輪読ゼミ　第３回　６／２６　Ｐ４５～　　　　　　　

平成１８年度輪読ゼミ　5/8(月)　尾河朋美

1. PLANT EVOLUCTION AND STRUCTURE(p.1~13)

1.1 INTRODUCTION

植物の研究をするにあたって、進化の過程、ライフサイクル、組織についての背景を知ることは不可欠である。

植物の起源は水中であるにもかかわらず、陸地へと進出してきた。ここで注目したいのが、陸地で生活することに伴い植物がますます特殊化してきたことであるが、そのことによって、植物界におけるいくつかの重要な進化の傾向が明らかにされる。これらのことは、植物のライフサイクル、植物細胞や器官（特に輸送・支持メカニズムに関する部分）の形態学や解剖学において明白である。

1.1.1 THE PROBLEMS OF LIFE ON LAND

植物が耐水性の緑藻から進化し、陸地に出現し、土手や湖や小川で生存するようになったということについて、有力な証拠がある。多くの緑藻が運動性の生殖対による生殖を行うため、植物が陸地の環境に完全に適応するためには、自ら独立した生殖メカニズムが不可欠なのである。

最初に上陸した植物はほふく性で、比較的湿気のある環境で互いに生いかぶさっていた。この習性から、光吸収が制限され、光をめぐる競争が生じ、選択的な力が働いて維管束植物やコケ植物のような直立した植物体へと進化した。初期の直立の植物（シルル紀中期）が二股に枝分かれしたとこを示す化石が残っている。（1.1）同じ接合点から生じた枝葉重要性が等しく、また、この植物は子房がなく葉も進化していない。しかし、植物を直立させる特殊化した支持細胞はすでに（シルル紀後期までには）存在していた。

より効果的な光吸収や、細胞からの水の浪費を制限することの必要性から、葉面積が拡大し、表面は防水性の細胞へと進化した。葉面積が拡大し、より効率的に光合成が行われるようになると、蒸発という水のロスを防ぐ必要性は増加する。表面の防水加工のメカニズム、ＣＯ_２が通過できる気孔、水の吸収・輸送システムが効果的になることが生き残るために必要である。所期の植物はあまり吸収性に優れていない仮根によって固定されている。（1.4）後に進化した維管束植物の根はよりいっそう効果的に水を吸収できる。この根は維管束植物より早期に多様化したコケ植物には見られず、同様に、維管束植物のような効果的な水輸送組織も見られない。

植物の陸上への適応は、ライフサイクル、細胞の構造や形態、生理機能において、重大な変化を遂げたのである。

1.2 ALTERNATION OF GENERATIONS

植物のライフサイクルには２種類ある。

・同型世代交代…一方は配偶子、他方は胞子を生じさせることを除くと、２つの世代（配偶体と胞子体）がほとんど区別がつかない。藻類（アオサなど）

・異型世代交代…配偶体と胞子体が形態的に異なる。紅藻、コケ植物、維管束植物。

異型世代交代を行う種より後に進化し、現存の植物はすべて異型世代交代を行うものと考えられている。

異型世代交代の特徴としては、一方の世代が他方より大きい、あるいは生存期間が長いことにより優位を占めるということである。

○以下にあげる植物の主要な世代は何か。

（コケ植物、シダ植物、ソテツ、針葉樹、顕花植物…）

●コケ植物を除くすべての種で、胞子体が主要な世代である。

今は絶滅してしまった陸上植物は同型世代交代を行っていたと考えられているが、その証拠は決定的なものではない。化石資料の２つの世代が本当に同種のものなのかを断定するのは難しいのが問題となっている。しかしこのような証拠でもときには説得力のあるものもある。例えば、Sciadophyton（配偶子）とRhynia（胞子体）という２つの化石は形�ﾔ的に同じで、同じ場所から発見されたことから、ひょっとしたら同種の異なったライフサイクルの段階であるかもしれないと考えられる。（1.4）

維管束植物の胞子体世代の起源については２つの学説に分かれる。

・transformation theory…同型世代交代は原始的な状態で、同型世代交代の後に異型世代交代をする種が現れる、と想定する。

・interpolation theory…胞子体の世代は高等植物の祖先には存在せず、世代交代がない全く配偶子だけであった。胞子体の世代は、受精の後の段階として起こる減数分裂をするはずだった接合子が減数分裂するのを遅れてしまった結果である、と考える。

