Rubiscoおよびアクアポリンの定量
ATTO compact PAGE twinを利用したSDS-PAGEによるRubiscoの定量(測定が容易)
SDS-PAGEによるRubiscoとタンパクの定量
ウエスタンブロッティングによるアクアポリンの定量
ATTO compact PAGE twinを利用したSDS-PAGEによるRubiscoの定量
試薬の準備
試薬の略称
・HEPES:2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperadinyl] ethansulfonic acid
・PMSF:phenylomethanesolfonyl fluoride
・LDS:lithium dodecyl sulfate
・PVPP:poluvinyl polypyrrolidone
・APS:ammonium Peroxodisulfate ペルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)
・SDS;sodium dodecyl sulphate ドデシル硫酸 ナトリウム
・BPB;bromo phenol blue
・TEMED;N,N,N',N'-tetramethylethylenediamine
◆RuBisco抽出バッファ 100mL(-20℃保存)
| 試薬 |
量 |
最終濃度 |
はたらき |
| 500mM HEPES(pH 7.5、25℃) |
10 mL |
50mM |
バッファ。pH調整 |
| Triton-X-100 |
0.2 mL |
0.20% (w/w) |
界面活性剤。タンパク質を可溶化する。 |
| 2-メルカプトエタノール |
0.7mL |
0.70% (v/v) |
タンパク質のSS結合を切断する。 |
| 100mM モノヨード酢酸 |
2mL |
2mM モノヨード酢酸 |
タンパク質のSH基をアルキル化する。 |
| glycerol |
25mL |
25%(v/v) |
サンプルの比重を高くしてサンプルがウエルの底に沈むようにする。 |
| 100mM PMSF、イソプロパノールに溶解する |
使用直前に添加 |
1mM |
タンパク質の分解を防ぐ(プロテアーゼインヒビター)。 |
| 6% LDS |
使用直前に添加 |
1%( w/v) LDS |
難溶解性のタンパク質を可溶化する。 |
| PVPP |
使用直前に添加 |
-- |
ポリフェノールやアルカロイドを取り除く。 |
| total |
100 mL |
|
|
◆◆ストック液
| 試薬 |
調整方法 |
保存 |
| 500mM HEPES(pH 7.5、25℃) |
HEPES 11.915 g (1/20 mol)を100mLの蒸留水に溶解しHClでpHを調整する。 |
4℃ |
| 6% LDS |
LDS 6 g を100 mLの蒸留水に溶解。 |
4℃ |
| 100mM モノヨード酢酸 |
モノヨード酢酸(ヨード酢酸)1.8595g(1/100mol)を100mLの蒸留水に溶解。 |
4℃ |
◆2*Laemliiバッファ(分注して-20℃で保存)
| 試薬 |
量 |
最終濃度 |
| 0.5M Tris-HCl (pH 6.8) |
2mL |
100 mM |
| 10% SDS |
4mL |
4% |
| グリセロール |
2mL |
20%(v/v) |
| 蒸留水 |
0.8mL |
|
| 1% BPB |
適量 |
液の色が紺色になるまで |
| Total |
10mL |
|
Rubiscoの抽出
- Rubisco抽出バッファ10mLに対して0.1mLの100mM PMSFをスターラーで攪拌しながら少しずつ加え、氷中で保存する
- 乳鉢に液体窒素を注ぎ(1/3程度)、葉切片(1cm2)を入れてすりつぶす。
- PVPP を0.01g(小さいスパーテル小さじ一杯)加え、さらにRuBisco抽出バッファを0.5mL加えてすりつぶす。
