5/22　妹尾俊吾

平成１８年度輪読ゼミ　

６．INTERACTIONS BETWEEN SEED PLANTS AND MICROBES

６．１　INTRODUCTION

　植物と微生物の間の関係は、多くの形式をとっているが、それらはほとんど、お互いに関係した生物間の関連による影響によって定義されている。

　それらは、次のように分類できる。（+,+）はお互いに有益な関係で、両方の種が何らかの利益を得ている。（－,－）はお互いに有害な関係で、両方の種は何か損をしている。

表6.1は生物間で生じる利益のバランスの点で、ありうる関係を分類したものである。

　両方が得をするmutualism（相利共生）に加えて、生態学的に意味のある関係を盛り込んでいる。ここで、commensalism（片利共生）（0,+）は、一つの種が得をして、もう一方は影響されない。Amensalism（偏害作用）(－,0)は、一つの種が逆に影響されて、もう一方は影響されない。Competition（競合）（－,－）は、相互に有害な関係である。最後に、parasitic-type寄生（－,＋）は、一つの種が栄養源であることを意味する。もう一方がそれを消費することにより、栄養を得るとき、寄生された方は抑制される。

　この章では種子植物と微生物との間の相互作用について考える。それは、表6.1の三列目にある目をひく領域に表される関係が中心となるだろう。すべてのこれらのケースにおいて、微生物は利益を得る。しかし植物への影響は、とても利益となるものから、ひどく有害なものまで分類できる。有害なものでは、植物はなんらかの方法で阻害されたり、死んだりさえする。あなたはすでに第４章で、互いに利益のある菌根と根粒の関係に出会っている。そして鋭い植木屋は、サビ病やうどん粉病や葉枯れ病のような病気が広まるとき、植物に起こるダメージにもちろん気づいている。はっきりとしていることは、これらの相互作用が我々にとって重要な研究となることで、その理由一つでも研究する価値が十分あるということである。しかし、現在の研究では、これらの親密で難解な関係に興味ある見識を与えているに過ぎない。

　すべてではないが、これらの関係のほとんどはsymbioses(共生)に分類される。すなわち、ともに生きる種間の関係である。いくつかの共生は、陸生植物の発生に起源をもっている。陸生生物が発生した時期というのは、高度な分子のコミュニケーション系の進化にとって、ずいぶん昔のことである。そして、そうした系の発達は植物に、敵から味方を見分けたり、適当に相互作用を制限したりすることを可能にしている。

　この後の項では、4つの基本的な特徴によって起こる相互作用の異なるタイプについて学ぶ。そして、解説する様々な事例研究を紹介する。また、どうやって植物が微生物の病気にたいして自分たちを守るか、どうやって植物が微生物を認識しているかについてもより詳しく学ぶ。続く6.7や6.8の項では、新しくてやや論議のある研究分野、すなわち、どのようにその相互作用の性質が変化して、どのようにして微生物を通してのinterplant connectionsの存在が全体として、群集のダイナミクスに影響するのか、というような分野を紹介する。

６．２　FOUR　 DIMENSIONS 　OF　 AN　 INTERACTION

　植物と微生物の間には、数千の特有な相互作用があるが、それらはその相互作用について４つの特徴の観点から説明される。

・ The balance of advantage：有利のバランスについて。例えば、双利関係や微生物だけが得をする発病関係など。

・ Intimacy：親密さについて。組織だっていないゆるい関係から、微生物細胞と植物細胞の両方から成るdual organのような親密な関係のものまで。

・ Specificity：特異性について。微生物がたくさんの植物と関係するもの（広い宿主範囲）や、ある一つの種、あるいはそのなかのたった一つの品種としか関係しない（狭い宿主範囲）もの。

・ Dependence：依存性について。いくつかの微生物や高等植物は相手の欠如によって十分に機能しなくなる。これは、obligate symbionts（必須共生）とよばれる。その代わりに、相手がいなくてもある条件の下で十分に機能する関係をfacultative symbionts（条件的共生）とよばれる。

微生物が植物と一緒にいるという栄養的な関連は、これらの特徴すべてにとても重要に影響する。Biotrophic relationships（微生物が宿主と一緒に生きる場合）は共生関係である。一方、necrotrophic relationshipsは宿主細胞を殺し、腐らせて消化するような関係を含む。

６．３　CASE　STUDIES

　植物－微生物相互作用の範囲はとても多様であるため、事例研究を選ぶとき、その表面を削る程度しかできない。ここであげる事例は、上で並べられた４つの特徴の点での様式を全面的に比較するために選ばれた。また、すでにで出会ったさまざまな事例を広げていく。

６．３．１　THE　RHIZOSPERE

　・Rizosphere（根圏）とはなにか？

　・根の存在によって形成される土壌の一部。

　・なぜ微生物の密度が、周りの土よりも根圏でのほうが高い状態にあるのか？

　・Mucigelは根を使って、根圏に生息する細菌や線虫といった土壌菌のための豊富な栄養源を作らせている。またそれは、rhizosheathを形成している根の表面に付着する土壌粒子の原因にもなっている。

根圏は、植物と微生物の間のゆるい関係をあらわしている。ほとんどの微生物は、多くの植物体の根圏に非特異的に生息し、根の分泌物を栄養にしており、関係した植物に直接影響を及ぼす。宿主がいなくても、微生物は胞子や他の休閑構造体として土壌中に生き残ることができる。

しかし、病原性微生物も同様の特徴をもち、特定の植物に特異的に作用することもできる。例えば、たまねぎの根における白腐れ病の原因となっている菌類のSclerotinia cepivoraがそうである。これは、たまねぎの根の分泌物に特有の合成物に引き寄せられる。

エタノールは、土壌の水分過多が根への乏しい酸素供給を引き起こすとき、嫌気的な代謝の結果合成される。それは、多くの病原微生物を引き寄せてしまう。

Saprotrophic microbe(腐生微生物)は病原微生物からの防御対策を関連植物に提供している。植物根の分泌物は、siderophores（鉄結合因子？）を含んでいる。それらは、鉄の有用性を下げることによって、根の周りにいる微生物の成長を制限できる。しかし、土壌感染菌は栄養源獲得争いのための能力において、土壌腐生菌におとる。