植物のライフサイクルのほかの重要な特徴：

・雄性配偶子、雌性配偶子は同じ配偶体から生じるか、別の配偶体から生じるか。

・特に配偶子か移動するときに、配偶子はどの程度自ら独立した環境でいられるか。

・胞子体と配偶体はどの程度お互いから独立して存在しているか。

・胞子体の胚はどの程度保護されているか。

1.3 LIFE CYCLES OF MOSSES AND FERNS

蘚類（1.5）と、シダ植物（1.6）のライフサイクルを比較してみると、両方とも異型世代交代を示すが、それぞれ別のライフサイクルの段階が優位であることが確認できる。

　　　　　　　⇒藻類：配偶体

　　　　　　　⇒シダ植物：胞子体

1.3.1 GAMETOPHYTE-DOMINATED MOSSES AND OTHER BRYOPHYTES

藻類の植物体は配偶体である。藻類の植物は３連の小さな葉のついた比較的短い茎を持っている。仮根が茎の基部または茎に沿って生えていて植物をしっかり固定している。しかし、仮根は養分や水の吸収においては重要ではない。それらは植物の表面全体から接種される。蘚類は一般に防水性ではなく、本当の維管束組織はない。しかし、ほとんどの種で完全に乾いてから再水和し、再び湿気が戻ると復活する。

多くの種では、植物の先端の部分で受精が行われ、ここに配偶子を生じる期間（配偶子嚢）がある。雄性でも雌性でも配偶子嚢には柄があり、細胞を分厚くする壁がある。

雄性の配偶子嚢は造精器と呼ばれるが、今棒状の形状をしている（1.8b’）。雄性の配偶子の右派造卵器と呼ばれるが、柄のある軽侮が長く中空のフラスコの形状をしている（1.8b）

造精器でおこった有形分裂で生じた細胞は２本の鞭毛をもった運動性の精子に分化する（1.8b’）。造卵器には１つの卵細胞があり、中央の部屋に保持している。

造精器が成熟すると、こじあけられ、精子が押し出される。そして雨粒や水の被膜の中を造卵器まで泳いでいく。軽侮に達すると管が下がってきて、精子のうちの一つが大きな卵細胞と融合する（1.8c）。造精器は乾燥した気候では開くことはないので、精子の輸送は安定したものである。

○配偶子が異型接合を行うことの長所は何か。

●資源の保護。精子が運動性であり、数が多く小さいことより、受精が実際に起こるのを確実にしている。卵細胞の数は少ないが大きいことにより、接合氏を維持するための資源の保護につながる。

○蘚類の受精を確実にするため不可欠な環境とは何か。

●水分。配偶体を覆っている水の被膜でも雨水でも精子が造卵器まで泳いでいけるようにする。

受精の結果生じた複相細胞である接合子は、有糸分裂によって分裂して胚になり、最終的に子嚢柄と胞子嚢から成る胞子体になる（1.8d）。胞子体は母体となる配偶体に一生付着し続け、いくつかの組織に葉緑体があり光合成ができたとしても、完全に独立することはない。

たいてい表面に気孔があり気孔が開閉するが、その特徴は維管束植物の胞子体でも見られる。胞子嚢で減数分裂が起こり、それぞれの母細胞は最終的に４つの単相の胞子になる。未成熟の胞子嚢はたいていcalyptraという薄い保護キャップで保護されているが、それは鮮蓋というふたのようなものが現れ、胞子嚢が成熟すると、失われる。鮮蓋とは、環状の緑歯を生じさせるために、胞子嚢から分裂したものである。polytrichumnoの緑歯は融合して胡椒入れのような穴のある隔膜になるが、そこから胞子が放出される（1.9）。他の蘚類では、緑歯は自由に水を取り入れたり失ったりするが（吸湿性がある）、乾燥した条件では外側や内側に屈折し（1.9b）、湿気があると胞子嚢は閉じる。それゆえ胞子は緑歯が開いているとき（乾燥しているとき）放出され、風に乗って胞子嚢から離れたところへ運ばれる。ほとんどの蘚類が胞子の分散のために乾燥した条件を必要とし、胞子は腐食耐性、防水性の壁により守られている。

発芽のとき、蘚類の胞子は始めに短繊維の枝分かれした緑の糸状体を生じさせる（1.8h）。この藻類のような十分に生長しきっていない段階は蘚類やコケ類に独特のものである。最終的に糸状体は芽のような組織を生じさせるが、そこから配偶体が発達する。