- 6% LDSを0.1mL加えて混合する。
- サンプル液(500µL)をエッペンチューブに移してしっかりとふたをし、95℃で10min反応させる(ウオーターバスを用いる)。エッペンに入れるサンプル液は半分程度にする。
- 4℃、12000rpmで10min遠心し、その上清をとる。保存する場合は4℃で。2週間以内に分析しないときにはディープフリーザーで保存する 。
- サンプル液50 µL に2*Laemliiバッファ50 µL を加え、さらに10 µL の2-メルカプトエタノールを添加して混合する。
- 95℃で5 min 反応させる。
電気泳動
◆◆ストック液
| 試薬 |
調整方法 |
保存 |
| 30%アクリルアミド |
アクリルアミド 29.2gとN,N'-ビスアクリルアミド0.8gとを蒸留水に溶解し100mLとする。 |
4℃、1ヶ月 |
| 1.5M Tris-SDS(pH 8.8) |
Tris 18.2g とSDS 0.4gを蒸留水に溶解する。HClでpHを8.8に調整し100mLにメスアップする。 |
4℃、1ヶ月 |
| 0.5M Tris-SDS(pH 6.8) |
Tris 6.1g とSDS 0.4gを蒸留水に溶解する。HClでpHを8.8に調整し100mLにメスアップする。 |
4℃、1ヶ月 |
| 10% APS |
APS(過硫酸アンモニウム)100mgを1.0 mL 蒸留水に溶解する。 |
-20℃、数ヶ月。 |
| 泳動バッファ |
Tris 1.5g、グリシン7.2g、SDS 0.5gを蒸留水に溶解し500mLにメスアップする。 |
室温、2ヶ月。10倍濃縮液ならさらに保存期間が長い。 |
濃縮ゲル、分離ゲルの作成
◆分離ゲル 12.5%濃度 コンパクトゲル2枚分
・30%アクリルアミド 3.75 mL
・1.5M Tris-SDS 2.25mL
・蒸留水 3.0mL
・10% APS 40µL
・TEMED 5µL
◆濃縮ゲル コンパクトゲル2枚分
・30%アクリルアミド 0.45 mL
・0.5M Tris-SDS 0.75mL
・蒸留水 1.8mL
・10% APS 10µL
・TEMED 5µL
- 分離ゲル溶液を作成する。10% APSとTEMEDは最後に加えて泡立たないように静かに混合する。TEMEDを加えると重合が始まるので手早く次の作業に移る。
- ATTOのゲル作成器にゲル溶液を静かに注ぐ。
- ゲル溶液の上に100µLずつ蒸留水を重層する。
- 20分程度で重合が完了する。室温が高い方が反応は早い。
- 重層した蒸留水を捨て、濃縮ゲル溶液で一回洗浄した後、濃縮ゲル溶液を分離ゲルの上に注ぐ。
- コウムを差し込んで静置。20分で重合が完了する。
泳動
- Compact PAGE twinの泳動槽に泳動バッファを入れる。
- ゲル作成器からゲルを外し、コウムを静かに抜き取る。
- 泳動バッファでウエルを洗浄する。
- ゲルプレートを泳動槽にセットし、上部槽に泳動バッファを注ぐ。
- ウエルの歪みや気泡の有無をチェック。ゆがんでいたらシリンジの針でまっすぐにする。
- キャピラリーチップを使ってマーカーとサンプル液を2-8µLずつウエルに注入する。マーカーは各社から出ているが、Bio-rad社のプレステインドマーカーは泳動の途中でもタンパク質分離がモニターできて便利である。
- すぐに泳動開始。30分程度で泳動が終了する。
染色:bio radのbio-safe coomasieを使用する場合
- 手袋をしてゲル板をとりはずし、スペーサ付きガラス板を下面にして、コテでゲル板をこじあける。 濃縮ゲルを取り除き、ゲルの左右をコテで切る。
- ゲル板をタッパーウエアに入れた蒸留水の上で逆さまにして、ゲルの端をめくって中に入れる。
- 5分振盪,蒸留水の交換を3回繰り返す.CBBのフロントラインが消えるまでゲルを洗浄する。洗浄が不十分だときれいに染色できない
- bio-safe coomasie液をゲルが浸る程度に入れ,30〜60分振盪.すぐにバンドが見えてくる.