・この土壌腐生菌の競争能力の優位性が、近傍植物にとってどのように役に立つのか？

・病原菌の成長は、鉄の不足によって制限される。鉄の不足は、害のない腐生菌が、制限栄養のために病原菌と競争することで高められる。

　さらには腐生菌は、感染菌の成長を抑制する抗生物質も生産する。

６．３．２　RHIZOBIA　 AND　 ROOT　 NODULES

　Rhizobia（根粒菌）はマメ科植物に根粒をつくる細菌の種類をひとくくりにする集合語である。根粒菌は通常根圏にいるが、少数の個体は関連した植物根の細胞に感染したり、根粒をつくったりできる。

・根粒は、どんな機能で無機栄養物をもってくるのか？

・根粒は、その中に生息している根粒菌による窒素固定を中心としている。

　感染した根粒細胞のなかでは、細菌はperibacteroid membrane(PBM)と呼ばれる植物の原形質膜由来の膜に覆われている。ここで、細菌は窒素固定をする細菌様を形成するために分化する。PBMと細菌様からなるその細胞小器官のような構造は、symbiosomeと呼ばれている。そしてこれが、根粒の基本的なユニットとなっている。(図6.2)

　特殊な根粒菌はある限定された植物種と協力し合う。その根粒の形成へと導くイベントの順序は図6.3に要約されている。

・ ここでは、合成の制御と、相互作用の重要性という点で、PBMの性質についてどんなことが示唆されているか？

・ PBMは植物によって合成されているのだが、その構造は細菌との相互作用の特殊な産物で、symbiosisはPBMなしには機能できない。

６．３．３　ARBUSCULAR　MYCORRHIZAS

　Arbuscular mycorrhizas（AM）内生菌根は菌根のなかで最も一般的な型である。植物種の約80％に存在している（そのほとんどは草本植物）。起源350～450年前の化石が見つかっているが、実際、内生菌根は、初期の植物が地上に生息することを可能にした役割を果たしていたにちがいない。それらは、最も古い植物－細菌の関連の一つであるとともに、最も親密で、難解な相互作用でもある。

　内生菌根の感染菌糸は、3つの媒体から発生している。そしてそれらは、propaguleとしてひとまとめにされて知られている。すなわち、「胞子」、感染された「根の断片」、他の感染した植物から伸びる「菌糸」、である。

内生菌根は、宿主特異性はあまり示さない。そして、内生菌根は、宿主がいなければ、取るに足らない成長しかしない。つまり、耕したり、樹木を伐採したりすることによる土壌攪乱は、菌糸のネットワークを壊し、土壌の伝染力を減少させるので、植物は低い栄養分しか摂取できなくなる。Table6.1は、3つの対照環境において生じたAM形成について、土壌の攪乱の影響を示している。

Table6.1にあげられた３つの環境において、AM形成の程度に土壌攪乱がどんな影響をしているか？

攪乱は、森林や荒地において感染植物の割合をおよそ半分にしているが、牧草地ではAM形成にそれほど影響していない。

この違いについて、感染根の断片やとくに胞子が、取り除かれた感染糸よりも丈夫で、牧草地においてこれらがよりすぐれた珠芽であることはあきらかである。ところが、感染糸は森林や荒地ではるかに多く見られる。

感染は、菌糸が植物根に触れてはじまる。図6.4にその感染過程の一連が要約されている。非常に根に近づくまで、菌糸は直接根に向かって伸びない。しかし、いったん触れると、菌糸は枝分かれして根の表面上に広がる。2、3日後丸くて膨らんだ円盤状のappressoria(付着器)が形成される。付着器は菌糸を根の表面に付着させる。

植物からでるフラボノイドは、近接する表皮細胞の細胞壁を破るために、菌糸を刺激する。その方法は、細い感染くいが、機械的な圧力やいくつかの細胞壁を溶かす酵素を使う。

他の菌糸は、似たような方法で、細胞壁の空隙（section4.2.1）に定着したり、他の細胞の中に入ったりする。Arbusculesは貫通している菌糸から発展した枝分かれした構造である（図6.5a）。根粒を形成する根粒菌のように、その菌は植物の原形質膜を貫通したりはしない。そして、菌糸はその膜の外延に形成されたPAM（植物の原形質膜由来）によって囲まれている（図6.5b）。PAMと菌の細胞壁の間には流動的な間隔があって、その細胞間質は、内生菌根による植物細胞の友好的な定着をしめしている。この間隔は、H＋－ATPase活性による二方向の栄養物の交換が起こっている。

なぜH＋－ATPase活性が栄養物の交換を意味するのか？

H＋－ATPase酵素は、植物膜の輸送を活発にする主要なプロトンポンプである（4章）

この関係は活動的で、2.5－4日しかもたない。しかし、他の菌糸がどんどん新たなArbusculesをつくり続けている。

活性化しているArbusculesは炭素原子を植物に供給する。そして一旦それらが形成されると、ミネラルを取り出すために周りの土壌へ伸びていく。時として、土壌や死んだ植物細胞において、厚い細胞壁に覆われた小胞が形成される。これは脂質に富んだ形態で、低い栄養土壌ではとても高い密度で、この小胞が形成される。

小胞の形成が、菌による植物へのミネラルや栄養の莫大な提供を表すとき、低い栄養土壌でのより多い小胞の発生を説明しなさい。

これらは宿主植物との交換の一種である。植物がこの関係から、ミネラルの供給によって利益を得るにつれて、植物による菌への糖の供給もより多くなる。

６．３．４　LATE　BLIGHT　POTATO

根は、微生物による唯一の感染ルートではない。ほとんどの生物が、shootsを介した植物への進入を獲得している。ジャガイモの疫病は、Phytophthora infestansによって引き起こされるもので、ジャガイモが育つところならどこでもみられる。

菌のような原生生物のPhytophthoraは前の季節の間に感染した塊茎で、越冬する。Shootを生じさせるのに、少しの塊茎しか必要としない。そしてshootsは感染の中心として働き、その中心から病気が広がるのである。