○成熟した配偶体、胞子体、糸状体のうち、蘚類のライフサイクルのどの段階が最も乾燥に弱いと予想されるか。

●糸のように細い構造をしているため、糸状体が最も乾燥に弱い

OTHER BRYOPHYTES:LIVEWORTS AND HORNWORTS

コケ類は蘚類よりも原始的なグループに属するとみなされている。生息地は非常にじめじめした保護された環境に限られている。配偶体は２種類の基本的な生育形態を持つ。

○（1.11a,b）より、２種類の生育形態を示せ。

●⇒（1.11a）：葉状体と呼ばれる平らな形態

　⇒（1.11b）：蘚類に似た葉の多い形態

marchantiaは葉状体からなるコケ類である。配偶体は無性で、造精器と造卵器は円盤状で固定されている（1.11c）marchantiaの精子は雨水によって造卵器まで運ばれる。他のほとんどのコケ類では、性器は蘚類と同じで、葉状体やleafy shoot（1.11b）に近いものと分類されライフサイクルも蘚類と似ている。

蘚類とコケ類の胞子体には顕著な違いもあり、例えば、コケ類の胞子体は光合成を行わない。胞子嚢には鮮蓋や緑歯がなく、単に裂けて開くか側壁に切込みができ、弾糸（1.11e,f）と呼ばれる特有の細胞によって胞子の分散が促進される。

○（1.11f）より、弾糸のどのような構造により胞子の分散が促進されるか。

●らせん状に太くなった壁（吸湿性）により、弾糸が完全に乾ききるにはむらがでてしまい、巻きつくことによって胞子が空気中に飛び出す。

ツノゴケ類は他のコケ植物より種類が少なく、蘚類やコケ類より原始的なのか進化したものなのかは不明である。緑藻に似ている特徴もあれば（でんぷんを合成する固有の部分を含む葉緑体が細胞にたった１つしかないことなど）、後に進化した蘚類や維管束植物と似ている部分もある（胞子体に気孔がそんざいすることなど）。外見上ツノゴケ類は葉状体からなるコケ類のように見えるが、コケ類や蘚類とは違って１年のうち短期間しか生存せず、育つのは主に冬である。

○（1.12）より、Anthocerosの胞子体は蘚類・コケ類のものとどのように違うか。

●胞子体は子嚢柄と胞子嚢に分かれず、胞子体全体が胞子嚢のような役割をする（成熟するとねじれて裂け、胞子を放出する）。配偶子嚢（造精器と造卵器）は配偶体の表面からはみ出るのではなく、埋め込まれている（（1.8b,b’）と比較）。

ツノゴケ類の胞子嚢は一生を通して成長し続け、配偶体に付着している。ツノゴケ類という名前がついたのは胞子体が角のような形をしているからである（1.12a）。

よく「下等植物」とみなされるが、コケ植物は世界的に豊富で多雨林の中でもとりわけ多様である。蘚類であるSphagnumは地球の表面の１％を覆っている湿地では最も主要である。

平成18年度輪読ゼミ　　6/26 (月) 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　尾河朋美

1.4 LIFE CYCLES IN SEED PLANTS(p23～31)

最も陸上生活に完全に適応しているのは種子植物（裸子植物と顕花植物（被子植物））である。植物体は胞子体で、異形胞子性。雄性（小）胞子は花粉粒として放出されるが、雌性（大）胞子は胞子体に保持される。

1.4.1 ANGIOSPERMS

FLOWER STRUCTURE(Fig 1.20)

・sepal(萼片)：花の保護。

・petal(花弁)：明るい色がついている。

・stamen(雄蕊)：花粉が作られる小胞子嚢を含む。

・carpel(心皮)：たいてい２つが融合している。

・gynoecium(雌蕊)：大胞子嚢を含む。

・anther(葯)：花粉を保持する。

・stigma(柱頭)：花粉がつくところ。

・ovule(胚珠)：ovary(子房)の中にあり、大胞子を形成する。

大胞子が胞子体から放出されることはない。受精を遂げるためには花粉が柱頭に付かなければならないが、葯から花粉が放出された後、花粉は様々なメカニズムによって分散する（風、昆虫、鳥、コウモリ、水）。

・花の色と香りの目的：花粉を葯から柱頭へ運ぶ昆虫や動物を引き付ける。

・花以外の誘引物質：花蜜

顕花植物の大多数が雌雄同体なので、どんな受粉メカニズムであろうと、花粉が同じ花（あるいは同じ植物の花）の柱頭に付く可能性が生じる。すなわち、自家受精、そして同系繁殖が起こりうる。同系繁殖の割合を調節する非常に多くのメカニズムが進化してきた。例えば、雌雄同株の植物は、１つの花には１つの性しかない（単性）が、雄花も雌花も同じ植物から生じる。

また、完全に自家受精、同系繁殖の可能性を排除するシステムとして、違う植物から生じる単性花がある。これらの植物は雌雄異体である。(Fig 1.21)