- バンドが適当な濃さになったら染色液を回収し,蒸留水で30分水洗.染色液は再利用できる.ゲルは蒸留水の中で保存.割れやすいので注意する。
- スキャナなどでゲルの像をスキャンし画像をパソコンに取り込む。各種画像処理ソフトで解析を行う。
SDS-PAGEによるタンパク質とRubiscoの定量
植物の葉からRubiscoを抽出し、SDS-PAGEによって定量する方法を説明します。前述のCompact PAGE twinを利用した方法と重複するところがあります。抽出液は、植物の種類(常緑、落葉、作物など)によって、適宜変えます。
1. RuBisco抽出液の準備
落葉広葉樹用の抽出液の例を示します。
◆可溶性タンパク抽出バッファ(4℃保存)
・50mM HEPES (pH7.5 25℃)
・0.7%(w/v) ポリエチレングリコール2000
・0.2%( w/v) PVPP (insoluble) 室温保存;使用直前に添加
・1mM PMSF 100mM PMSFを-20℃保存;使用直前に添加
◆RuBisco抽出バッファ(-30℃保存)
・50mM HEPES (pH 7.5、25℃)
・0.20% (w/w) Triton-X-100
・0.70% (v/v) 2-メルカプトエタノール
・2mM モノヨード酢酸
・25%(v/v) glycerol
・1%( w/v) LDS 6% LDSを4℃保存;使用直前に添加
タンパクの抽出
- 可溶性タンパク抽出バッファ10mLに対して0.1mLの100mM PMSFをスターラーで攪拌しながら少しずつ加え、氷中で保存する
- 乳鉢に液体窒素を注ぎ(半分程度)、凍った葉切片(リーフディスク2枚程度)を入れてすりつぶす。
- タンパク抽出バッファを0.5mL加え、さらにPVPPをスパーテルに1杯程度加えてよく混合する
- 可溶性タンパク定量用に、100 μLを分取する(氷中保存)。なるべく手早く4℃、12000rpmで5min遠心し、 上清をもう一度4℃、12000rpmで10min遠心して、その上清を4℃保存する。すぐに分析しないときにはディープフリーザーで保存する
- クロロフィル定量用に、100 μLを分取する。手早く蒸留水100 μL とアセトン800μLを加えてvoltexで混合し、パラフィルムでふたをして2min放置した後、3000rpm、室温で5min遠心。上清を-15℃で保存し、なるべくその日のうちに(9h以内)吸光度を測定する。
- 乳鉢にRuBisco抽出バッファを0.5mL加える。さらに6% LDSを0.2mL加えて混合する。
- サンプル液(500μL)をエッペンチューブに移してしっかりとふたをし、5min煮沸する。エッペンに入れるサンプル液は半分程度にする(ふたが飛び跳ねて開く)
- 4℃、12000rpmで5min遠心し、上清をもう一度4℃、12000rpmで10min遠心して、その上清を4℃保存する。2週間以内に分析しないときにはディープフリーザーで保存する
可溶性タンパクの定量
- 染色液と標準タンパクのチェック
染色液や標準タンパクが古いと定量が不正確になるので、まずチェックを行う。標準タンパクを染色液に溶かし、 voltexしてから5min待って595nmの吸光度を測定する
BioRad BSA (1.4 mg/mL) 10μL + DyeReagend (1/5) 1000μLのとき、595nmの吸光度は2.1程度
- サンプル液の希釈
BioRadのBladford法では1〜20 μg/mLの範囲で測定する必要があるので、サンプル中のタンパク濃度がこの範囲になるように希釈する(インゲンの葉ではリーフディスク2枚で5倍希釈)。サンプル10μL、5μL、2μLをDyeReagend (1/5) 1000μLに溶かし、発色の程度をみる。薄い青色程度が適当。希釈したサンプル液をすぐに分析しないときは、ディープフリーザーで保存する
- サンプル液10μL + DyeReagend (1/5) 1000μLをvoltexしてから5min待って595nmの吸光度を測定する。標準タンパクの希釈液で検量線を描く。染色液が吸着するので、セルはディスポタイプを使用する。測定は染色液を加えてから1時間以内に行う。
ゲルにロードするためのRuBisco抽出液の準備
- 標準 RuBiscoの希釈液を用意する。RuBisco(1.957μg/μL)なら、蒸留水で1/2、1/4、1/8に薄める(ゲルにアプライしたとき、タンパク量が10μg程度になるようにする)。市販品(たとえばシグマなど)のRubiscoは純度が低いので、Bradford法によるタンパク定量だけでなくSDS-PAGEを同時に行ってBSAなどと比較し、タンパク濃度を決定する。
- RuBisco抽出液100μLと2×Laemliiバッファ100μLをエッペンに入れ、さらに10μLのβ-メルカプトエタノールを加えて攪拌する。
- ふたをして5 min煮沸する
- 3000rpm(室温)で数分遠心してサンプル液をエッペンの底に集める。すぐに分析しないときには4℃保存。 長期保存はディープフリーザーで。
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2. SDS-PAGE用 ストック溶液の調整
●2*Laemliiバッファ(分注して-20℃で保存)
0.5M Tris-HCl (pH 6.8) 2mL
10% SDS 4mL
グリセロール 2mL
蒸留水 0.8mL
1% BPB 1.2mL
Total 10mL
●30%アクリルアミド溶液(4℃で保存)
アクリルアミド(モノマー) 29g
N,N'-メチレンビスアクリルアミド 1g
蒸留水 メスアップ
Total 100mL
アクリルアミドは神経毒なので、手袋・マスクをして作業する.1ヶ月以内に使用.
