The Physiology of Plants under Stress (E. T. Nilsen & D. M. Orcott)

8. Water Limitations

V. Mechanism by which plants compensate for water limitation

1999年4月19日 担当:はんば

植物が水不足を補償するメカニズムには2種ある(図8.7):
1)乾燥条件の回避avoidance
2)少ない水分条件下での耐性tolerance
  (1)高い水ポテンシャルを維持する場合
  (2)水ポテンシャルが低下する場合
水分が不足している場合、植物は、複数のメカニズムを組み合わせて使う。水不足に関するメカニズムには、過剰な熱や光や塩性に対するメカニズムも関与している。

A. Escape from Water-limiting Conditions

●一年生ではライフサイクルの発達、多年生ではフェノロジー(生物季節学)の発達が関与

●砂漠や地中海などの乾燥地では、多年生植物は、成熟や結実がはやい:種によっては成熟葉を2枚しかつけず、発芽から結実までたった数週間しかかからない(図8.8)。

●砂漠の多年生の種子は、連続して数回吸水すると発芽する:湿潤な条件が適当な期間保たれるため。

●水が不足している間、水を蓄えた多年生の地下器官(塊茎、球根など)の形で生き延びる。ウエルウイッチア(図 )は2枚しか葉を作らず、開花はすばやく、短期間しか続かない。

●地中海や砂漠では、乾燥する期間は葉を落葉する場合がある。

B. Drought Tolerance with low water potential

水ポテンシャルについて(資料 )。

水分不足に耐性があるということは、水が不足している間にも代謝過程を続けられるということ。植物組織の水ポテンシャルが下がる場合と、下がらない場合がある。

1. Osmotic Potential Adjustment

●組織の水ポテンシャルは、浸透ポテンシャルと膨圧の和(資料 )。組織の水ポテンシャルが下がっても、浸透ポテンシャルを低下させれば、膨圧をより高いレベルに保つことができる。膨圧は、植物細胞が代謝を行う際の基本と考えられるので、浸透調整の研究は数多く行われている。

●周囲の塩類濃度が増加したときや、土壌水分が不足したときの塩性植物halophyteのように、溶質濃度を増加させる。低温にさらされた組織でも浸透濃度は増加(凍結点が下がるので、凍結しにくくなる)。

●浸透調節の際に濃縮する溶質の大部分は、4つの構成要素(イオン、炭水化物、有機酸、非タンパク性アミノ酸)から成る。

●浸透調節に使われる4つの構成要素は、エネルギーの要求量が異なる。

1)カリウム、カルシウム、ナトリウムなどのイオン濃度が増加する場合
高濃度のイオンは細胞質に有害なので、イオンは液胞に隔離される。イオンの隔離には炭素骨格が必要ないので、エネルギーコストは安い。しかし、イオンを液胞に輸送するためにエネルギーが必要。

2)炭水化物の濃度が増加する場合
還元された炭素骨格が必要なので、エネルギーコストは高い。しかし、細胞質中で共存できるので、液胞の中に輸送する必要がない。ただし、細胞質中にシンプルな糖が増えると、呼吸が増加するのでコストがかかる

3)有機酸の濃度が増加する場合
中位のコスト(有機酸には炭素骨格が必要であり、液胞に運ぶ必要もある)。有機酸は、カルビンサイクルの中間産物から得られるので、結果的にカルビンサイクルの中間産物プールが減り、炭素固定が低下する。

4)ベタイン、プロリンなどの非タンパク性アミノ酸の濃度が増加する場合
他の溶質と比較すると、エネルギーコストが高い(溶質をつくるために生化学経路を誘導するため、炭素骨格の他にATPも必要:図8.9)。

●浸透調節するとき、液胞でイオン濃度が増加するのと同時に、細胞質での非タンパク性アミノ酸の濃度も増加する。しかし、浸透調節には、液胞でのイオン濃度の増加が重要で、アミノ酸濃度の寄与は小さい(シンプラストの水の大半は液胞にあるため)。