胞子のうは胞子のう柄から生じ、感染した葉の上で形成される（図6.6a）。それらは、健康な葉に飛んで、そこで芽管や遊走子の形成によって芽を出す（図6.6b）。しばらくの間泳いで、遊走子は鞭毛を失って、芽管を形成する。芽管は普通ジャガイモの葉の表皮細胞を貫通したり、時折気孔に入ったりする。

遊走子が効果的になるにはどんな条件が不可欠であるか？

遊走子が宿主上で、吸着の場所へ泳げるような水分が必要。

付着器（図6.4）は芽管の先端で形成され、遊走子ののう胞を葉にしっかりと付着させる。細胞壁を貫通して、その菌糸体は植物の細胞内で成長する。最初は、その原生生物が生物栄養価値的に吸器を通して、植物から栄養を得る。吸器は指のような隆起物で、植物細胞壁を貫通する（図6.6c）。吸器は特有の、それと植物原形質膜に挟まれた空間を持っている。しかし、ひとたび吸器のまわりの植物原形質膜が裂かれると、その細胞は死んで、その関係はnecrotrophicな関係になる。

どのような点で、これら吸器がAM菌のarbusculesと似ているか、そしてどのような点でそれらは異なるのか？

吸器は次のような点でarbusculesと似ている。それらは、一旦植物細胞壁が裂かれて、形成される。さらに、それらは特有の二面にはさまれた空間を通して生物栄養価値的に栄養を得る。しかし、吸器は次の点でarbusculesと異なる。その微生物は、arbusculesとは違って、一旦植物の原形質膜が裂かれると、植物から栄養を得続ける。

その結果として起こる損傷は、組織崩壊が原因で深緑の水でいっぱいの状況になる。組織崩壊は、毒素分泌によって助長される。その損傷が広がるにつれて、さらなる胞子のう柄の増殖箇所が発生する。特に、葉の裏面において。胞子形成は湿気が高い状況において最高となる。

なぜ湿気のある条件で胞子形成をするのが、Phytophthoraの胞子にとって最も有利となるのか？

水分は遊走子を介しての感染の拡大を円滑にするため。

光合成を減少させる葉へのダメージのせいで、ジャガイモの収穫量は苦しくなる。一旦葉の組織の75％が破壊されると、塊茎の成長は中断する。胞子のうが塊茎の上に落ちることにより、塊茎は直接感染される。これら感染された塊茎は、すばやく腐食し、さらなる不作を招く。他のPhytophthoraの胞子のう柄は有性胞子を生み出すことができる。それは、大きくて、長い期間土壌中に存在することができる。そのため、こうした原生生物はその生長と繁殖に、植物に大きく依存することを示唆しているのである。植物に依存しているにもかかわらず、AM菌とは対照的に、Phytophthoraは共生生物の完全に必須のグループではない。つまり、宿主の欠如においても、完全に、簡単に分化する。そうしたことは、ジャガイモ病のような病原関係がAM関係よりも最近に起源をもっているという事実と関係しているのかもしれない。そのため、それほど互いに依存していない。しかしながら、相互作用はAM菌ほど親しく、細かくはないが、特異性の程度はより大きい。ポテトの近親類にしか感染しないPhytophthoraへの抵抗の点から、ポテトの品種はさまざまである。だが、他の植物類を攻撃する、たくさんの似たような種が存在する。

農家の人は、ジャガイモ病を抑えるために、3方面からの対策を行っている。適当な回数での、農薬のスプレーは効果的であるが、緑にはやさしくない。健全な園芸措置（すなわち、土寄せと、作物を持ち上げる前の葉の除去によって感染から塊茎を守ること）もよく行われるが、それは小さい規模での処置についてのみ適している。しかしながら商業栽培者に最も提供しなければならないのは、抵抗のための品種改良である。宿主の抵抗性は、野生種のS.tuberosumと病気に高い抵抗性を持つS.demissumとの交配によって生み出された。しかしこれは商業的には使えなかった。

そうした選択的品種改良が、種の多様性の維持にとってどんな意味合いを持つのか？

種の多様性は維持する価値がある。なぜなら、明らかに商業的に使えない種でも、価値のある遺伝的特徴の情報源として働くからである。

６．３．５　POWDERY MILDEWS（ERYSIPHALES）

　二つの白カビ病のグループがある。そして二つとも芽と葉の灰色の感染に見られる。Peronosporales（卵菌類）、別名べと病は、灰色で湿った綿毛に似ているが、それに対して、Erysiphales（子のう菌）は分類学的に分けられていて、うどん粉病として知られている。感染した植物の上に、分生子胞子の粉状のみかけで見られる。（図6.7）

　子のう菌は顕花植物の偏性寄生生物である。Blumeria（Erisyphe）属は様々な特異性でもって多くの植物科において白カビ病の原因となる。B.polygoniはクローバーにおいてよく見られるが、多くの他のマメ科植物に感染でき、とても広い宿主範囲でそれを生じさせる。一方、B.graminisはたくさんの、特定の宿主に寄生する形状（formae speciales :f.sp.）を含む。例えば、B.graminis f.sp. triticiは小麦に感染するが、大麦には感染しない。一方、B.graminis f.sp. hordeiは大麦に感染するが、小麦には感染しない。分生子は短い芽管を形成するために、小麦の葉の上に、着床の1～2日以内に芽を出す。（図6.8）

　芽管は、自分を付着器によって表皮に付着させる。付着したポイントの下では、細い感染管が宿主の細胞壁を、機械的、酵素消化の手段によって破る。宿主細胞壁は、感染管の下や周りのカロースでもって、厚くされる（図6.8）。

