャップ結合関連タンパク質であるイネキシン2が存在すること、ショウジョウバエ胚由来のKC167細胞の細胞膜上にチャネル様構造で局在することを報告した。イネキシンは脊椎動物のコネキシンと塩基およびアミノ酸配列に相同性がなく、ギャップ結合以外にhemichannelとして機能する可能性が示唆されているが、詳細は不明である。今回、カイコ血球の細胞膜上のhemichannelがATP放出機能を有していることをluciferase assayにより明らかにし、血球凝集性や移動性への関与について調べた結果について報告する。哺乳類とは異なる構造をもつhemichannelは害虫防除の新たな標的として期待できる。
     日本応用動物昆虫学会第58回大会(2014年03月26-28日、高知大学朝倉キャンパス・高知)

 

ギャップ結合タンパク質innexinによる細胞間情報伝達の解析
Analysis of cell to cell communication via innexins: gap junctional and hemichannel protein

 ○細井和真、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大学大学院工芸科学研究科応用生物学部門細胞機能学研究室)

 ギャップ結合はすべての多細胞動物に存在するが、構成タンパク質は相同性のないconnexinとinnexin-pannexinの2ファミリーに分かれる。発生、恒常性の維持など多様な役割を持っており、ギャップ結合としてだけでなく細胞間で対合していないヘミチャネルとしての機能も示唆されるが十分明らかではない。今回、innexin channelから細胞外へのATP放出およびギャップ結合を介したセカンドメッセンジャーの相互作用について報告する。
     日本動物学会第84回大会(2013年09月26-28日、岡山大学・岡山)

 

神経系培養細胞におけるパネキシンの局在
Localization of Pannexin in cultured neurons

 ○辻祐史、遠藤泰久、吉村亮一(京都工繊大学大学院工芸科学研究科応用生物学部門細胞機能学研究室)

 様々なパラクリンシグナルの中で、ATPなどのプリン作動性シグナル伝達は神経系において重要な機能の一つである。パネキシンはコネキシンとは異なり無脊椎動物のギャップ結合タンパク質であるイネキシンと相同性があり、細胞膜チャネルを形成しATP情報伝達に関わることが示唆されているが、細胞における詳細な分布は明らかでない。今回、神経培養細胞(NG108-15, PC12, C6)を用い、免疫細胞化学およびATP透過性について調べた結果を報告する。
     日本動物学会第84回大会(2013年09月26-28日、岡山大学・岡山)

 

昆虫培養細胞におけるイネキシンを介した蛍光色素移動の解析

 ○細井和真、吉村亮一、遠藤泰久(京都工芸繊維大学・応用生物学)

 多細胞動物に共通の構造であるギャップ結合は直接的な細胞間情報伝達機能を有し、発生、形態形成、恒常性維持、電気シナプスなど多様な役割を果たしている。Drosophilaで同定されたinnexin (invertebrate connexin) は脊椎動物のギャップ結合構成タンパク質connexinと塩基配列に相同性がないが、想定される4回膜貫通構造から機能的相関をもつとされている。しかし、その後のdatabaseからの検索で脊椎動物にinnexinのホモログpannexinが見つかったことから、ギャップ結合とこれらのタンパク質の関係は単純ではないことが明らかとなった。今回、Drosophila胚由来の培養細胞株(kc167)を用い、ギャップ結合チャネルを通過可能な蛍光色素calceinの細胞間移動や放出について共焦点レーザー顕微鏡で検討した。さらにギャップ結合の特異的な機能阻害剤として知られるcarbenoxolonの効果、培地中のCaイオンやKイオン濃度の影響、そしてイネキシンの細胞外ループの配列を認識する特異的抗体が及ぼす影響について検討した。その結果、innexinは細胞間のギャップ結合だけでなく、ヘミチャネルとしての機能を有していることが明らかとなった。
     日本応用動物昆虫学会第57回大会(2013年03月27-29日、日本大学生物資源科学部湘南キャンパス・神奈川)

 

昆虫ギャップ結合関連タンパク質イネキシン:ステロイドの影響とチャネルの構造解析
Gap junction-related protein, innexins, in insect cells: Effect of steroids, and 3-D channel ultrastructure

辻真央、神野美和、西田倫希、 ○吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・院工芸科学・応用生物)