●浸透調整の3つの方法(圧力-体積曲線:資料 )
1)タイプ1
細胞のシンプラストの水の量はそのままで、細胞当たりの溶質の全量を増やす(図8.10A)。分化した、成長していない組織に浸透調整が必要な場合に有利。
2)タイプ2
シンプラストとアポプラストの水の量の比を変える、すなわちシンプラストの水を減らす(図8.10)。溶質の量は変わらない。水が不足しているときに、成長している系が新しい組織を作る場合に有利。
3)タイプ3
シンプラストの水の量と、溶質の量が同時に変わる(図8.10B)。成長している系で、組織の水ポテンシャルが低い場合に、新しい組織で膨圧を一定に保つために使われる。

●浸透ポテンシャルの時間変化
1)季節変化
細胞の伸張とともに浸透ポテンシャルは減少する。また、生育期の後期に作られた葉は、前期に作られた葉よりも浸透調整能力を長く保ち続ける。一斉展葉タイプの種での研究によると、膨圧が一定に保たれるメカニズムは、分化している組織では浸透ポテンシャルと細胞壁の弾性率の変化、成熟した組織では浸透調節のみ。
2)日変化
浸透調節は、一日の間にもおこる。植物の水ポテンシャルの日変化が3MPa以下なら、浸透調節によって膨圧を一定に保つことができる。浸透調節がないと、葉肉細胞の膨圧はゼロ近くまで下がってしまうこともある。

●浸透調節の効果
浸透調節によって、弱い水ストレスがかかっているときに膨圧が一定に保たれるため、気孔を開けたままにしたり、炭素獲得をより高いレベルに維持したりすることができる。塩の多い環境で生育する植物では(アカザ科)、イオン濃度を増やして膨圧を一定に保つ方法が非常に効果的(イオンがたくさんあるから)。

●完全に水和したときの浸透ポテンシャルは1-3Mpaしか変わらない(この上限は、液胞の塩類濃度に対する細胞膜の耐性や、酵素やその他のタンパク質をイオンの毒性から保護するための非タンパク性アミノ酸や炭水化物の有効性によって決まる)ので、水不足が長引くと、浸透調節では悪影響をカバーしきれなくなる

2. Tissue Elasticity

水が不足したときに膨圧がどの程度減少するかは、弾性率によって決まる:柔軟な細胞壁では、弾性率が低く、低い水ポテンシャルでも大きな膨圧を保つことができる。弾性率の変化には種間差がある。

●弾性率が減少する場合
水ポテンシャルが低くても、高い膨圧が保たれる(図8.11A)。重要な水ストレス耐性のメカニズムである。乾燥している期間は、植物の細胞の弾性率は減少する場合が多い。

●弾性率が増加する場合
水が不足すると膨圧は急激に減少するが、細胞の含水量は一定に保たれる。

●弾性率そのものも、膨圧とともにかわる。膨圧の変化に対して弾性率があまり変わらない場合は、膨圧は主に弾性率によって維持できるが、弾性率が膨圧とともに大きく変わってしまう場合は、主に浸透調整によって膨圧は維持される。

3. Symplastic water fraction

●シンプラストの水の割合が減少すると、浸透濃度が上がるので、低い水ポテンシャルの時にも膨圧を維持できる。通常、シンプラストとアポプラストの水の比は組織が発達する間に決まるので、シンプラストとアポプラストの水を再分配するためには、新しい組織を作る必要がある。

●水不足の時、シンプラストの水は減少する場合も、増加する場合もある:アポプラストからシンプラストへの溶質の移動が起こるために水の移動が引き起こされると考えると、説明できる

●種子の発芽の過程で、シンプラストとアポプラストの間での水の配分が変わる。キュウリの種子では、種子の発芽の初期には、種子から果皮に向かって水ポテンシャルの勾配があるが、後期には勾配の向きは逆になり、種子の水分含量が多くなるため、発芽の間の細胞の伸張に必要な膨圧が維持される。

●シンプラストからアポプラストへの水の移動や、組織の間での水の移動は、ムコ多糖濃度の変化によって起こる。Opuntia ficus-indica(ウチワサボテン属)では、水を蓄える柔組織にムコ多糖が作られるため、水ポテンシャルが低くても、葉緑組織に水が保たれる。