　宿主が適していれば、感染管は、長い単核からなる吸器を形成するために、表皮細胞の中に広がる。B.graminisの吸器はそれぞれの端に、指のような突起をもっているが、ほとんどは簡単で、丸い構造である（図6.8ｂ）。すべての吸器は‘鞘’で囲まれており、その鞘は変性した植物原形質膜と液胞膜で構成している。その間は、基質で挟まれている。病気にかかりやすい宿主において、感染された細胞は生きたままでおり、その菌は植物から生物栄養価値的に炭水化物を抽出するために、吸器に依存している。一たび吸器が作られると、白カビは葉の表面じゅうに広がり、それが進むにつれ新たな吸器の感染を始める。菌が植物に定着されるとき、菌は分生子の生産を始められる。胞子は風によって切り離され、分散される。Blumeria sppの分生子は特有で、低い湿度、0％相対湿度でさえ芽を出す能力をもつ。それらはとても高い含水量（ほとんどの他の菌の胞子は10％なのに対して70％）であり、それは低い湿度で芽を出すことを可能にしている。そして、このことは、なぜ白カビ病が暑い季節において豊富であるのか、を説明している。

　B.graminisは子のう胞子を介して再生もできる。子のう胞子は、暗褐色、球状で、いくつかの細胞の層でできた形状であり、cleistotheciaと呼ばれている。いくらか子のうを含んでいるそれぞれは、穀物の宿主の、下の方の葉や葉の包皮の上での白カビの密集したところで形成される（図6.9）。cleistotheciaが内容物の肥大によって割れるとき、子のう胞子は子のうから強制的にはじき出される。子のうは、頂点でパッと開いて、胞子が搾り出される。B.graminisの子のう胞子は直ちに芽を出すが、それらは、13年土壌で生き残ることもできる。

　白カビ病は、作物収穫に影響される。なぜなら、感染された植物で、呼吸が増えて、光合成が減少するからである。これは、葉が根や穂に輸出できる炭水化物を減少させる。この病気は、殺菌剤でもって掃いたり吹きかけたり、選択的交配や耐性宿主変種の遺伝子組み換えなどによって制限できる。

６．４　PLANT‐MICROBE　INTERACTIONS：SOME　GENERALIZATIONS

　今まで挙げてきた例は、我々が植物‐微生物間の相互作用を総括するのを可能にする。例えば、ほとんどの植物は、土壌と空気という2つのまったく異なる環境にさらされている。そのため、それらが存在する表面も異なっていて、これら異なる環境の対照的な性質に適応されている。

　防水の外層や、外皮や樹皮に存在するシュートの表面には、そこかしこに、それぞれ気孔や皮目（木のシュートにある微細孔）によって穴をあけられている。シュート表面にやってくる微生物は、胞子のような空中分散に適した休眠状態でいなければならない。土壌では、植物は、湿った、安定な状態で活動する微生物や動物と常に接している。細根は、防水されていないが、粘液によって囲われている。土壌微生物は、栄養物の少ない、または浮遊感染体がするようなふきさらしの環境では、成長し始めることができない。土壌中で比較的動かないバクテリアとは違って、菌やその原生生物様は、菌糸を伸ばしたり、遊走子が泳いだりして根に直接近づく。効率的な分散や感染のメカニズムは特に必須共生者にとって重要である。必須共生者たちは定宿性である。そのため、ランダムな分散銃のように近づくのはあまりに非効率である。そして、シュート感染微生物では特に、その宿主植物の感染部に十分適応されている必要がある

６．４．１　FINDING　 A　 HOST

　胞子の放出は、適した場所で適した宿主に出会う確立をふやすような状態となるように調節されている。しかしながら、ひとたびpropagule（感染媒体）が分散されると、微生物は周囲の刺激に反応することによって、適した宿主を見つける機会を増やしている。その反応は、thigmotropic（接触屈性）であり、大麦のサビ菌のケースでそうである。その芽管は、宿主の葉の表皮細胞の縦軸に直角に成長し、細胞間の接合部で枝分かれし始める。（図6.10）

　この成長様式は、気孔に出会う機会を最大限にする。そして、気孔を通して菌は葉に進入する。

　より高い頻度で、微生物が、植物によって放出される化合物に反応することで気孔に出会う。それはchemotropic（化学屈性）である。

　

６．４．２　METHODS OF INFECTION

　共生であろうと、病原性であろうと、ほとんどの植物感染菌は普通、アポプラストに進入する。バクテリアや外生菌根のような細胞間を貫通するものとは違って、両者は専門的な特徴を示さないが、付着器や感染くいは植物細胞壁を破るのに用いられる。

　しかしながら、両者の間で、アポプラストへの接近にはっきりとした違いがある。病原菌は、進入を円滑におこなうために、かなりの量の消化酵素を植物細胞壁に使う。

　これに対して、共生菌は進入のために、感染くいの、より機械的な圧力に依存している。

　消化酵素は、機械的圧力に比べて、より活発な植物防御反応を呼び起こす傾向がある。細胞壁の断片（消化酵素によってくだかれた）は、侵入者が進入しようとしていることを植物に警告するシグナルとして働く。すなわち、よりやさしく進入すれば、宿主の防御反応を呼び起こすことはないのである。

　AM菌は、植物細胞壁への貫通に、機械的圧力を用いていたが、これは、植物の防衛反応を最小にするためであったのである。

６．４．３　NUTRITIONAL　RELATIONSHIOS

　内生菌根、病原菌の吸器、原生生物のPhytophthora、根粒菌の根粒、これらの構造と機能の間には、明らかな類似点がある。これらのそれぞれの構造は広い表面領域を備えており、そこの上で栄養分の交換や摂取を行っている。共生であろうと、寄生であろうと、生物栄養価値的関係は長い期間存続することができる。生物栄養価値的な関係性において、微生物が植物細胞の細胞壁を破ろうと、破るまいと、その二つの有機体の原形質膜は無傷で機能を残す。その微生物はアポプラストの中で効果的に残るのである。

　寄生関係と共生関係の間の重要な違いは、H＋－ATPase（プロトンポンプ）にある。プロトンポンプは、原形質膜を通す溶質の運搬をおこなう。寄生関係において、プロトンポンプは、吸器のある面（図6.6）に関係した植物細胞膜側には存在しないが、微生物細胞側には存在する。一方、AM菌や根粒菌などの共生関係では、プロトンポンプは共生に関係した植物細胞膜においても、普通に存在している。