THE DEVELOPMENT OF POLLEN AND EGG CELLS

花粉(Fig 1.22)

葯の中で４つの花粉嚢（小胞子嚢）が生じ、それぞれの花粉嚢の中の母細胞が減数分裂によって４分子の大胞子を形成し、成熟して花粉粒になる(Fig 1.22b)。花粉粒は分裂して大きい栄養細胞と小さい生殖細胞を生じさせる(Fig 1.22c)。

一度花粉が柱頭に付くと、開いて花粉管を形成し、柱頭に入り込み、花柱を下方に向かって伸びる(Fig 1.22d)。花粉粒の栄養細胞と生殖細胞は花粉管を移動し、生殖細胞は２つの精細胞に分裂する。

卵細胞(Fig 1.23)

珠心の中の１つの大きな細胞が減数分裂によって４つの細胞（大胞子）に分かれるが、そのうち３つは退化する。残った大胞子はさらに核分裂し、大きくなって雌性配偶体（胚嚢）を形成する。胚嚢の核は３回分裂して８つの核を生じさせる。

２つの核が中心に移動して二核の細胞を形成する。珠孔に最も近接した３つの核は卵細胞と２つの助細胞を形成する。

FERTILIZATION AND SEED DEVELOPMENT

花粉管が花柱を下に向かって伸びた後、珠孔を通って胚珠に入り込み、胚嚢に達する。最後に、助細胞のうちの一つに入り込んだ後、精細胞を放出しながら花粉管の先端が分解する。精細胞は卵細胞まで移動し、精細胞の核と卵細胞が融合する。もう一つの精細胞は助細胞から移動し、二核の中央細胞と融合し、三倍体の細胞を形成する(Fig 1.24ab)。三倍体の細胞は細胞壁を形成することなく繰り返し分裂する(Fig 1.24c)。核分裂が�ｮ結すると養分を蓄える組織（内胚乳）が形成される。両方の精核が融合するので、この全体のプロセスは重複受精と呼ばれ、被子植物に特有のものである。

胚は未発達の根、シュート、１つか２つの子葉からなる。胚珠は種子、珠皮は種皮、子房は果実になる。

1.4.2 COMPARISONS WITH GYMNOSPERMS: WHY ARE ANGIOSPERMS SO SUCCESSFUL?

裸子植物には花粉や胚珠はあるが、花を形成することはない。その代わり、花弁や萼片のない雄性円錘体と雌性円錘体があり、ポリネーションはほとんどいつも風によるものである。風の流れよりも花粉媒介動物に頼る被子植物のほうが、その確率は高い。

花はその香り、色、花蜜によって、花粉媒介動物を誘引する。

花粉ベクターの例(Fig 1.25)

(b)アラム・マクラタム（サトイモ科アラム属）：腐敗したような臭いでハエを引き付ける。

(d)ヒメフウロ：色の付いた花弁によって昆虫を誘導する。

(e)ミツバチラン：花の外見がハチのようであることから、交尾しようとしている雄のハチを引き付ける。

被子植物と裸子植物の違いは受精と種子成長においても見られる。裸子植物では重複受精は起こらないので、三倍体の内胚乳は形成されず、発達中の胚の養分は雌性配偶体に依存する。裸子植物の種子は子房の中で保護されず、被子植物の果実にあたる部分はない。

被子植物の種子分散メカニズムは裸子植物よりも多様で、親植物から遠くへ分散させる。裸子植物の風による分散は単純なものであるが、種子植物の持つ風散種子は複雑である。裸子植物の種子は鱗片で囲まれていて、動物によって運ばれるが、種子植物には動物による種子の分散の手助けとなる多様なメカニズムがある（例えば：通行する動物の外被に種子を付着させる粘着性の付加物など）。

要するに、被子植物が成功したのは、水から独立した生殖メカニズムの進化だけではなく、その効果的な戦略（受精の機会を増やすだけでなく、種子を保護し、養分を与え、分散させる）による。

平成18年度輪読ゼミ　　5/29(月) 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　尾河朋美

1. PLANT EVOLUTION AND STRUCTURE （p.14～23）

1.3.2 SPOROPHYTE-DOMINATED FERNS

ほとんどのシダ植物の葉には防水性のクチクラがあり、水の浪費を制限するので、比較的乾燥耐性がある。しかし、シダ植物はたいてい日陰の環境で生育する。コケシノブ科のシダであるHymenophyllum tunbridgense(1.15c)などは、とても乾燥による影響を受けやすい。シダ植物は大きさも形も様々であるが、その植物体はすべて胞子体の世代である。