●低温の時、細胞内に氷が形成されてシンプラストから水が出てしまうと、やはり水分不足が起こる。このとき、Opuntia humifusaでは、アポプラストのムコ多糖濃度が増え、 アポプラストの水がシンプラストへ移動するので、シンプラストの水が維持される。

4. Cavitation Susceptibility

●道管に塞栓ができると、細胞を通る水の移動が阻害される。塞栓が形成されにくい種は、低い水ポテンシャルでも蒸散を続けることができる。

●木部での塞栓のできやすさは、種によっても、発達段階によっても異なり、木部の内部構造に依存する。

●塞栓が発達するメカニズム
まず、一つの木部細胞に空気が入る。その隣の細胞との圧力の差がDP(bubble pressure)を越えると、空気のシード(種)が、木部要素の細胞壁の壁孔pitを通って隣の細胞に入り、隣の細胞にも塞栓ができる(図8.14)。Bubble pressureは、木部の水の表面張力sxylemと、細胞壁の壁孔の直径Dに依存する:


つまり、壁孔の直径が小さい種ほど、キャビテーションが起こりにくく、逆に階紋scalariformあるいは大きな壁孔を持つ種は、キャビテーションが起こりやすい。キャビテーションは、階紋状の壁孔をもつ細胞が多い早材early woodで起こりやすく、晩材late woodでは起こりにくい。また、湿潤な場所に生育する種は、乾燥しやすい環境の種よりもキャビテーションが起こりやすい

●土壌水分が不足している場合、キャビテーションが多少生じた方が、植物にとってはよい。木部道管がある程度失われるので、水力学的なコンダクタンスが減少して(水が通りにくくなり)、葉の水ポテンシャルが減少するため、結果として気孔が閉じて蒸散が減少し、土壌水分をより多く保つことになる。また、キャビテーションによって、水は機能している木部道管に集まるので、その木部道管の張力は減り、葉の組織の水ポテンシャルが大きくなる。

●多年生の植物では、個々の枝によって、塞栓のできやすさが異なる(発達段階や気象条件が違うから)。砂漠の植物で軸方向に分割がみられるのは、塞栓のできやすい枝を犠牲にすることによって、水分をその他の枝に与えるメカニズムであると考えられる。

5. Desiccation tolerant

●ミズゴケ、地衣類、藻類、シダ類の中には、ほぼ完全に脱水してしまっても、それに耐え、再び水を与えれば急速に代謝活動を再開する種がある。これらの種では、水分が減少すると原形質の体積が減り、原形質膜が細胞壁からはがれて、細胞内に大きな空隙ができる(図8.15)。

● Desiccation tolerantの3つの特徴
1)溶質の濃度が高くても、基本的な細胞の機構に影響がない
2)原形質連絡が少ない(細胞が萎縮すると連絡が破壊されてしまうため)
3)細胞壁の構造がうしなわれないままで、脱水に耐えることができる

●脱水耐性には大きな種間差があり、フッカツソウ(Tortula ruralis:イワヒバ科)は水を与えた後30分で最大代謝活性が戻る。脱水した細胞質が元に戻るメカニズムはよく分かっていないが、低分子量の炭水化物raphanoseが高濃度で蓄積することによって、水分含量が低いときに細胞質をガラス状に変え、オルガネラを損傷から保護していると考えられる。

The Physiology of Plants under Stress (E. T. Nilsen & D. M. Orcott)
8. Water Limitations
V. Mechanizm by which plants compensate for water limitation

1999年5月10日 担当:はんば

C. Drought tolerance with high water potential

高い水ポテンシャルを保つことによって、水分の欠乏による障害に耐えることができる場合がある。このとき、植物の葉や茎や根のレベルで、水の流れが周囲の環境から切り離されるメカニズムがはたらく。

1. Reduction of water loss

●草本でも木本でも、葉と大気の間の飽差VPDが大きくなると、葉のコンダクタンスは直線的に減少する。このことにより、VPDの、葉の水ポテンシャルに対する影響が緩和される(葉のコンダクタンスが減少すると、蒸散が減少し、水分の損失が抑えられるから)。