 ギャップ結合はすべての多細胞生物にみられる細胞間の直接的情報伝達機構であるが、昆虫における構成タンパク質、イネキシンの発現制御やチャネル構造の詳細は不明である。ショウジョウバエKc167細胞はエクダイステロイドにより形態的に神経細胞様に分化し、イネキシンの発現量を増加させた。超高圧電子顕微鏡H-3000(加速電圧2000kV)によりイネキシン免疫反応の3次元構造解析を行った結果、細胞膜を貫通するpore状構造を形成することが示唆された。
     日本動物学会第82回大会(2011年09月21-23日、大雪クリスタルホール・旭川)

 

ギャップ結合関連タンパク質イネキシンの超高圧電子顕微鏡による3次元構造解析

神野美和・吉村亮一・○遠藤泰久(京都工繊大・応用生物)・西田倫希(大阪大・超高圧電顕センター)

 細胞間情報伝達に関わるギャップ結合はすべての多細胞動物にみられるが、昆虫における構成タンパク質と想定されるイネキシンは脊椎動物のコネキシンと相同性がなく、害虫防除の有力な標的候補である。カイコガのイネキシン2(分子量43kDa)の細胞外ループの部分配列を抗原として作製した抗体を用い、電顕用試料メッシュ上に培養したショウジョウバエ由来の培養細胞株Kc167細胞を免疫染色し、全載標本として超高圧電子顕微鏡H-3000(加速電圧200万V)で傾斜透過像を撮影した。IMOD computer tomography によりイネキシンの免疫反応の3次元構造解析を行った結果、細胞膜上の直径約6-8nmの円形構造物の集団であり、膜を貫通するpore状の構造もみられた。これらの構造は凍結割断法によって知られているギャップ結合の粒子構造と類似しており、イネキシンが昆虫細胞のギャップ結合構成要素であることを強く支持する。
     日本応用動物昆虫学会第55回大会(2011年03月27-29日、九州大箱崎キャンパス・福岡)

 

ギャップ結合関連タンパク質イネキシンの発現に及ぼすエクダイステロイドの影響

辻 真央・遠藤泰久・○吉村亮一(京都工繊大・応用生物)

 ギャップ結合はすべての多細胞動物にみられる細胞間の直接的情報伝達機構であり、発生、神経伝達、組織の恒常性などに重要な役割をもつ。しかし昆虫における構成タンパク質とされるイネキシンの発現制御についてはよく知られていない。ショウジョウバエの培養細胞株Kc167細胞は胚の血球由来であるが、エクダイステロイドにより神経細胞様に分化するという報告もある。イネキシン2の細胞外ループの部分配列VGPHVEGQDEVKYHKに対する特異抗体を用い、免疫細胞化学とウェスタンブロットにより、Kc167細胞の形態とイネキシン発現量に及ぼすエクダイステロイドの影響を調べた結果を報告する。
     日本応用動物昆虫学会第55回大会(2011年03月27-29日、九州大箱崎キャンパス・福岡)

 

昆虫培養細胞におけるGap結合関連蛋白質Innexinの超高圧電顕像の3次元画像解析
3D image analysis of ultra high voltage electron micrographs of innexin, gap junction related protein, in insect cells

 ○伏木大輔、四方雅人、中田香奈、有井達夫、吉村亮一、山本絵梨香、遠藤泰久
 (京都工繊大・院工芸科学・応用生物、生理学研究所・脳機能計測支援センター)

 innexinは無脊椎動物の細胞間情報伝達に関わるGap結合タンパク質と考えられているが、細胞レベルでの機能やチャネル構造の解析は未だ充分とはいえない。我々は細胞膜上のinnexinチャネルの構造を明らかにするため、innexinヘミチャネルの存在が示唆されているヒトスジシマカ培養細胞を用い、特異抗体による免疫細胞化学後、超高圧電子顕微鏡で連続傾斜撮影し3次元立体再構築を行い、チャネル様の構造を観察することができた。
     日本動物学会第80回大会(2009年09月17-20日、静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」・静岡)

 

蚊培養細胞におけるギャップ結合関連タンパク質イネキシンのヘミチャネル機能解析
 ○四方雅人、吉村亮一、遠藤泰久(京都工芸繊維大学・院工芸科学・応用生物)