蘚類と比べると、典型的なシダの配偶体は小さく細いひも状やハート型をした短命の前葉体である(1.14a)。単細胞の仮根によって湿った土地に付着している。前葉体には葉緑体があるが、水の浪費に対する対策がほとんどできていないので、湿気のある場所に生息する。配偶体が地下にあるため光合成をせず、共生している菌類からエネルギーを得るものもある。

蘚類と異なり、シダ植物の造精器と造卵器は表面よりむしろ前葉体の組織の奥まったところに形成される(1.14abc)。造精器と造卵器は形状も形態も蘚類のものと似ていて、精子や卵細胞や受精のプロセスは実質全く同じである。

受精卵（複相の接合子）が発芽するとき、aerial shootsとyoung rootsが形成されるまでは前葉体に依存しているが(1.14e)、前葉体がなくなると自力で支えるようになる。成熟した胞子体は葉と茎と地下の根茎からなる。全体の構造は蘚類のleafy shootsより丈夫で陸地の生活に適している。葉の表面は気孔のある防水性のクチクラで覆われており、根と植物体間の水や無機養分の輸送を担う高度な維管束系、支えとなる丈夫な細胞を持つ。

シダの胞子嚢は胞子嚢群と呼ばれる構造をとり、集団化している(1.14g)。ハナワラビ(1.15a)やセイヨウゼンマイ(1.15b)では葉全体が胞子を生じる組織のようになっているが、オシダ(1.13b,1.14)の胞子嚢群は葉の裏側にあり、保護のため包膜で覆われている(1.14h)。

厚い壁を持つシダの胞子は乾燥耐性があり、乾燥した大気中に激しく放出される(1.16b,c)。

多くのシダの胞子体は乾燥した環境で生育し、繁殖するが、受精のときの精子の移動には露や雨水が必要となる。温帯のシダの胞子嚢は夏の終わりごろ生じるのに対し、前葉体は

冬期に生じる。

1.3.3 COMPARING LIFE CYCLES OF FERNS AND MOSSES

蘚類では葉の多い配偶体が支配的な世代であるのに対し、シダでは葉の多い胞子体である。

ある程度、蘚類の胞子体もシダの胞子体も胞子の分散においては水分に依存している（正確には水分の欠乏）が、シダの胞子は丈夫な厚い壁を持つので、乾燥条件では蘚類より長く生存できる。

・蘚類の配偶体…群がって生育することにより、水分を節約でき、また、体が乾燥しきっても復活できる。　

・シダの配偶体…組織が細く、体が乾燥すると生存できないため、湿地で繁殖する。

・蘚類の胞子体…一生の間配偶体に依存しており、未発達のクチクラがあるため、乾燥条件にはそんなに弱くはない。

・シダの胞子体…非常に短期間配偶体に依存している。比較的しっかりした多くの葉を持つが、葉にはクチクラがあるため、水の浪費はほとんど問題ではない。

にもかかわらず、放出された胞子がストレスの少ないコンディションで配偶体を生じさせるように、多くのシダが陰の多い最適な条件で生育する。

1.3.4 HETEROSPORY: THE NEXT STEP

コケ植物でもシダ植物でもこれまでは全く同じ胞子を形成する、同形胞子性であるとみなされてきた。しかし、２種類の異なる胞子を形成する、異形胞子性の種がシダ植物の中に存在する。種子植物はすべて異形胞子性であり、水から独立したライフサイクルの重要な進化の段階であるとみなされる。

異形胞子性のシダはすべて水生である。異形胞子性のシダは水生の生活に適応するために進化したとみなされていて、この環境に関連する独特のライフサイクルの特徴を持つ。それと比較すると、イワヒバや種子植物の異形胞子形成は陸上生活に適応してきたようである。

Selaginella selaginoides(1.19a)は葉の基部の円錐体の中に胞子を生じさせる。２種類の胞子が同じ円錐体の別の胞子嚢から生じる。小胞子嚢から生じる、多くの小さい小胞子と、大胞子嚢から生じる、１～１２個（種によって異なる）の大きな（１�@にも及ぶ）大胞子である(1.19b)。胞子は、同時に、また、母体となる植物の近くに跳ばされるので、小胞子と大胞子はすぐ近くに着地できる。

○(1.19d)で、大胞子に何が起こっているか。

●厚い胞子の中で細胞分裂が起こっている。そして裂け、大配偶体が突き出してくる。大胞子から突き出した表面には卵細胞を含む造卵器と仮根がある。（残りの部分は養分貯蔵組織）