　この対比について説明しなさい。

　共生関係では、栄養の相互移動であるが、一方寄生関係においては、植物から微生物への一方向の移動となる。

　Biotrophic(一方的に栄養をとる)寄生とは違って、ほとんどのnecrotroph(宿主を殺す)は宿主植物に攻撃を仕掛けるのに助けとなる毒素を使う。その微生物が生み出す酵素や毒素は、植物の防衛反応に打ち勝つのに助けとなる。寄生もnecrotrophも、胞子や独立した腐生菌の形態で、宿主のいないときに生き残ることができる。

　Necrotrophic(宿主を殺す)関係はよく、強盗や引ったくりに例えられる。その植物（被害者）は、その攻撃的な敵が欲するもの（例えば糖）を奪っていくのを防ぐことはできない。

　そのイベントについて、巧妙なことは何もない。被害者はその相当のダメージに苦しむか、死ぬかである。

　これに対して寄生は、空き巣とか詐欺師に例えられる。すなわち、宿主から防衛反応を引き出すことなしに、必要なものをとってくるのである。それどころか、植物をだまして親密な関係を形成させることで、植物の栄養を使い果たすのである。

共生生物は、よく下宿人に例えられる。無機栄養素の形での支払いの見返りに、菌は宿主から糖の形で賄いつき下宿を受けるのである。

SUMMARY OF SECTIONS 6.3 AND 6.4

１． 根圏は植物と微生物の間で、ゆるくて、組織立っていない関連を示している。

２． pSymプラスミドを持つ根粒菌は、マメ科植物に感染できる。そして、根粒を生み出して、そこで窒素固定をする。その関係はかなり特有で、非常に親密で共生的である。すなわち、植物は根粒菌から窒素を得て、見返りに根粒菌は糖質を受け取る。

３． 内生菌根は、ほとんどの草本植物と特定の子嚢菌との間の、非常に古い、親密な共生関係である。その菌は非常に広範に存在しているが、必須の共生関係である。

４． Phytophthora infestansはジャガイモの疫病を引き起こす。その卵菌類はかかりやすい宿主の葉に感染し、そこから病原菌は最初はbiotrophic(一方的に栄養をとる)に、その後necrotrophic(宿主を殺す)に栄養を宿主から得る。その関係は必須ではないが、AM菌よりも特異的である。

５． 白カビは、ほとんどの顕花植物の偏性寄生菌である。その空中飛散する胞子は宿主のシュートに感染し、そこでそれらは吸器の形成を含む親密な関係を形成する。菌の栄養摂取はbiotrophic(一方的に栄養をとる)である。宿主の範囲はとても狭い。

６． 微生物の分散、感染メカニズムは、感染媒介（土中や空気中）や宿主への進入経路に適していなければならない。

７． 微生物は、環境の刺激に応答することによって、宿主の感染を促進させられる。

８． 付着器や感染くいや感染糸のような専門的な形態は、微生物によって用いられており、それは機械的な方法で植物細胞壁を貫通する。細胞外液や壁退化酵素は、細胞壁をやぶるのに選択的、追加的な助けとなるが、これらは病原菌においてより典型的である。

９． Biotrophicな関係で、植物と微生物の間の界面の構造において、たくさんの類似点がある。しかし、一つの重要な違いがある。それは、双利共生関係が植物と微生物の両方の界面の膜にプロトンポンプを持っているのに対して、これらのプロトンポンプは病原関係においては、微生物の膜にだけ制限されている。

６．５　PATHOGENS ，VIRULENCE AND RESISTANCE

　古代のシュメール（イラク南部）での、農業の起源以来、人間は、微生物による病気の損害に対して戦ってきた。主な武器の一つは、植物がもともともつ病気に対抗するメカミズムを利用することである。しかしながら、より詳しくそれらを議論する前に、今まで出会ってきた多くの専門語を見直すことが重要である。

　Pathogensは病気の原因となる種である。しかし、宿主範囲が広いものも、狭いものもいるため、宿主植物への感染を定着させることができず、害がない菌株もある。つまり、それらは無毒である。

　これに相応して、ある宿主植物は、無毒な菌株によって莫大な防御反応を呼び起こされることで、特定の病原体に対抗している。

　宿主の感受性の程度と、防御反応の強さには、かなりのばらつきがある。Vertical resistance(垂直方向の防御)は、宿主に特定の無毒な病原菌株に対する防御をあたえる。一方、Horizontal resistance(水平方向の防御)は、広い範囲の病原菌に対しての防御である。この防御は、病原菌を殺すというよりは抑えるようなものである。そして実際は、この水平方向の防御は、傷や土壌の有毒金属のような物理的ストレスによって呼び起こされることもある。

６．６ DEFENCE MECHANISMS IN SEED PLANS

　ほとんどの場合、植物の防御機構は、動物が病気に対して反応する方法と似ている。植物は、病原微生物による好ましくない侵入に対抗する防御機構をたくさん持っている。その上、それらはほとんどが効果的であるため、ほとんどの植物は一生の大半を病気なしでいる。

　いくつかの防御は「構成的」で、いつでも存在している。それらは、厚い外皮であったり、抗微生物作用のある副代謝産物であったりする。そしてそれらは、植物の一生を通しての汎用な防御を可能にする。

　別の防御は「誘起的」で、感染が進行するときのみ現れる。その誘起的な防御はとても複雑なシステム（図6.19にまとめられている）である。そのため、このシステムを理解しやすくするために、全体的な経路を見る前に、順々にこの経路を見ていく。

6.6.1 CHANGES TO THE CELL WALL

　ある物質が、菌の侵入に対する局在化した早い反応として植物細胞壁に加えられる。これらの物質は、リグニン（フェニルプロパノイド経路の生成物）のようなフェノール化合物やペルオキシダーゼを含む様々なたんぱく質である。これらの物質には共通した特徴があって、それは普通の細胞壁構成物よりもcross-rinking(交差結合)の能力が優れていることである（図6.11）。交差結合は壁を強くして、微生物の攻撃に影響されにくくする。過酸化水素が病原菌の攻撃の初期に生み出されるが、これは酸化的な交差結合の基質として働く。ペルオキシダーゼは、交差結合の他に、リグニン合成に関与している。