●10% SDS (常温で保存)
SDS 10g
蒸留水 100mL
低温では結晶が析出するので、ウオーターバスで暖めて使用する
●10% APS (分注して-20℃で遮光保存)
過硫酸アンモニウム 2.0g
蒸留水 20mL
数ヶ月は使用できる。古くなると、ゲルが固まりにくくなる
●1.5M Tris-HCl (pH 8.8)(4℃で保存)
Tris-HCl 54.5g
蒸留水 メスアップ
Total 300mL
Trisを250mLの蒸留水に溶解し、20℃にして(氷で冷却)、HClでpH 8.8に調整する。その後蒸留水でメスアップして300mLにする
●0.5M Tris-HCl (pH 5.8)(4℃で保存)
Tris-HCl 6.0g
蒸留水 メスアップ
Total 100mL
Trisを80mLの蒸留水に溶解し、20℃にして(氷で冷却する)、HClでpH 6.8に調整する。その後、蒸留水でメスアップして100mLにする
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3. ゲルの作成
ゲルの厚さが薄く、大きさが小さいほど、泳動するときの電流を小さくでき、泳動の時間も早い。また、ゲルが薄い方がバンドはシャープになる(厚さ2mmの標準ゲルでは、泳動時間が4時間も必要)。分離ゲルのアクリルアミド濃度は、濃くなるほど分離できるタンパク分子量は小さくなる。RuBisco定量のためには8%程度(大サブユニットの分子量は50〜55kDa),RuBiscoの分解産物をみるためには12.5%,RuBiscoのsmall subunit をみるためには14%とする。
| ゲル濃度 |
6% |
8% |
10% |
12% |
15% |
| 分離できるタンパク量 |
66〜200kDa |
31〜200kDa |
21〜200kDa |
14〜116kDa |
14〜97kDa |
試薬の調整
| 分離ゲル |
| 試薬 |
濃度 |
8% |
12.5% |
8% |
12.5% |
| |
|
ミニゲル4枚 |
ミニゲル4枚 |
標準ゲル4枚 |
標準ゲル4枚 |
| Total |
- |
22.5 mL |
22.5 mL |
60 mL |
60 mL |
| 蒸留水 |
- |
10.6 mL |
7.1mL |
28 mL |
19 mL |
| 30%アクリルアミド |
- |
6.0 mL |
9.4 mL |
16 mL |
25 mL |
| 1.5M Tris-HCl (pH 8.8) |
0.375M |
5.6 mL |
5.6 mL |
15 mL |
15 mL |
| 10% SDS |
0.1% |
230 μL |
230 μL |
600 μL |
600 μL |
| 10% APS |
0.033% |
125 μL |
125 μL |
333 μL |
333 μL |
| TEMED |
0.05% |
12μL |
12μL |
32 μL |
32 μL |
| 濃縮ゲル |
| Total |
- |
- |
7.5mL |
15mL |
- |
| 蒸留水 |
- |
- |
4.33mL |
8.7mL |
- |
| 30%アクリルアミド |
4.75% |
- |
1.19 mL |
2.4mL |
- |
| 0.5M Tris-HCl (pH 6.8) |
0.125M |
- |
1.88mL |
3.8mL |
- |
| 10% SDS |
0.1% |
- |
75 μL |
150μL |
- |
| 10% APS |
0.033% |
- |
63μL |
126 μL |
- |
| TEMED |
0.1% |
- |
6μL |
12 μL |
- |
●泳動バッファ(10倍)常温で保存
Tris-HCl 15.15g
グリシン 72.05g
SDS 5g
蒸留水 メスアップ
Total 500mL
スターラーで攪拌して十分に溶解させる
●前固定液
メタノール 20 mL
酢酸 7.5 mL
蒸留水 72.5mL
Total 100mL
使用直前に調整する