成熟した小配偶体(1.19c)はたった１つの養分を含む細胞と造精器からなる。精子は雌性配偶体まで泳いで行くため水の膜を必要とする。受精後、胞子体の胚は大配偶体の中で貯蔵された養分に依存して成熟する。

Selaginellaでは、精子が卵細胞に達するために自由に移動できる水が必要であるが、雌性の大配偶体も、雄性の小配偶体も、厳密には独立していない（胞子に蓄えられた養分に依存し、胞子の中に保持されている）。種子植物では、雌性の大胞子は実際には大胞子嚢から放出されるわけではなく、雄性の小配偶体が卵細胞のすぐ近くに配偶子（精子）を放出するので、受精のとき自由に移動できる水は必要でない。

○独立した配偶体が浪費的だという可能性があるのはなぜか。

●多くが、次の複相の世代に発展する接合子を形成することのできる配偶子を形成するために生存するわけではないため。

母体となる植物が養分を貯蔵する大胞子を保持することにより、この浪費を最小にしている。同じように、有効な卵細胞との受精を確実にするために必要な相当な数の雄性配偶子も浪費的である。しかし、種子植物の受精のメカニズムはこの浪費さえも減少させる。

１．５　細胞の構造と機能

　　緑藻類（植物の祖先）は、水の多い環境で育つ。その結果、光を最大量にとるのに浮かぶため、不可されてきたものが必要ではなくなった。水で運ばれてきた栄養は、植物の表面から吸収されるため、大きい多細胞の藻類さえ特別な吸収性などは必要ない。

　全ての維管束植物の胞子体は頂生の細胞の胚で生じる。若い細胞では壁は細く、それらは水の吸い上げによって拡がる。

　　早生の陸地の植物は湖のふちや川岸に集落し、ほふく性がある。その上、光の奪い合いは発育を維持する能力のある細胞のタイプの進化に対する刺激があると考えられている。土からの栄養、大気からの光、CO2である。そして細胞と組織、機能の何らかを知ることなしに植物形態を理解するのは不可能だ。分化した細胞と組織は生長するための生殖に平行して発達している。

１．５．１　柔組織

　　柔組織の細胞は大きさ、形がとても変わりやすい。よくある特色はそれらが生育し、核、細胞質を持ち、多面体のひし形になる傾向があり、また薄い細胞壁もあることだ。細胞壁の薄さには、それらが隣り合った組織からの圧力で変形させられるという理由がある。隣接した細胞は原形質細胞膜と呼ばれる壁を通って気孔につながれている。小さい分子はたいていこれらの気孔に自由に入り、細胞間での輸送と情報の中で鍵となる機能をしている。内部の圧力のせいで非木材のような組織の支えで、物質の貯蔵を供給する。例えばジャガイモの塊茎のデンプンであり、柔組織として分類されている細胞は全ての植物に見られる。

１．５．２　細胞の特殊化

　　細胞のタイプの４つの重要な例は、貯蔵柔組織、柵状組織、師管、輸送細胞ではない。

貯蔵柔組織はデンプンのような形で蓄積される。

　　クロロプラストや緑でない色素体の中のデンプン

　　柵状組織は被子植物の葉の上の方の表面にある。これらの細胞はクロロプラストで密集していっぱいで、光合成の主な場所である。

　　師管は植物の光合成による生成物を運ぶ、維管束の一部である。師管は師管の端と端をつないでできた。それらには生長におけるオルガネラや核を含んでいないが、細胞質は大量の繊維状のPプロテインを含んでいる。

輸送細胞は柔細胞のように見える。吸水性を持ち、併細胞は輸送細胞として機能する。

形成層

　　形成層は若く、小さい柔細胞で、縦にきると長方形のような形で、細い壁を持ち､規則的に並ぶ。分裂能力があり、分裂組織は成長点にある。分裂組織は柔細胞のような特殊化した組織のもとにある。二次分裂組織は組織の成長に関わり、例えば植物の器官が傷ついた時、新しい保護の層を作る。また、コルク形成層は組織内に空気を送り込み、コルク形成層と細胞の産物は周皮と呼ばれる。