　タンニンやリグニンはたんぱく質に結合することもできるため、酵素活性を抑制することができる。これによって植物は、細胞を溶かす微生物の酵素を失活させることができる（タンニンは、革製品を保存する作用がある）。

　素早い細胞壁の強化（図6.8ｂ）は、病原菌の侵入を遅らせて、他の防御物質を活性化させる時間を与えるのである。

6.6.2 PHYTOALEXINS

　フェニルプロパノイド経路はphytoalexins（フィトアレキシン）の生成経路でもある。フィトアレキシンは低分子化合物であるが、微生物の攻撃の後、植物細胞で生成されて、蓄積される。これは、副産物として分類されるが、植物の重要な防御物質の一つである。

　フェニルアラニン・アンモニア・リアーゼ(PAL)とカルコン・シンターゼ(CHS)は両方ともフィトアレキシンの合成に関与した重要な酵素である。PALはフェニルプロパノイド経路の最初の酵素である。（図6.12）

　PALはフェニルアラニンをcinnamic acid(桂皮酸)に変える。桂皮酸はリグニンやタンニン、フィトアレキシンなどの様々なフェノール化合物の前駆体である。

　フィトアレキシンは低い能力の抗生物質である。それらはバクテリアや菌、動物細胞、ウイルスや他の植物細胞にさえ効果的に働く。ほとんどのフィトアレキシンは脂肪性分子である。そのため、脂質に溶けることができるので、原形質膜を通過して細胞の中に直接攻撃ができる。フィトアレキシンはラジカルを引き起こして、DNAを傷つけ、細菌の膜をばらばらにする。それらは感染場所でのみ働いて、病原菌の成長を抑制する。

　病原菌はフィトアレキシンに対してそれぞれ異なる感受性を示す。ほとんどの菌は、毒素を減らすためフィトアレキシンを新陳代謝させる能力を持つ。

　いくらかの病原菌は“抑制剤”を合成し、フィトアレキシンの蓄積を防ぐことができる。この抑制剤はPALやCHSのmRNAの蓄積を抑制するので、フィトアレキシンの合成を減らす。

6.6.3 HYPERSENSITIVE RESPONSE (HR)

　HRは、病原菌の侵入によって起こる植物細胞の急速な死と崩壊を意味する。この局在化した細胞死は、病原菌を孤立させ、その定着と拡大を防ぐことができる。それは病気をもった葉で、小さい斑点（壊死した点）として見られる（図6.14）。

　そうした計画的な細胞死は活発で、整然とした過程である（5章）。それは、戦術的撤退に例えられる。敵の進行を妨げるために、退却するときに作物を燃やして、橋を壊す。

　細胞死は少なくとも2つの経路で、病原菌種に応じて起こる。一つは動物において見られるアポトーシスに似ている。それは、一連の細胞活動の停止と細胞内小器官の凝縮である。別のルートは細胞壊死に似ている。これは計画的細胞死の別の例である。

　ＨＲがウィルスや病原菌、バクテリアに対してどのように効果的であったか？

　ＨＲは、ウィルスの細胞から細胞への原形質連絡に影響を与えていたため、ウィルスを抑制した。細胞死は脱水症を生じさせるので、長期間のバクテリアの生存と成長を阻害する。

6.6.4 PATHOGENESIS-RELATED PROTEINS (PR-PROTEINS)

　多くのたんぱく質の合成が、病原菌の存在によって生じる。こうやって生じるPR-proteinはPR-1からPR-11まで、11種類に分けられる。しかしほとんどの機能がなぞとなっている。PR-2,PR-3,PR-11は加水分解酵素で、β-1,3-グルカナーゼ活性とキチナーゼ活性を持つ。これらの酵素は細胞の液胞の中に貯蔵されている。微生物だけでなく、植物の細胞壁にもグルカンで構成されているポリマーがあるので、こういった区分けは重要である。植物の細胞壁には、微生物と違ってキチンは含まれていないので、キチナーゼ活性に関しては問題ではない。

　グルカナーゼがでたらめに、ばらまかれると植物にとって何が危険なのか？

　植物が結局自分の細胞を消化してしまうことになるため。

6.6.5 SYSTEMIC ACQUIRED RESISTANCE

　表6.2はタバコ（Nicotiana tabacum）の二つのグループにおける実験の結果である。ひとつは、あらかじめ無毒なタバコモザイクウィルス（TMV）の株によって感染させたもの。様々な病原菌に対する抵抗性が、病斑の大きさによって判断できる。より小さい病斑はHR(Hypersensitive Response)があった証拠であり、感染した植物の抵抗反応を示している。

・ 表6.2を使って次の質問にこたえなさい

(a) 前もってTMVに感染させたものが、つぎの病原菌による感染実験にどんな抵抗をしたか？(�ｳ)TMV（�ｴ）別の病原菌（�ｵ）細菌性病原菌株（�ｶ）カビ病原菌

(b) 抵抗は、前もって感染させた部分だけに制限されていたか？

（a） 前もっての感染は次のことにつながる。(�ｳ)小さい病斑、同じ病原菌のため抵抗性は増した。（�ｴ）この生じさせた抵抗性が、別の病原菌にも広がった。（�ｵ）細菌性病原菌にも広がり、（�ｶ）カビ病原菌にも広がった。

（b） 抵抗性は感染させた場所だけでなく、植物全体に広がっていた。

　前もって植物を病原菌にさらすことは、さらなる病原菌の攻撃に対するより大きな抵抗へと導く。このsystemic acquired resistance(SAR)は動物における獲得免疫の進化に似ている。

6.6.6 COORDINATION OF DEFENCE RESPONSES

　ＳＡＲは長年認識されてきた。しかし、最近になって、注目が微生物の変化によって生じる別の変化に集中してきた。それは情報伝達経路に関与したもので、そのため主要な防御メカニズムの調節を担っている。細胞間の情報交換は5章で述べた。最初の研究では、ほとんどが動物を参考にしたものだったが、研究が植物系に進歩するにつれて、植物と動物で働く系の間にいくつかの近い類似点があることが徐々にわかってきた。

