Seeds
Physiology of development and germination (Bewley JD and Black M)

1. Seeds: germination, structure, adn composition

2002年1月22日 担当:はんば

1. Introduction

種子は,植物の生活史の中で重要な位置を占める.
若い実生が生き残ることができるかどうかは,種子の生理的・生化学的な 性質に依存する部分が大きい.
また,種子生産(穀物生産)は,農学的にもたいへん重要である.
この本では,実生の成長の初期段階における種子の発達,
発芽の調節機構,そして種子にたくわえられた物質がどのように利用されるのか
を述べる.

1.2 Seed germinatiohn-some general features

発芽の定義:発芽とは,種子の吸水にはじまり,胚軸(通常は幼根)の
伸長開始とともに終わる.

つまり,生理学的には,土壌からの実生の出現や,種子に蓄積された物質の移動は,
発芽のプロセスではない.

まだ発芽のプロセスが始まっていない種子は休止 quiescentしているという.この
段階では,種子の含水率は低く(5-15%),代謝活動はほぼ休止している.
種子はこの休止の状態で,何年も生きることができる.通常は,温度や酸素量が適度な
条件のもとで吸水させれば,発芽する.

発芽のプロセスは進行しているのに,幼根があらわれない種子を,休眠している dormacy
という.親植物から散布されたときに,発芽のある段階が終了している場合を,一次休眠
といい,成熟した種子がある環境におかれたときに発芽のプロセスが進行する場合を,
二次休眠という.休眠している種子は,光や低温などの刺激を与えると,休眠が打破される.

1.3 Measurement of germination

発芽の進行をはかるための生化学的なマーカは,残念ながら発見されていない.
発芽が終了したことは,幼根が現れればわかる.幼根が周囲の組織を貫通する
前に成長している場合には,継続的な生重の増加が始まったときが,発芽の終了である.

種子の集団がどの程度発芽するかは,パーセントであらわされることが多い.
発芽率は,一般的には,S字状の曲線を描く( Fig.1.1).しかし, 発芽能力が
低い場合には,Fig.1.1eのような,ほぼ平坦な曲線になる.もし種子の生存能力が
あるとすれば,休眠が打破されていないか,あるいは,環境条件が発芽に適していない
ことが考えられる.

種子の集団が均一でない場合には,発芽曲線はFig.1.1cや eのようになる.この
曲線は,2本の曲線があわさったものであると考えられる(すなわち,2つの種子の
集団があり,発芽の時期がずれている).
通常は,発芽曲線は正に凸である.つまり,発芽の前半段階の方が,後半段階よりも発芽率が
高くなる.

種子の集団の発芽が完了するまでに要する時間は,それぞれの種子が発芽するまでに要する時間
(t)と種子の数(n)から,Σ(t・ n)/Σn とあらわされる.平均の発芽速度 R(germination rate)
は,Σn /Σ(t・ n)である.R×100は,発芽速度係数として利用される.その代わりに,
種子の50%が発芽するまでに要する時間を,発芽速度として使っても良い.この場合には,種子
集団の均一性が重要となる.集団が均一でないほど,発芽速度の分散は大きくなる.