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2. 電気泳動
ゲル板の組み立て
- 実験台にペーパータオルを敷き、ガラス板とガスケットを100%エタノールで拭く。
- スペーサが上側になるようにスペーサ付きガラス板を置いて、ガスケットを(スペーサの少し外側に)敷き、ミミ付きガラス板の、切り欠き部分が内側(スペーサ側)になるように載せ、クリップでとめる。ガスケットがガラスに挟まらないように注意する。
- ゲル板の切り込みから約3cm(ミニゲルは2.5cm)のところに印をつける
分離ゲルの作成
- TEMED以外の試薬を室温に戻してから、三角フラスコに入れてよく混合する。泡立たないように注意。試薬の温度が低いと泡立ちやすいので、アスピレータで軽く脱気する。ピペットの先端を液につけてTEMEDを加え、すばやく混合し、すぐにゲル板の切り込みから約3cmのところまで溶液を流し入れる。
- パスツールピペットで、水飽和ブタノールを1cm程度重層する。ピペットを左右に動かしながら少しずつのせる(いっぺんにのせるとゲルが波打つ)。
- 20〜60分静置してゲルを固める。20℃以下ではなかなか重合しないので、冬季は30℃のインキュベータで重合させる。一時間たっても固まらない場合は、作り直す(試薬の配合ミス、APSが古い、温度が低すぎる、混合が不十分、などが原因)。
- 水飽和ブタノールを臭いがしなくなるまで十分に洗い流し、蒸留水でリンスする。すぐに使わないときには、ゲル保存用バッファを入れてラップをかけ、4℃で保存する(数ヶ月は使用可)。すぐに使うときには、ペーパータオルの上に逆さまにしておいておく(ゲルが乾燥しないように注意)。ゲル板の内側の水滴などをできるだけきれいにぬぐっておく。
濃縮ゲルの作成
- 分離ゲルと同じようにして試薬を混合し、TEMEDを加えてからすぐに、ゲル板の切り欠きより少し下の部分まで溶液を流し入れる。入れすぎるとコームが抜きにくくなるので注意。気泡が入らないように注意しながらコームを静かに差し込む。ゲル溶液の上に、蒸留水を数滴重層する。
- 30分程度静置してゲルを固める。冬季は30℃のインキュベータで重合させる。
泳動
- コームをゆっくり抜き取り、泳動バッファでウェルを2回洗う
- バッファ漕(分離タイプの場合は下部のみ)に、なるべく泡立たないように泳動バッファを入れる。泡が多ければ消泡剤を一滴たらす
- ゲル板のクリップをはずしてガスケットを取り除き、ゲル板表面の塩やゲルのかすをきれいに取り除く。ゲル板の底にバッファを吹き付けて泡を取り除く。ゲル板を斜めにして泡が入らないようにしながら、切り欠き部分を内側にして泳動槽にゲル板をセットしてクリップでとめる。
- 分離タイプの場合は上の槽に、一体型の場合は中の槽に、泳動バッファをたっぷりと入れる。分離タイプの場合は、バッファが漏れていないか確認する
- ガラス板にサンプル番号をマークし、ウェルの歪みとゴミをチェック。歪んでいるときにはシリンジの側面で修正する(底をつついたり、大きくウェルを動かさないようにする)。
- サンプルの必要量(10 μL)をマイクロピペット(10〜100 μL用)でとり、ウェルの底にゆっくりと注入する。なるべく手早く作業する。
- 電極をセットして泳動開始。ミニゲル2枚の場合は、20〜40mAの定電流で泳動する。感電するので液面には絶対に触れない。BPBフロントラインがゲルの底から1cmまでになったら電源を切る。
染色
- 手袋をしてゲル板をとりはずし、スペーサ付きガラス板を下面にして、コテでゲル板をこじあける。ゲルの右隅を切り取って印をつける。分離ゲル を取り除き、ゲルの左右をコテで切る。
bio radのbio-safe coomasieを使用する場合
- ゲル板をタッパーウエアに入れた蒸留水の上で逆さまにして、ゲルの端をめくって中に入れる。
- 5分振盪,蒸留水の交換を3回繰り返す.標準サイズゲルの場合は6回以上蒸留水を交換し,CBBのフロントラインが消えるまでゲルを洗浄する。洗浄が不十分だときれいに染色できない
- bio-safe coomasie液をゲルが浸る程度に入れ,30〜60分振盪.すぐにバンドが見えてくる.