●VPDが気孔コンダクタンスに直接影響しているのか、それとも気孔コンダクタンスが直接孔辺細胞の水ポテンシャルに影響しているのかを決めるのは難しいが、表皮を十分に含水させたときにも、個々の気孔はVPDに直接反応することから、VPDは気孔の開度に直接影響すると考えられる。

●水分欠乏が大きくなる季節(夏)に、VPDに対する葉のコンダクタンスの勾配が小さくなる種が多い(図8.16)。砂漠に育つ種では、夏には組織の膨圧が低くなるために、VPDに対する葉のコンダクタンスの勾配が小さくなることが多い(VPDに対する気孔の反応が鈍くなる)。

●植物が生育する場所によって、VPDと葉のコンダクタンスの関係は異なる。沿岸の植生は乾燥地の植生よりも、葉のコンダクタンスがVPDに対して敏感である。また、葉面積と根の面積の比率が大きい種ほど、VPDに対して敏感。

●VPDが大きい気象条件の下で生育する種の多くは、日中に気孔を閉じる。気孔の日中閉鎖は、植物による気孔の最適化である。気孔コンダクタンスは日中に低下して午後に再び上昇する。水分が欠乏していたり、高温だったりすると、気孔コンダクタンスの日中低下は促進される。

●土壌水分の低下に反応して気孔が閉じる場合には、根が乾燥すると孔辺細胞に気孔を閉じるシグナル(アブシジン酸と考えられる)が送られる。詳細はchapter 6。

●蒸散する面積が減ると、水分の損失は抑えられる。地中海や乾燥地の植物の多くは、乾燥落葉性。地中海の種は、葉が二形性であることが多く、乾季に大きな葉を落として小さい葉だけを少し残して乾季の蒸散を減らす(チャパラルのわい性潅木Salvia melifera や亜低木性の潅木Lotus scoparius)。

●砂漠では、乾季に無葉性になる種が多い。これらの種では、茎で光合成を行っており、他の種に比べて高い水ポテンシャルが保たれている。茎は垂直方向に伸びて光阻害を受けにくくなっており、コンダクタンスが小さく、水利用効率(失われる水に対する光合成の比)が大きい。

●水利用効率が高いほど、失われる水に対して獲得できる炭素の量が多いので、水利用効率を高めると水分が節約できることになる。通常、水ポテンシャルが減少すると、はじめは蒸散が光合成よりも大きく減少するために、水利用効率は上昇する。

●水利用効率のあらわし方
1)蒸散比
農学のシステムで、全蒸発量(植物の蒸散+蒸発)に対する作物の収量の比。CAMで20-35 * 10-3 (g dry matter/g water transpired)、C4で2.75-4 * 10-3、C3で1.0-2.5 * 10-3。
2)水利用効率の瞬間値
個々の葉で蒸散されたH2Oに対する、同化されたCO2 の比(モルであらわされる)。野外条件でガス交換法を使って測定するのは難しいので、炭素安定同位体比を指標とする方法が使われるようになっている。

●水利用効率と収量の関係は、種々の作物で研究されている。水利用効率は収量と正の相関があるとは限らないので、水利用効率の高い種を育種しても、水分が限られている土地での収量が増加するとは限らない。

●水利用効率の理論的モデル
水利用効率の瞬間値は以下の式であらわされる:





より長期の水利用効率には、蒸散以外のプロセス(揮発やクチクラ蒸散)を考慮する必要がある:



●クチクラ蒸散
クチクラの抵抗が大きい(クチクラから蒸散しにくい)場合、気孔が閉じるほど水利用効率が増加。クチクラ抵抗が小さいとき、水利用効率は気孔開度がやや低くなる点で最大になり、それ以降は気孔が閉じても水利用効率はむしろ減少する(図8.17)。境界層の抵抗と水利用効率との関係も同様で、境界層抵抗が小さい場合は、水利用効率が最適になる点が生じる。