　Ion fluxesやoxidative burstや一酸化炭素、リン酸化反応などは全て、植物の防御系を意味している。徐々にその系の様々な要因が、まだ暫定的ではあるが、防御調節の全体モデルへと組みあがってきている。

ION　 FLUXES

　侵略にたいする素早い植物の反応のひとつが、イオンの急激な流れである。細胞外のCa2+が、活性化したCaチャネルを介して細胞質に流入し、同時に相反のH+とK+の動きがある。Ca2+とH+は、細胞外でより大きな集積となる。破壊的な病原菌の原形質膜への侵入が起こるとすぐに、急激なイオンの流れが起こる。Ca2+は、同時に起こる細胞壁の肥厚とフィトアレキシン合成、hypersensitive細胞死に関与されていると考えられている。架橋結合とカロースの堆積は、Ca2+シグナルによって引き起こされる。

OXIDATIVE　 BURST

　Oxidative burstは微生物の感染に対する宿主の反応の特徴的な素早い機能である。図6.15は、植物の防御の役割を要約してある。病原菌による感染は、NADP.2Hオキシダーゼの活性を導く。これは、superoxide(O2・－)の生成を促し、過酸化水素を生成する。活性酸素は、抗微�ｶ物剤として働く。ほとんどがとても強力な酸化剤で、大規模な細胞傷害へと導く。過酸化水素は、酸化的cross-rinking(交差結合)において基質として働く（6.6.1）。これに加えて、過酸化水素はフェニルプロパノイド経路(図6.15)やイオン流入などを刺激し、宿主細胞を保護するような酵素をコードする遺伝子を活性化する。

　図6.16は、過酸化水素の蓄積と、細胞死の誘導を図式化したものである。悪性な病原菌も無毒な病原菌も、素早いが弱くて一時的な過酸化水素の蓄積を誘導している(phase��)。これは、一般的な、フィトアレキシン刺激やリグニン化、細胞壁の肥厚化のような反応を誘導する。そして、無毒な病原菌による予防接種だけが、第二の大量で長期のoxidative burstを誘導している(phase��)。この過酸化窒素の蓄積は、HRを誘導するのに十分な量である。

THE　 PHOSPHORYLATION　 POISE

　Oxidative burstはリン酸化と脱リン酸化の間のバランスによって調節されており、リン酸化平衡と呼ばれている。タンパクホスファターゼはリン酸化を減らし、タンパクキナーゼがリン酸化を活性化する。こうした調節は、oxidative burstの素早い誘導や、大きさや持続の管理にとって重要なことである。

ACCUMULATION　 OF　 SALICYLIC　 ACID

　サリチル酸は安息香酸の誘導体で、フェニルプロパノイド経路の副産物である。それは、直接的な抗微生物活性はないが、様々な役割をもつシグナル分子として作用する。その防御における役割が、図6.17に要約されている。

　サリチル酸はPR-proteins遺伝子の活性化や全身の獲得耐性の進行に関係している。増加したサリチル酸は直接フェニルプロパノイド経路を刺激する。また、カタラーゼを阻害もする。

　カタラーゼは阻害されると、植物の防御にどのような影響があるか？

　カタラーゼは、過酸化水素を水と酸素へ分解するスピードを速める。この反応を阻害することは、過酸化水素の蓄積を円滑にすることにつながる。

前にもあったように、過酸化水素の蓄積は、細胞壁のcross-linking、抗微生物作用、細胞防御遺伝子の活性化、リグニンやタンニンやフィトアレキシンの合成、Hypersensitive Response(HR)、といった様々な防御機構を促進する。

NITRIC　 OXIDE (NO)

　一酸化窒素は最近、植物の防御反応に関するシグナルとしてリストに加えられたが、おそらく最も重要な防御シグナルである。

　一酸化窒素は、植物防御遺伝子の転写活性やHRを引き起こす活性酸素と共同する。図6.18は一酸化窒素の役割を要約している。一酸化窒素は大豆の細胞において、細胞死を増加する活性化酸素と相乗的に働く。NOは、フェニルプロパノイド活性を増幅するPAL(phenylalanine ammonia lyase)を活性化する。そして、リグニン化やフィトアレキシン合成、サリチル酸の生成などに導く。植物はアミノ酸のアルギニンからNOを生成している。さらに、NOの効果はグアニリルシクラーゼやcGMPによって仲介されている

　NOとグアニリルシクラーゼとcGMPとのあいだの機能的な関係は何か？

　細胞の中で、第一のメッセンジャーであるNOは、酵素グアニリルシクラーゼと結合する。すると、第二のメッセンジャーであるcGMPの生成を触媒し、次々と防御反応を促進する。

6.6.7 THE　 PLANT　 DEFENCE　 SYSTEM　 ASSEMBLED

　今までの植物全体の防御モデルを図6.19にまとめた。

　活性酸素とNOとの間の相互作用が、シグナルの大きさを調整し、最終的にHRへとこの経路を導いている。

・ 図6.19より

(a).HRはion fluxes、NO合成、oxidative burst、リン酸平衡、peroxonitrite radicalなどによって調整されている。

(b).SARは、(a)のものとサリチル酸によって調整されている。

(c).リン酸平衡とoxidative burstは細胞防御遺伝子の活性を調整している。

NOは、この経路において中心的役割を果たしていているため、今までに挙げた様々な防御物質の合成に影響している。

6.7　 RECOGNITION　 AND　 RESPONSE

　宿主植物は微生物の存在を認識し、それに応じて反応している。では、どうやって病原体と共生者とを見分けるのか。

　実際、植物はものすごく繊細なchemoperception(化学認識系)をもっていて、微生物から出る物質を認識する。

6.7.1 RECOGNIZING　 PATHOGENS　（病原菌の認識）

　植物の防御反応を刺激する因子は、elicitor(誘導因子)と呼ばれている。今まであった微生物の侵入時に、抗微生物物質の合成を促進するのは、exogenous elicitor(外因性因子)と呼ばれる。これに対して、例えば、壊された細胞壁の断片が防御反応を引き起こすようなものは、endogenous elicitor(内因性因子)と呼ばれる。こうしたHRを誘導するような因子は、頻繁に起こってはならないので、これを認識するメカニズムははっきいりと識別できるようなものになっている。