- バンドが適当な濃さになったら染色液を回収し,蒸留水で30分水洗.染色液は再利用できる.ゲルは蒸留水の中で保存.割れやすいので注意する。
CBB R-250でメタノール染色する場合
- 前固定液にゲルを入れて室温で30分振盪。
- 前固定液を捨てて染色液を入れ、室温で30分振盪。
- 染色液をビンに戻し、脱色液でゲルを軽く洗ってから、脱色液をたっぷり入れてキムワイプを数枚入れ、室温で数時間〜一晩振盪。キムワイプは適宜交換する。
- ゲルを乾燥させたいときには、バックグラウンドの色が抜けたら、脱色液をビンに戻して、イオン交換水でゲルを軽く洗い、イオン交換水をたっぷり入れて室温で30分振盪。ゲル乾燥機で乾燥させる
- ゲルを乾燥させないときには、前固定液の中にゲルをつけて乾燥しないようにしておく。
泳動後のゲルの保存
乾燥させずに保存する場合、Bio Safe Coomasieで染色したゲルは蒸留水を入れたチャック付きビニール袋に入れて4℃で保存。割れやすく、 かびやすいので注意。メタノール染色した場合には蒸留水の代わりに前固定液を入れて4℃で保存。
ゲルの乾燥
高価な乾燥用キットが市販されているが、使用しなくても乾燥できる。ただしひびわれてしまうことがあるので、タンパク量の定量のために スキャナでゲルをスキャンするときには、念のために乾燥する前にも行っておいた方が安心。用意するものは
- ゲルの大きさよりも周囲が3-5cm程度大きいアクリル板(透明)厚さ3mm以上(曲がらないように)
- ゲル乾燥用セロファン(ロール状のタイプが安い)。アクリル板の大きさにあわせて切っておく
- アクリル板が入るくらいの大きさのバット
- 10%ソルビトール溶液
- ガムシロップ
方法
- アクリル板をきれいに洗浄する
- バットに10%ソルビトール液をたっぷり入れる。
- ゲル乾燥用セロファンをソルビトール液に浸した後アクリル板に乗せ、気泡を追い出す
- セロファンの上にゲルを載せ、ガムシロップを10ml程度たらす
- ゲルの上にもう一枚ソルビトール液に浸したセロファンを載せ、気泡を完全に追い出す
- ゲルの周りを囲むようにクリップでとめる。プラスチック製のクリップがよい(金属製は錆が付着する)。
- 蒸留水でソルビトール液を簡単に洗い流す
- ゲルを水平に保ったまま40℃のオーブンで24時間以上乾燥させる
(注)セロファンとゲルの間に気泡が入っているとゲルがひび割れる。あらかじめゲルを10%ソルビトール液に5分程度 浸しておくと多少は割れにくくなる。
Rubiscoの定量
- Bio Safe Coomasieで染色したゲルは泳動終了後、蒸留水を入れた透明なバットに移す。
- 気泡やゴミが入っていないことを確認し、スキャナで読み込む
- 乾燥したゲルはそのままスキャナにセットして読み込む
- 標準Rubioscを用いて検量線を描き、サンプルのRubisco濃度を計算する。
Rubisco content ( μg/m2) =
ゲル上での濃度(μg) × {2×(抽出バッファμL+LDS μL)}/泳動したサンプル量(μL) ×1/リーフディスク面積(m2)
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5. SDS-PAGE tips
- ゲル板の組み立て
- ガラス板はゴミなどがないようにきれいにしておく。
- クリップはプラスチック製の方がよい。金属製のクリップを使うとガラス板に錆が付着してとれにくくなる。
- 分離ゲルの作成
- アクリルアミドは古くなるとバンドがきれいに出ないので,作成してから1ヶ月以内に使い切る
- 分離ゲルの上には,蒸留水でなく,ブタノールを重層する方が,上面がきれいに整いやすい。
- ゲル板内部の水分は,濾紙でぬぐう。キムワイプを使うとほこりが付着する。
- 濃縮ゲルの作成
- ゲルは少な目に入れ,上面にはブタノールの代わりに蒸留水を静かにのせる
- インキュベータで重合させるときには,ゲルが干からびないように注意する(特にミニゲル)
- 泳動
- 長期間保存してあったRubisco抽出液では、バンドがきれいに出ないことが多い。
- コームを抜いた後,ウエルの中に残っている未重合のゲルをシリンジで取り除いてから,泳動バッファで2回洗う.底に孔をあけないよう注意する。
- 泳動バッファを入れた後,かならず底面の気泡を除くこと(バンドが歪む原因になる)
- サンプルをロードする前に,30mA〜60mAでpre runを行う(イオンフロントがウエルの底に到達するまで;標準ゲルなら10分,ミニゲルなら5分程度)
- サンプルのロードは,ゲルローディングチップで行う.
- 染色
- Bio Rad社の調整済み染色液(Bio-Safe Coomasie)が便利で,感度も高い.しかし、特に標準サイズゲルでは,SDSを十分に洗い流さないと,バンドがぼやけてしまう.SDSが残っていなければ,染色をはじめてから5分程度でバンドが見えてくる.BPBのラインがほぼ消え、振盪しても泡がたたなくなるまで十分に洗う。
ミニゲル:200mLのDWで5min,3回洗う
標準サイズゲル:200mLのDWで5min,5回洗ったあと,1 h 洗う.