 細胞間の直接的情報伝達装置ギャップ結合は,無脊椎動物ではイネキシンファミリーのタンパク質が関連するとされている。しかし、これまでの我々の免疫電顕による観察の結果、細胞間結合とイネキシンの局在が必ずしも一致しないことから、イネキシンはヘミチャネルとして何らかの情報伝達に関わっていることが示唆されているが、その機能はほとんど不明である。イネキシンはアミノ酸配列から膜4回貫通型構造と想定され、細胞外ループの部分配列ほ合成し特異抗体を作製した。生きている蚊培養細胞に特異抗体を反応させた後、蛍光物質Lucifer Yellowの細胞内への侵入を共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果、抗体濃度依存的に蛍光物質の侵入増加が見られた。
     日本応用動物昆虫学会第53回大会(2009年03月28-30日、北海道大・札幌)

 

ワモンゴキブリの組織におけるGap結合関連タンパク質innexinの局在
 ○伏木大輔、吉村亮一、遠藤泰久(京都工芸繊維大学・院工芸科学・応用生物)

 無脊椎動物のGap結合は,脊椎動物のGap結合を構成するタンパク質であるconnexinと、アミノ酸配列にほとんど相同性を持たないinnexinというタンパク質から構成される。しかしその細胞・組織学的な解析は未だ充分になされていない。我々はカイコガinnexin2のC末端を認識する抗体を作製し、第47回、第48回でワモンゴキブリ組織の免疫組織化学、免疫電顕とウェスタンブロットの結果を報告した。今回、同innexin2の第一細胞外ループを認識する抗体を作製し、ワモンゴキブリの各組織において免疫組織化学とウェスタンブロットにより比較検討し、神経系と筋系で異なる結果が得られたので報告する。
     日本応用動物昆虫学会第53回大会(2009年03月28-30日、北海道大・札幌)

 

昆虫の組織と培養細胞におけるGap結合関連タンパク質innexinの局在
Immunocytochemical localization of gap junction related protein, innexin, in tissues and cultured cells of insects.

 ○伏木大輔、四方雅人、吉村亮一、遠藤泰久(京都工芸繊維大学・院工芸科学・応用生物)

 innexinは膜4回貫通型タンパク質で無脊椎動物の細胞間情報伝達に関わると考えられているが、細胞レベルでの機能解析はいまだ充分ではない。我々はカイコガinnexin2のC末端を認識する抗体を作製し、第73回大会で昆虫組織の免疫組織化学の結果を、第74回大会で培養細胞の免疫細胞化学の結果を報告した。今回、innexin2の第一細胞外ループを認識する抗体を作製し、昆虫の各種組織および培養細胞において免疫染色を行い、比較検討した結果を報告する。
     日本動物学会第79回大会(2008年09月05-07日、福岡大・福岡)

 

Gap 結合関連蛋白質の Bioinformatics 的研究
 ○伏木大輔、濱田康雄、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・院工芸科学・応用生物)

 無脊椎動物の Gap 結合蛋白質とされる Innexin のホモログが、最近、脊椎動物で報告され Pannexin と命名された。従来より脊椎動物の Gap 結合は Connexin で説明されており、Pannexin の関与は不明である。今回、Bioinformatics 的手法を用いこれらの配列を解析した結果、既知の3種の Pannexin 群は脊椎動物が分化するより以前から存在することが示唆された。
     日本動物学会第78回大会(2007年09月20-22日、弘前大・弘前)

 

カイコ血球におけるイネキシンの免疫細胞化学的研究
 ○中田香奈、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・院工芸科学・応用生物)

 イネキシンは無脊椎動物のギャップ結合関連タンパク質と考えられている。最近イネキシンのホモログであるパネキシンがヒトの赤血球で発現しているという報告や、寄生蜂のもつ Polydnavirus にイネキシン様配列が存在するという報告から、ギャップ結合以外の機能が想定される。そこで、カイコ幼虫の血球におけるイネキシンの存在を免疫電顕法で検討した結果、一部の血球の細胞膜に局在することが明らかとなった。
     日本動物学会第78回大会(2007年09月20-22日、弘前大・弘前)

 