厚い壁の生きた細胞

　　多くの細胞は柔細胞の特性によって特殊化される。コケ植物の細胞壁の外側の層は、セルロースのよって厚くなる。それらはクチン、スベリン、又はろうのような防水物質

　に部分的に覆われる。

表皮細胞は表皮の層の外側にある。茎では外側の細胞壁はより厚く、クチンの層に覆われている。ろうを分泌し、より防水性をあげ、さらに草食動物や昆虫から守ろうとする。

コケ植物が簡単に水分が蒸発する傾向にあるのは、発達した表皮があまりないからである。クチンは防水層を作る脂肪質で、酵素触媒反応を必要としない。

厚角組織細胞は、堅く、内部の組織を取り囲む。厚角細胞組織は成長期の器官にあり、伸び続ける。内胚細胞は細胞の１つ１つの層を形作り、根の中心組織を囲み、中心柱と境界を示している。これらの細胞が若いとき、リグノースベリンは連続のバンドを形づくるため壁を作る。カスパリ－線内皮の壁を通るイオンと水の受動輸送を減少させる。始めに水とイオンの動きがおさえられる。なぜならセルロース壁にある気孔はリグニンとスベリンにふさがれているからだ。内胚の中に時折、薄い壁の細胞があり、それらは薄い壁の細胞があり通過細胞として関係する。

　　　　　　　６／５　吉田　菜見子

　　　　　　　　　　　　　　　P３９～

１．５．３　‘DEAD’CELLS

　　細胞にはリグニンによって厚くなった壁を持つものがある。細胞は一度木質化すると細胞は死んでしまい、例えばプログラム細胞死やアポトーシスがある。木質化した細胞はとても強く、組織を支えるという重要な役割を持つ。組織中のリグニンの存在は維管束の特色を意味しており、コケ植物では見つかっていない。

　　木部は導管、仮導管、木質繊維、木部柔組織で構成され、導管と仮導管は植物に水を送る。柔細胞は貯蔵機能を持ち、仮導管は末端壁では細いが、細胞壁の切断面では厚く見える。広い内腔のよって起きる水の抵抗はほとんどないため、導管は特に根から葉や茎のすばやい水輸送において重要である。

　　柔組織の側壁、柔細胞は、隣り合い、連結した細胞で壁孔として知られている。壁孔は細胞の厚さによって、単壁孔、縁壁孔に分けられる。

　　リグニンは始めに仮導管と導管のセルロース細胞壁の中に存在しているが、すぐに変化し、リグニンはねじれの形状をとる。木部はこの方法で太くなり、伸長を続ける。仮導管と導管はより太く、重くなり、はしごのようならせん状の形をとる。

　　仮導管は始め、デボン紀から古生マツバラン類の化石で発見されたがその後、全ての植物のグループで存在した。仮導管は初期のシダ植物、球果植物を含めた高木も支えられる程の強さを持つ。それに比べて導管は被子植物とシダ植物の特色である。

　　厚壁細胞と機能は完全に予備的な役割である。厚壁細胞は繊維として知られ、木部のような他の組織の一部として存在する。繊維組織は長く細く、厚い膜と隣接した単壁孔を持つ。これらは導管、仮導管には劣るが、厚角細胞よりさらに硬い。

　　柔らかく、短命な組織の支えとして現われた厚壁組織と厚角組織の進化は、植物の性質の始まりと関係する。初期の被子細胞は木のような多年生植物で、原始的被子植物の特色を持ち、単子葉類と双子葉類で分類している。

ＳＵＭＭＡＲＹ　１．５

�@ 壁の強さの基本は生きている細胞中のセルロース、リグニン又はスベリンである。

�A 柔組織は基本的な細胞のタイプである。他の細胞は葉緑体に貯蔵柔組織、柵状細胞のような機能を持ち、光合成の重要な場所である。光合成産物を運ぶ師管と併細胞は

　輸送である。

�B 表皮細胞を含む厚い壁をもつ細胞は外側にロウの表皮を持ち、厚角細胞は組織を支えている。

�C 植物組織が大きくなるには第一次、第二次分裂が起こる。第二次細胞組織は層になり、

コルク形成層は樹皮の元になる。

�D　支えとしての死細胞は厚壁組織、木部繊維、仮導管、導管を含む。仮導管、導管は根から土の上で成長する部分まで水と栄養を送る。

１．６．１　　SUPPORT　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　現在、肥大化した壁の細胞は支えの役割を果たしていることは知られている。例えば、厚角細胞は茎や葉の表面の中に組織として存在する。厚壁細胞組織は被子植物の大部分の、木質化していない茎の皮層の要素として存在している。

　　支えは厚角細胞により、若い器官の厚膜組織は木部によって支えられている。木質化していない器官で水輸送に関する仮導管､導管の役割は支えの役割よりももっと重要である。しかし木質化した植物ではそこで二次肥厚が水輸送ではなく支えの機能を引き起こす。現在のシダ類と化石のヒカゲノカズラ類は、支えを木部には頼らず、皮層の木質化した細胞に支えられている。仮導管と師部は、マツバランと初期のシダ類の化石で見られる。初期の維管束では中心として存在するが、被子植物では形成されない。