- Bio Radの染色液は,染色が終わった後,回収して再利用できる.ゲルを十分に洗浄した後に使用した染色液は,2−3回は再利用できる.染色液がいちじるしく褪色しているときには再利用できない.
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さまざまな組成の可溶性タンパク抽出液
針葉樹、広葉樹、作物によって、抽出液の組成を変える。抽出を阻害する物質(ポリフェノール、酸化酵素など)が含まれている場合には、これらを取り除く操作が必要。
●針葉樹用 Tissue et al. (1993)の方法 50mg fresh weight (leaf disc 1cm2*2) /1mL buffer
| 最終濃度 |
試薬 |
試薬の濃度 |
量 |
| 100mM |
HEPES (pH 7.5、25℃) |
1M |
10mL |
| 5mM |
Ha2EDTA |
0.5M |
2mL |
| 0.70% |
ポリエチレングリコール20000 |
100% |
0.7 mL |
| 2% |
PVP 24000 (soluble) |
100% |
小さじ一杯 |
| 14mM |
β-メルカプトエタノール |
100% |
1.4mL |
●常緑樹用 Kursar & Corey (1992)の方法
| 最終濃度 |
試薬 |
試薬の濃度 |
量 |
| 50mM |
HEPES (pH 7.5、25℃) |
500mM |
10mL |
| 0.20% |
Triton-X-100 (w/w) |
10% |
2mL |
| 0.70% |
β-メルカプトエタノール |
100% |
0.7 mL |
| 2mM |
モノヨード酢酸 |
100mM |
2 mL |
| 25% |
glycerol |
100% |
25mL |
| 1mM |
PMSF |
100mM |
1mL |
●広葉樹用 Landry & Pell (1993)の方法
| 最終濃度 |
試薬 |
試薬の濃度 |
量 |
| 100mM |
Bicine (pH 8.0、25℃) |
0.5M |
20mL |
| 0.2mM |
Ha2EDTA |
0.5M |
0.04mL |
| 20mM |
MgCl2 |
|
|
| 20mM |
NaHCO3 |
|
|
| 5mM |
Tiourea |
|
|
●草本植物 Eichelmann and Laisk (1999) ヒマワリ・インゲン 6-8cm2/3mL buffer
| 最終濃度 |
試薬 |
試薬の濃度 |
量 |
| 80mM |
Tris-HCl (pH6.8) |
0.5M |
16mL |
| 2% |
SDS |
10% |
20mL |
| 100mM |
dithiothreitol |
0.5M |
20mL |
| 850mM |
glycerol |
100% |
7.80% |
●草本植物 イネ
| 最終濃度 |
試薬 |
試薬の濃度 |
量 |
| 100mM |
NaH2PO4 (pH 7.0) |
|
|
| 1mM |
PMSF |
100mM |
1mL |
| 1% |
PVP 24000 (soluble) |
100% |
小さじ一杯 |
| 1.00% |
β-メルカプトエタノール |
100% |
1 mL |
アクアポリンの定量
使用する試薬類の調整
◆ストック液
| 溶液の種類 |
薬品名 |
分子量 |
使用量(g) |
溶媒量 |
保存方法など |
| 500mM Tris (pH7.8) |
Tris |
121.14 |
12.11 |
200mL DW |
HClでpH調整。滅菌後4℃保存) |
| 100mM EDTA (pH8.0) |
EDTA |
372.24 |
3.72 |
100mL DW |
NaOHでpH調整。滅菌後4℃保存) |
| 100mM PMSF |
PMSF |
174.19 |
1.74 |
100mL DMSO |
室温保存) |
| |
DTT |
154.25 |
|
|
室温 |
| |
スクロース |
342.3 |
|
|
室温 |
| 500mM Tris (pH6.8) |
Tris |
121.14 |
1.211 |
20mL DW |
HClでpH調整。滅菌後4℃保存) |
| 10% SDS |
SDS |
|
10 |
100mL |
常温。結晶析出時はウオーターバスで暖める) |
◆タンパク抽出バッファ(4℃保存) ・8mM EDTA (pH8.0)
・300mM スクロース