カイコ血球細胞におけるギャップ結合関連タンパク質イネキシンの発現
 中田香奈、吉村亮一、○遠藤泰久(京都工繊大・院工芸科学・応用生物)


     日本応用動物昆虫学会第51回大会(2007年03月27-29日、広島大・広島)

 

蚊培養細胞におけるギャップ結合関連タンパク質イネキシンの免疫細胞化学的研究
 ○小野 格、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・院工芸科学・応用生物)


     日本応用動物昆虫学会第51回大会(2007年03月27-29日、広島大・広島)

 

ゴキブリ組織におけるギャップ結合の電顕及びヘミチャネル機能解析
 ○伏木大輔、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・院工芸科学・応用生物)

 昆虫のギャップ結合関連タンパク質イネキシンに関する細胞生物学的解析はいまだ充分とはいえない。これまで我々はイネキシン特異抗体を用い、昆虫組織細胞レベルでの局在を電顕で明らかにしてきたが、ギャップ結合とイネキシンの局在は必ずしも一致していなかった。今回、蛍光物質カルセインをワモンゴキブリ前胃などの生体組織に取り込ませた後、脱分極刺激を加えたところ、有意なカルセイン放出が観察されことから、ヘミチャネルとしての機能も有していることが示唆された。
     日本動物学会第77回大会(2006年09月21-24日、島根大・松江)

 

蚊の培養細胞ギャップ結合のヘミチャネル機能解析
 小野 格、○中田香奈、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・院工芸科学・応用生物)

 無脊椎動物細胞間の直接的情報伝達装置であるギャップ結合構成タンパク質とされるイネキシンは、脊椎動物のコネキシンとはアミノ酸配列に相同性がなく細胞生物学的情報は未だ十分ではない。イネキシン抗体による免疫電顕では必ずしもギャップ結合に局在しないことがわかった。蛍光物質カルセインを予め細胞内に導入し、種々の刺激を加えたところ、グルタミン酸によって濃度依存的に放出が起こったことから、ヘミチャネルとして周囲の細胞に何らかの情報伝達をしている可能性が示唆された。
     日本動物学会第77回大会(2006年09月21-24日、島根大・松江)

 

昆虫のギャップ結合関連タンパク質イネキシン:ヘミチャネルとしての機能
 ○川原あい、小野 格、伏木大輔、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・応用生物)

 我々はこれまで昆虫のギャップ結合関連タンパク質イネキシンの発現及び局在について報告してきた。最近イネキシンのホモログとしてパネキシンが脊椎動物で見つかり、細胞間ギャップ結合だけでなく、ヘミチャネルとしての機能も示唆されている。今回はヒトスジシマカ培養細胞 NIAs-AeAl-2 を用い、ヘミチャネルおよびギャップ結合の機能解析を、蛍光物質カルセインの放出と FRAP 法により検討した結果を報告する。
     日本動物学会第76回大会(2005年10月06-08日、つくば国際会議場・つくば)

 

昆虫培養細胞系におけるギャップ結合関連タンパク質(イネキシン)の細胞内での発現と局在
 ○小野 格1、伏木大輔1、吉村亮一1、遠藤泰久1、今西重雄2、岩淵喜久夫31京都工繊大・応用生物、2農生資研、3東京農工大・応用生物)

 昆虫のギャップ結合関連タンパク質であるイネキシンは、細胞間情報伝達に関わると考えられているが、それに関する細胞生物学的解析はほとんど報告がなかった。これまで我々は昆虫の培養細胞系においてギャップ結合が形成されていることを明らかにし、またイネキシンの特異抗体を用い免疫細胞化学的にその発現を確認した。今回、培養条件の違い(FBS 濃度および細胞密度)によってイネキシンの発現量に差はないことが明らかとなった。また免疫電顕法を用いてより詳細なイネキシンの細胞内局在についても報告する予定である。
     日本応用昆虫動物学会第49回大会(2005年03月24-26日、玉川大・町田)

 

ギャップ結合関連タンパク質イネキシンの細胞内局在
 ○小野 格1、伏木大輔1、吉村亮一1、遠藤泰久1、今西重雄2、岩淵喜久夫31京都工繊大・応用生物、2農生資研、3東京農工大・応用生物)