１．６．２　　ROOTS

　　根は陸生植物では２つの異なる機能を持つ。土の上に固定され、水と栄養を吸収する。しかしながら古代植物は、被子植物のように全て根に頼っているわけではなく、それらは地下茎を持つ。若い茎の一部から現れる根は不定根になる。最も初期のよく知られた根茎は化石の古生マツバラン類である。不定根でないものは裸子植物と被子植物に限られており、大きい根の形態をとり、栄養を貯蔵する。あるいはそれらは土の表面で、広げた網のように分布している。ほとんどの双子葉類は不定根ではない根のシステムだが、単子葉類では比較的少し成長する。また、短命な第一根はすぐにたくさんの不定根の現れによって取り替えられる。全ての根は根毛を持ち､根の先端にある。そして水と栄養の吸収の主な部分となっている。

輪読ゼミ　第３回　６／２６　Ｐ４５～　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　吉田　菜見子

１．６．３　ＳＴＥＬＥＳ

　　全ての組織の根と茎の内部は中心柱が存在する。種々の中心柱の構造は、それぞれの植物で進化する。例えば木部の中心にあるかたい円柱は根とほとんどの茎の特徴であり、導管組織の輪は双子葉類の茎の特徴である。単子葉類では導管は中心柱に散在している。

　　原生中心柱とされている硬い円柱は、導管構造の装置でそこでは圧力がストレスとして存在する。肥厚した細胞が空洞の円柱に並ぶ時に弾力性ができ、そこは木髄の柔組織でいっぱいになる。双子葉類、特につる植物では茎は柔軟性を持つ。

　　一般に種子植物の若い茎は中心柱を持ち、成長するにつれて、第二次分裂組織が空洞の円柱か硬い円柱のどちらかで新しい導管組織を作る。

　　双子葉類の茎では一時形態の形成層は初期の維管束で、その後単子葉類でも見つかった。そして木部と師部を区別しながら形作る。しかし維管束の出現と分裂の間に柔組織の層が存在する。そのうち、維管束は中身のある中心柱と空洞の中心柱を取り囲む。

　　根の二次成長の過程は同じであるが、根の維管束の量は５つ以上ということはほとんどない。形成層の細胞の境界線は弧を形作り、その後師部の内側と木部の外側で作られる。そして木質化した根では細胞の重要なものは外側よりも内側で形作られる。

１．６．４　ＬＥＡＶＥＳ

　　最も初期の、現代のwhisk　fernsのような陸生植物は単純な原生中心柱を持ち、直立したシュートを持つ。これらのwhisk　fernsのようなシュートは小葉と呼ばれる光合成をする茎の発生がおこり、化石では６０cmのも及ぶものもある。これらは最も単純な葉の形状で１つの葉脈しかない。

　　巨大葉はwhisk　fernsのような枝分れしたュートから由来し、進化は分化したより高い方の枝と関連している。また、いくつかの導管は葉の進化において最も早い時期から本来の場所にある。大きくなった葉の表面積は明らかに植物の光合成ポテンシャルのためであり、巨大葉は全ての、後に発展する植物の種類を現させた。最近では電子顕微鏡の出現で単子葉類、双子葉類の特徴となる構造をよくわかっているが、巨大葉は形態構造で大きな進化を示してきた。裸子植物とシダ植物の葉はつるやトゲなどの重要な変化がおきている。

１．６．５ ＳＨＯＯＴ　ＳＹＳＴＥＭＳ　ＡＮＤ　ＧＡＳ　ＥＸＣＨＡＮＧＥ

　　水は絶えず、葉の表面から蒸散している。もし植物が水の消費に制限がなければ、シュートの表面は保護のための形態が必要になってくる。いくらかのコケ類が葉や葉状体の表面の原始的表皮を持って以来、乾燥した土地での植物の変化で、早い時期に進化してきた。多くの植物の表面はいくらかの毛のようなものを持っており、それが表面で空気をとらえる働きをもつ。これは水のロスを減少させるためである。

　　葉の組織では穴は気孔として知られている。それらは閉じたり開いたりしており、それによってガス交換を容易にする。気孔の開閉は大いに水のロスを減少させる。

　　しかしガス交換は光合成に不可欠で、CO2は葉に入り、水のロスは根から葉まで栄養と水を送るために必要である。そのため、この仕組み（水のロスは制限するが、ガス交換は行われる）をうまくつりあわせなければいけない。気孔は主に葉の裏側にあり、気孔は孔辺細胞と接しており、内部と外部の状況によって形を変える。気孔はコケ植物の配偶体では生じないが、胞子体の胞子のうに存在する。またすべての植物の配偶体に存在する。