●水利用効率の最適化
環境条件は時事刻々と変動しているので、その変動する環境に対して水利用効率を最大にするように気孔が開閉すると考えられる。気孔が開くと、蒸散も光合成速度も上昇するが、蒸散の増加の方がより大きい。ある臨界点まで気孔が開くと、蒸散速度は急速に増加する(図8.18A、水分が急速に失われる一方で、光合成速度は増加しない)。光合成速度と蒸散の関係の微分係数lは、水分が欠乏すると小さくなる(光合成速度変化に対して蒸散の変化が小さくなる)。
lを使ったモデルで、気孔の日中閉鎖が説明できる(図8.19):lを小さくすると、気孔は日中に閉鎖し、日中の水利用効率が最適化される。この最適化によって、水利用効率は10%変化する。

2. Enhancement of water accumulation

●蒸散を調節することに加えて、土壌水分をより多く利用することによって水ポテンシャルを高く維持することができる。地下水植物Phreatophytesでは、夜間に自由地下水層(地下水面より下の層)の深い根から、土壌表層の浅い部分の根に水が移動し、さらに根から土壌に水分が放出される:この水分によって、日中の蒸散に使われる水(土壌表層の水)がまかなわれる(hydraulic liftとよばれる)。

●その他の根の形態変化(図 )
サボテンは、土壌表層部の広い範囲に根系を発達させ、雨水を吸収しやすいようにしている。ある種のサボテンは、乾燥が進むと、水が失われるのを避けるために、根系を切断する。

●ペルーやエクアドルのアンデス山脈には、水分の大半を霧から得ている植物(Tillandosia)がある。アタカマ砂漠には、塩の結晶を使って大気から水分を吸収している種がある。着性のアナナスのなかには、葉の基部にある水受けにためた水を利用するものもある。

●半寄生の種は、宿主から水を受け取る。砂漠に育つヤドリギは、宿主よりコンダクタンスが高く、水ポテンシャルが低い。

●土壌から水が得られない場合は、土壌水分が高く湿潤な期間に、根や茎に水をためて、乾季の間はその水を利用する。バジャカリフォルニアにある多汁の樹木は、葉面積に対して水のキャパシタンスが高く、夜明け前と日中の水ポテンシャルの差が、他のどの生息地の種よりも小さい(図8.20)。また、葉の溶質濃度が低く、弾性率が高い(高い水ポテンシャルでも膨圧が低い)。

●水のキャパシタンスが高いかどうかは、水の量だけでなく、質も重要。多汁の茎にためられている水にムコ多糖が多く含まれていると、利用できる水の量は多くならない。

The Physiology of Plants under Stress (E. T. Nilsen & D. M. Orcott)
8. Water Limitations
VI. Summary

1999年5月17日 担当:はんば

●すべての陸上植物にとって、水環境は時間的にも空間的にも不均一であり、水利用が十分にできなくなることもある(水の供給と吸収表面積の比が小さいとき、蒸散表面から水が過剰に失われるとき)。適当な補償をしないと、植物の生理にいろいろなよくないことが起こる。

●水不足に最初に影響されるプロセスは、細胞の伸長と、硝酸塩の還元と、タンパク合成。細胞の伸長が減少するのは、膜の機能や転写などの基本的な機能が様々に影響を受けるから。

●水不足になったとき、すべての植物に細胞の基本的な生理に対する影響があらわれるのではない。水不足を補償し、回避する様々なメカニズムがある。

●水不足の悪影響を回避するメカニズムは、それぞれの種に適合した性質としてあらわれるのが一般的。水ストレスに対する適応は回避あるいは耐性に分類され、この2つは組み合わせて利用される。例えば、浸透調整をすれば水ポテンシャルが低いときに膨圧が保たれるが、同時にコンダクタンスを減らしたり、葉を落としたりすると水利用を減らすことができる。

●環境が同じでも、種によって水不足に対する適応は異なる。ある種は発達過程のタイミング(種子が芽を出す、葉を落とす、など)を変化させ、別の種は水の流れを変え(不要な根を切断する、塞栓によってコンダクタンスを減らす)、また細胞の水ポテンシャルを変える。