 無脊椎動物のギャップ結合関連タンパク質であるイネキシンは、細胞間情報伝達に関わると考えられているが、細胞生物学的な解析はほとんど行われていない。これまで我々は昆虫の培養細胞系においてギャップ結合が形成されていることを明らかにし、またイネキシンの特異抗体を用いて免疫細胞化学的にその発現を確認してきた。今回、免疫電顕法を用いてイネキシンの局在をより詳細に確認した。また異なる培養条件下におけるイネキシンの発現量の変化をウェスタンブロットにより調べた結果を報告する。
     日本動物学会第75回大会(2004年09月10-12日、甲南大・神戸)

 

イネキシン(ギャップ結合関連タンパク)の組織内局在
 ○伏木大輔、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・応用生物)

 無脊椎動物のギャップ結合は、脊椎動物のギャップ結合を構成するタンパクであるコネキシンと、アミノ酸配列にほとんど相同性を持たないイネキシンというタンパクから構成される。しかしその細胞・組織学的な解析は未だ充分になされていない。前回大会において、我々はカイコのイネキシン2の特異抗体を作製し、ワモンゴキブリの前胃筋層や胸部骨格筋におけるイネキシン免疫反応が細胞境界などに局在することを、免疫組織化学によって明らかにした。今回は、電子顕微鏡レベルでの免疫組織化学を行い、微細構造レベルでのイネキシン2の局在について調べた結果を報告する。
     日本応用動物昆虫学会第48回大会(2004年03月26-28日、京工繊大・京都)

 

昆虫培養細胞系におけるギャップ結合関連タンパク(イネキシン)の細胞内局在
 ○小野 格、伏木大輔、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・応用生物)、今西重雄(農生資源研)、岩淵喜久夫(東京農工大)

 我々はこれまで、昆虫の筋組織における情報伝達ギャップ結合を介して行われることを細胞学的に明らかにしてきた。しかし、昆虫のギャップ結合を構成するタンパク、イネキシンに関する細胞生物学的な解析はほとんど行われていない。我々はカイコ・イネキシン2の特異抗体を用い、カイコ(NISES-BoMo-15A2c)およびヒトスジシマカ(NIAs-AeAl-2)培養細胞におけるイネキシンの発現を、免疫細胞化学およびウェスタンブロットにより明らかにした。さらに電子顕微鏡レベルでの免疫細胞化学の結果、イネキシン2の免疫反応が細胞膜直下に直径約 300-400 nm の斑点状に局在することを明らかにした。またイネキシンの発現に及ぼす cAMP の影響についても報告する予定である。
     日本応用動物昆虫学会第48回大会(2004年03月26-28日、京工繊大・京都)

 

ワモンゴキブリ前胃におけるギャップ結合構成タンパクイネキシン(innexin 2)mRNA の発現局在
 ○吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・応用生物)

 ギャップ結合は、二つの細胞を物理的・電気的および」化学的に連結し、細胞間情報伝達に重要な役割を果たすチャネルである。最近我々は、通常電顕法と蛍光色素細胞内微量注入法を用い、ワモンゴキブリPeriplaneta americana 前胃 gizzard の筋細胞間にギャップ結合が存在することを証明し、ノザンブロット解析により無脊椎動物のギャップ結合構成蛋白であるイネキシン 2 遺伝子が前胃で発現している事を確認した。本研究では、ワモンゴキブリ消化管におけるイネキシン2 mRNA の発現局在を組織レベルで調べた。カイコイネキシン Bm-inx2 の配列をもつ約 300 bpの二本鎖 DNA をプローブとして PCR 法でジゴキシゲニン標識し、in situ ハイブリダイゼーション法を行った結果、ワモンゴキブリ前胃の筋細胞に陽性反応を認めた。以上の結果は、ワモンゴキブリ前胃の筋細胞において、ギャップ結合を構成するコンポーネントのひとつとしてイネキシン 2 が含まれることを強く示唆した。
     日本応用動物昆虫学会第48回大会(2004年03月26-28日、京都工繊大・京都)

 

昆虫培養細胞におけるギャップ結合関連タンパク(イネキシン)の発現
 小野 格、伏木大輔・吉村亮一、○遠藤泰久(京都工繊大・応用生物)

