■ 反応性オリゴマーの化学

 分子量の小さいモノマーとポリマーの中間に位置するオリゴマーは、高分子にはない特徴ある性質を示し、反応中間体としても有用です。このオリゴマーに種々の反応性官能基を導入したものが、反応性オリゴマーです。導入する反応性官能基の種類により、オリゴマーの反応特性が異なり、多様な反応性を付与することができます。例えば、重合性官能基を導入すると、モノマーとして働くオリゴマー(マクロモノマー)になり、重合を開始するような官能基を導入すると、開始剤として働くオリゴマー(マクロイニシエーター)になります。これらの反応特性は、低分子のモノマーや開始剤とは大きく異なり、得られる高分子も特徴的であるため、非常に興味深い研究対象です。
 オリゴマーに種々の官能基を導入し、官能基の反応性に及ぼすオリゴマー鎖の影響を調べると同時に、オリゴマー鎖によって反応系に形成される集合構造による反応制御について研究しています。また、反応性オリゴマーを反応中間体として用いると、より多彩な機能を有する高分子の合成が可能となります。そこで、反応性オリゴマーを巧みに設計し、その特性を明らかにすることで、新構造高分子、物質表面機能化、有機-無機複合材料などの、次世代高分子材料に向けた反応性オリゴマーの開発を行っています。

■ 反応性オリゴマーの応用

■ 新構造高分子
 高分子化学の新しい流れとして、これまでの直鎖状ポリマーとは異なる幾何学構造形態を有するポリマー、さらに共有結合とは異なる結合様式でつなげたポリマーの構造形成と性質に関する研究が新構造高分子として発展し始めています。このような新構造高分子は、これまでの一般的な高分子合成法では合成が困難ですが、反応性オリゴマーを用いることで、合成が可能となります。そこで、分岐や環状といったさまざまな構造を高分子に導入し、それらの分子特性を明らかにすることで、新構造高分子として次世代を担う高分子材料の創製を目指しています。


■ 高分子による物質の表面機能化
 物質の表面は他の物質と接触する重要な点であり、摩擦、ぬれ性や光の反射などの界面特性を司ることから、複合材料開発をはじめ低環境負荷材料に至るまで、高機能化材料表面が注目を集めています。そこで反応性オリゴマーやポリマーを用いて、材料表面の化学的な機能化を行い、金属の表面改質や、超低反射フィルムなどの新規材料の開発を行っています。


■ 有機-無機ハイブリッド
 有機高分子と無機化合物は基本的に混ざり合わない材料ですが、これらがナノレベルで混ざり合うと、一つ一つの固有の性質からは考えられないような新しい機能を生み出す可能性があります。そこで、反応性オリゴマーや新構造高分子の利点を取り入れた高分子設計により、カーボンナノチューブや金属酸化物などの無機物を高分子中にナノ分散させ、その特性解析をすることにより、全く新しい特性を持った新規材料の開発を行っています。



京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 物質合成化学専攻 機能性高分子材料学研究室
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