　認識のメカニズムとしては、シグナル／受容体の関係が考えられる。図6.20より、病原菌のAVR遺伝子産物と、宿主植物のR遺伝子産物が結合すると、HRを起こし、結合していなければ、HRを起こさないことがわかる。

　AVR産物は細胞外、細胞内で病原菌の生活環に応じて認識される。これらの誘導因子は、システインの豊富な領域を持っている。それに対して、R遺伝子産物であるレセプターは一方の領域に、LRR(ロイシンの豊富な領域)を持っている(図6.21)。そのため、レセプターはLRRで誘導因子を結合させ、もう片方のタンパクキナーゼ領域で情報伝達をする。

　タンパクキナーゼは、タンパクのリン酸化を触媒する。（6.6.6章）

6.7.2 RECOGNIZING　 MUTUALISTS　（相利共生の認識）

RHIZOBIA　 AND　 THE　 HOST　 RESPONSE

　根粒菌における窒素固定の形成は、シグナル交換とともに始まる。(図6.22)まず、植物から排出されたフラボノイドがNod Dと結合し、根粒形成遺伝子(NOD genes)のプロモーターを活性化させ、根粒形成遺伝子の転写を誘導する。そして、NOD因子と呼ばれるタンパクが合成され、植物根における様々な反応を誘導する。

　様々な植物は、それぞれ異なるフラボノイドを分泌しており、Nod Dは特有のフラボノイドレセプターをコードしていた。このことが、根粒菌による宿主認識を可能にしていたのである。

　Nod Dは、HRを呼び起こすキチンとよく似た構造であるが(図6.23)、Nod Dは植物に、根粒を共生者として認めるよう誘導している。

　このことから、植物の共生認識は、病原菌認識のシステムから進化したものであることがわかる。

6.7.3 KNOWING　 THE　 ENWMY ： CONCLUDING　 REMARKES　

　全ての微生物が宿主の防御反応を誘導するわけではない。防御反応を起こすか起こさないかは、複雑なシグナル分子の認識によって制御されており、これは共生と寄生の両方に関係している。

　病原菌は、認識を起こさせないように（植物に認識されるとHRが誘導されるため）進化してきているが、共生関係では、植物による認識が起こるように進化してきている。

　つまり、相利共生は共生者との共進化の結果であるが、寄生関係は、おそらくそれぞれが競い合うようにして進化してきた結果である。

6.8　 MYCORRHIZAS　 IN　 THE　 COMMUNITY

　これまで研究者たちは、直接植物に影響する「病原菌」に対する研究を中心的にとり行ってきていた。しかし、近年なって菌根が植物社会の組成や機能に重大な影響を与えることがわかってきた。

6.8.1 VARIATIONS ALONG THE PARASITIC-MUTUALISTIC AXIS

　菌根は、植物との最も古い共生生物で、ミネラルや有機物の交換を行っている。しかし、この関係は常に行われているわけではなく、ときには寄生的な関係となることもある。

　図6.25(a)より、菌根の関係は、純支出が利益よりも少ないときには、植物にとって共生的であるといえる。しかし、支出が利益を上回ったときには寄生的となっている。

　寄生的となるのは、次のような要因が関係している。

�@Developmental Factors（菌根の発達）

　純支出と純利益の間のバランスは、菌根の発達によって目覚しく変化する。

�AEnvironmental Factors

　図6.25bより、栄養をあたえると、資源の制限がなくなるので、宿主植物にとって菌根は必要でなくなる。つまり、人間が肥料を与えるなどして植物―菌根間のバランスを変えてしまうと、支出―費用のバランスを変えてしまうのである。

　図6.25cより、光合成能が制限されると、菌根への栄養の配給が多くなって、植物の栄養が少なくなってしまう。つまり、人為的な汚染による光合成能の低下や草食動物の過密化などによって、植物の生産物が使い果たされ、菌根との関係を維持することができなくなるのである。

�BGenotypic Factors

　野生の植物群は、環境によって変化してきた遺伝子のプールを持っていて、時間がたつにつれて、菌根を最大限に生かすような遺伝子型が選別されてきた。

　しかし作物やプランテーション植物は、こうした菌根の機能に伴った遺伝子型をもたず、肥料を加えるしかないため、植物―菌根間の関係をつくることができない。すると図6.25bのような関係となって、菌根は寄生的に働く。

6.8.2 MULTIORGANISM NETWORKS ： THE ‘WOOD-WIDE WEB’

　最近の研究で、菌根の新しい役割が明らかとなった。それは、植物間で連結する菌根の‘網’で、栄養の配給やコミュニティー構成に重要な影響を与えている。

　木の根は、たくさんの菌種によってコロニーが形成されていて、木から木へとその菌糸を伸ばして、ネットワークを作っている（図6.27）。

THE‘WOOD-WIDE WEB’AND CARBON TRANSFER

　最近の研究によると、炭素が菌根の菌糸体(図6.27のような)を介して植物から植物へと移動していることがわかった。

　炭素の同位体である13Cや14Cが、植物間の炭素の移動実験に使用される。図6.28より、光処理における、植物間の同位体炭素の移動量が分析された。これによると、根を介しての炭素の移動量が最も多かったのはdeep shadeのときであった。このことは、炭素は相対的に高い光合成レベルの種から、低い光合成レベルの種へと移動していることを示唆している。

THE‘WEB’AND　 PLANT　 DIVERSITY

　図6.29から、菌根コミュニティーの多様性が、関連した植物コミュニティーの多様性と生産性に直接比例していることがわかる。この仮説をテストしたものが図6.30で、菌根種が増えるにつれて、植物種の多様性やシュート生物量、根の生物量が増えている。

　しかし、商品作物において、菌根は助けにはならない。それは、肥料の加えられた場所では作物間の競争が激しくなり、単作を好む商品作物で肥料の利用が削減されてしまうからである。

　もちろん、菌根系の生態的複雑さは完全には明らかになっていない。そのため、菌根形成に対する植物反応の新たな知識が、適切な菌根の利用モデルを発達させることになるかもしれない。