 ギャップ結合関連タンパク(イネキシン)は無脊椎動物の細胞間情報伝達に関わると考えられているが細胞レベルでの機能解析はいまだ充分ではない。我々はこれまで蛍光色素細胞内注入法により蚊の培養細胞系においてギャップ結合が形成されており、それが cAMP で増強し、オクタノールで阻害されることを明らかにしてきた。今回イネキシンの特異抗体を用い、免疫細胞化学的に蚊およびカイコの細胞株でその発現を確認した。
     日本動物学会第74回大会(2003年09月17-19日、函館大・函館)

 

昆虫のイネキシン(ギャップ結合関連タンパク)の免疫組織化学
 ○伏木大輔、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・応用生物)

 無脊椎動物のギャップ結合タンパクは、脊椎動物のギャップ結合を構成するタンパクであるコネキシンとアミノ酸配列にほとんど相同性を持たないイネキシンというタンパクから構成される。しかしその細胞・組織学的な解析は未だ充分になされていない。今回我々はカイコのイネキシンの遺伝子配列から C 末端のペプチドを作製し、それを抗原としてマウスで特異抗体を作製した。また、その特異性はブロッティングにより確認した。それらの抗体を用い、ゴキブリ、カイコなど昆虫の組織を免疫組織化学およびウェスタンブロットにより検討した。

Immunohistochemistry of insect innexin (gap junction-related protein)
 Daisuke Fushiki, Ryoichi Yoshimura and Yasuhisa Endo (Kyoto Institute of Technology, Kyoto, Japan)
     日本応用動物昆虫学会第47回大会(2003年03月25-27日、岩手大・盛岡)

 

ワモンゴキブリにおけるギャップ結合構成蛋白イネキシン(innexin2)mRNA の発現解析
 ○吉村亮一、伏木大輔、遠藤泰久(京都工繊大・応用生物)

 ギャップ結合は、物理的・電気的および化学的に二つの細胞を連結し、細胞間情報伝達に重要な役割を果たすチャネルである。最近我々は、通常電顕法と蛍光色素細胞内微小注入法を用い、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)の消化管筋細胞間におけるギャップ結合の存在を証明した。本研究では、ワモンゴキブリにおけるイネキシン mRNA の発現を、RT-PCR およびノザンブロット法により解析した。まずワモンゴキブリ脳・筋・前胃・触覚より total RNA を抽出し、dT プライマーでの逆転写反応により合成した cDNA を鋳型に、カイコガ・イネキシン(Bm-Inx2)の塩基配列に対する合成プライマーを用いて PCR を行ったが、各組織で当該遺伝子の増幅産物は見られなかった。次に PCR 法でジゴキシゲニン標識した Bm-Inx2 遺伝子に対する約500bpの二本鎖 DNA プローブを用いてノザンブロットを行った結果、ワモンゴキブリ前胃において約 2 kb の一本のバンドを検出した。以上から、イネキシンファミリーのうち少なくとも innexin2 に相当するサブタイプが、ワモンゴキブリ前胃において発現していることが示唆される。


 Ryoichi Yoshimura, Daisuke Fushiki and Yasuhisa Endo (Kyoto Institute of Technology, Kyoto, Japan)
     日本応用動物昆虫学会第47回大会(2003年03月25-27日、岩手大・盛岡)

 

昆虫のイネキシン(ギャップ結合関連タンパク)の免疫組織化学
 ○伏木大輔、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大・応用生物)

 無脊椎動物のギャップ結合タンパクは、脊椎動物のコネキシンとアミノ酸配列にほとんど相同性を持たないイネキシンから構成される。しかしその細胞・組織学的な解析は未だ不充分である。カイコのイネキシンの遺伝子配列から C 末のペプチドを作製し、マウスで特異抗体を作製した。抗体の特異性はブロッティングにより確認した。それらの抗体を用い、ゴキブリ、カイコなど昆虫の組織を免疫組織化学およびウェスタンブロットにより検討した。

Immunohistochemistry of insect innexin (gap junction-related protein)
 Daisuke Fushiki, Ryoichi Yoshimura and Yasuhisa Endo (Kyoto Institute of Technology, Kyoto, Japan)

 Gap junctions in invertebrates consist of innexins, which have no homology in amino acid sequence to connexins in vertebrates. Up to date, it remains to clarify the distribution of innexins in cellular and tissue level of insects. We prepared the peptides containing carboxyl terminal of Bombyx innexin 2 and immunized mice. Using the specific antisera against Bombyx innexin 2, we tested the various tissues of cockroaches and silkworms by immunohistochemistry and Western blot.
     日本動物学会第73回大会(2002年09月24-27日、金沢大・金沢)

 

カイコ・ギャップ結合関連蛋白 innexin2 の発現
 金田恵二、田ノ上信太郎、○吉村亮一、西岡孝明、遠藤泰久(京都工繊大・応用生物、京大院・農学研究科)

 innexins は、無脊椎動物においてギャップ結合チャネル複合体を形成し、脊椎動物におけるギャップ結合関連蛋白である connexins と相同的機能を持つことが予想される蛋白質群である。今回我々はカイコにおけるギャップ結合の発現・局在から機能を明らかにすることを目的として、カイコ・ギャップ結合蛋白質に対する特異的抗体を作製することを試みた。GenBank より得られたカイコ innexin2 のN末端側配列(Bm-Inx2, AU003649)と、SilkBase より見いだされた innexin2 のホモログと思われるカイコの遺伝子断片(tesV0314, P33085)によりほぼ全長(約1400bp)のカイコ innexin2 cDNA の塩基配列を得ることが出来た。これを元に C 末端側の細胞内領域を含む約 90 アミノ酸残基の部位を、発現ベクター pET32b(+) に組み込み、チオレドキシンとの融合蛋白として大腸菌にて大量発現させることに成功した。また、カイコ innexin2 mRNA は、休眠卵の浸酸処理直後には既に高いレベルで発現しており、成虫触覚においても強い発現のあることが認められた。

Expression of silkworm innexin2, a putative componet of gap-junction channels
 Keiji Kaneda, Shintaro Tanoue, Ryoichi Yoshimura, Takaaki Nishioka and Yasuhisa Endo (Dept. of Appl. Biol., Kyoto Inst. of Tech; Div. of Agr., Kyoto Univ.)

 Innexins form connexin-like intercellular channels in invertebrates. We examined to produce an antibody against Bombyx mori innexin2 to clarify the distribution and functions of invertebrate gap junctions. The full length of Bombyx mori innexin2 cDNA was identified from databases GenBank (Bm-Inx2, AU003649) and SilkBase (tesV0314, P33085). A fusion protein (carboxyl terminal region, approximately 90 A. A., of the innexin2 and thioredoxin) has been produced in E. coli using an expression vector pET32b(+). Innexin2 mRNA was highly expressed in diapause eggs at 1-day after a acid treatment and also expressed at high levels in adult antennae of Bombyx mori.
     第46回日本応用動物昆虫学会大会(2002年03月28-30日、東京農大・東京)

 

昆虫消化管における神経情報伝達:ギャップ結合の関与
 ○遠藤泰久、末次妙子、吉村亮一(京都工繊大・応用生物)

 昆虫の消化管筋組織は横紋筋で構成される。その神経支配機構の解明は系統発生学的な興味だけでなく、特異な神経-筋接合を標的に新たな害虫防除法の開発にもつながる。ワモンゴキブリの消化管筋組織、特に前胃における神経-筋接合を微細構造レベルで調べ、筋組織のギャップ結合の関与について電顕及び蛍光色素細胞内注入により検討を行った。前胃は中腸との境界部で厚い輪走筋層(約15層)と内腔側にクチクラ性の歯を有し、食下物を摩砕して消化吸収器官である中腸へ送る部位である。神経線維は筋層の体腔側に密に分布し内部では稀であり、運動終板に類似した神経-筋接合は体腔側近くでのみ観察された。輪走筋細胞同士の間には、かみ合い(鉗合)構造、デスモゾーム様構造、ギャップ結合様の結合装置がみられた。蛍光色素 Lucifer yellow を体腔側の筋細胞に微小注入すると、接線方向で 2〜3 個、内腔方向で 5〜8 個の筋細胞に拡散した。対照として用いた avidin-Texas red が注入した細胞から隣接細胞へ拡散しなかったことから、ギャップ結合の存在が確認された。Lucifer yellow による dye coupling は、ギャップ結合のブロッカーとして知られるオクタノールにより可逆的に阻害された。以上の事実はゴキブリ消化管筋層の神経情報伝達にギャップ結合が深く関与していることを示している。

Involvement of gap junction on neuro-signaling in visceral muscle of insects
 Yasuhisa Endo, Taeko Suetsugu and Ryoichi Yoshimura (Kyoto Institute of Technology, Kyoto, Japan)

 The visceral muscles of insects consist of striated muscles. The electron microscopic observation revealed that the neuromuscular junction in the proventricle of American cockroach was typical, synaptic structure, including the accumulation of small clear vesicles at presynapse and the clear synaptic cleft. But only a part of muscle cells was received synaptic input, in which classical neurotransmitters (such as acetylcholine, glutamate etc.) may be used. Lucifer yellow microinjected into a single muscle cell was transferred into several neighboring muscle cells. The dye coupling occurred at the direction of hemocoel-lumen rather than the tangent one. The dye coupling was reversibly inhibited by octanol and heptanol. These result indicate that most of visceral muscle cells in insect gut are received neuronal signaling via gap junctions in a specific direction
     第24回日本神経科学・第44回日本神経化学合同大会(2001年09月26-28日、京都国際会館・京都)

 

ゴキブリ消化管筋組織の情報伝達とギャップ結合:
オクタノールの影響

 ○末次妙子、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大)、三橋 淳(東京農大)

 昆虫消化管の筋組織は、異なる伝達物質を含む複数の神経線維によって多重支配されている。ワモンゴキブリ前胃筋組織の神経線維の分布は、体腔側で密であるが内部では稀である。体腔側の運動終板に類似した神経-筋接合によって伝えられた神経情報が、筋細胞間のギャップ結合により伝達される可能性を、電顕及びルシファーイエロー細胞内注入によって明らかにした。今回は昆虫培養細胞(NIAS-AeAl-2)及びゴキブリ前胃筋組織のギャップ結合に関し、ブロッカーとして知られるオクタノールを用いて確認した結果を報告する。


 Taeko Suetsugu, Ryoichi Yoshimura, Yasuhisa Endo (Kyoto Institute of Technology) and Atsushi Mitsuhashi (Tokyo University of Agriculture)
     日本動物学会第71回大会(2000年09月21-23日、東京大・東京)

 

ゴキブリ前腸における神経筋接合
 ○末次妙子、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大)

 ゴキブリ前胃には横紋筋で構成された括約筋があり、体腔側に盲端状の神経終末が分布する。骨格筋の運動終板に類似するが、膜の肥厚はみられなかった。内腔側の筋に神経線維はほとんど分布してしなかった。隣接する筋細胞間には大きなかみ合い構造をもつ結合がみられた。筋組織における情報伝達系についてルシファーイエロー細胞内注入により検討を加えた。


 Taeko Suetsugu, Ryoichi Yoshimura and Yasuhisa Endo (Kyoto Institute of Technology)
     日本動物学会第70回大会(1999年09月27-29日、山形大・山形)

 

ワモンゴキブリ前腸筋組織のセロトニン含有神経線維
 ○末次妙子、吉村亮一、遠藤泰久(京都工繊大)

 昆虫消化管の筋組織は、骨格筋同様、横紋筋で構成されており、アセチルコリン・グルタミン酸などのアミノ酸、セロトニンのようなアミン、FMRFamide のようなペプチド作動性など多種類の神経線維によって多重支配されている。神経線維束は網目状に走行し、盲端状の終末は形成されないと考えられていたが、ワモンゴキブリの前腸の後端部(gizzard)を抗セロトニン(5HT)抗体で免疫染色したところ、網目状構造から枝分かれした個々の線維が筋細胞に終末様の構造を形成しているのが観察された。今回、免疫電顕で詳しく検討した結果、神経線維は筋細胞に非常に接近しており、その間隙には基底膜がみられず、運動終板とは異なる特異な神経-筋接合であった。神経線維は、筋層の外側(漿膜側)近くに密に分布するが、内部では稀であった。筋細胞間には特異な結合構造が観察されることから、神経の興奮の伝導への関与について考察したい。


 Taeko Suetsugu, Ryoichi Yoshimura and Yasuhisa Endo (Kyoto Institute of Technology)
     第43回日本応用動物昆虫学会大会(1999年04月02-04日、琉球大・沖縄)