・50mM Tris (pH7.8)
・4mM DTT バッファ 10mLあたり6mg、使用直前に添加
・2mM PMSF 100mM PMSF in DMSOを室温保存;使用直前に添加
100mM EDTA (pH8.0) 16mL
スクロース 20.538g
500mM Tris (pH7.8) 20mL
計 200mL、4℃保存
◆ 2*Laemliiバッファ(0.5mLづつ分注して-20℃で保存 植物のタンパク質実験プロトコルより)
0.5M Tris-HCl (pH 6.8) 5mL
SDS 0.3g
グリセロール 3mL
蒸留水 2mL
DTT 0.93g
BPB 1.2mg
Total 10mL
◆泳動バッファ(10倍)常温で保存。スターラーで攪拌して十分に溶解させる
Tris-HCl 15.15g
グリシン 72.05g
SDS 5g
蒸留水 メスアップ
Total 500mL
◆ウエスタンブロッティング ストック溶液
◆ ◆10×PBS(ブロッキング・ウオッシュバッファ、pH7.4、室温)
試薬 使用量 最終濃度
NaCl 80g 137mM
Ha2HPO4・12H2O 29g 8.1mM
KCl 2g 2.7mM
KH2PO4 2g 1.47mM
Total 1000mL
◆ウエスタンブロッティング 使用溶液(セミドライ式ブロット用、ATTO社による)
ミニゲル1−2枚あたり各バッファ100mL
◆◆ブロッティングバッファA (pH 8.3、調整不要、室温保存)
Tris(MW121.14) 18.2g 0.3M
メタノール 25mL 5%
Total 500mL
◆◆ブロッティングバッファB (pH 8.3、調整不要、室温保存)
Tris 1.51g 25mM
メタノール 25mL 5%
Total 500mL
◆◆ブロッティングバッファC (ホウ酸でpH9.5に調整、室温保存)
Tris 1.51g 25mM
6-アミノカプロン酸 MW131.17 2.62g 40mM
メタノール 25mL 5%
Total 500mL
◆◆PBS-Tween-milk(ブロッキングバッファ、使用直前に調整)
試薬 使用量 最終濃度
10×PBS 40mL
10% Tween-20 10mL 0.25%
スキムミルク 20g 5%
Total 400mL
可溶性タンパク抽出
- 可溶性タンパク抽出バッファ10mLに対して100mM PMSF 200µL をスターラーで攪拌しながら少しずつ加える。さらに6mgのDTTをスターラーで攪拌しながら加える。氷中で保存。
- 乳鉢に液体窒素を注ぎ(1/4程度)、葉切片(0.3g、タバコの葉なら9cm2)を入れてすりつぶす。
- タンパク抽出バッファを0.9mL加えてよく混合する
- 4℃、10000rpmで10min遠心し、その上清を4℃保存する。2週間以内に分析しないときにはディープフリーザーで保存する
- タンパク抽出液100μLと2×Laemliiバッファ100μLをエッペンに入れ攪拌する。
- ふたをして70℃で10 min煮沸する
SDS-PAGE(ATTO CompactPAGEminiのプレキャストゲルを使用)
分離ゲルのアクリルアミド濃度は、濃くなるほど分離できるタンパク分子量は小さくなる。アクアポリン(31kDa) をみるためには12.5%とする。
| ゲル濃度 |
6% |
8% |
10% |
12% |
15% |
| 分離できるタンパク量 |
66〜200kDa |
31〜200kDa |
21〜200kDa |
14〜116kDa |
14〜97kDa |
- バッファ漕に、なるべく泡立たないように泳動バッファを入れる。
- ゲル板を斜めにして泡が入らないようにしながら、泳動槽にゲル板をセットしてクリップでとめる。
- 泳動バッファを入れる。
- ガラス板にサンプル番号をマークし、ウェルの歪みとゴミをチェック。歪んでいるときにはシリンジの側面で修正する(底をつついたり、大きくウェルを動かさないようにする)。
- サンプルの必要量(4µL)をマイクロピペットでとり、ウェルの底にゆっくりと注入する。チップはキャピラリーチップを使用。なるべく手早く作業する。
- 電極をセットして泳動開始。感電するので液面には絶対に触れない。BPBフロントラインがゲルの底から1cmまでになったら電源を切る。
ウェスタンブロッティング
- バッファを入れるバットを4つ用意する
- PVDF膜、ろ紙をゲルと同じ大きさに切る。
- PVDF膜はメタノールで湿潤した後、B溶液に浸し、30分以上振とうする。
- 泳動の終わったゲルもB溶液に浸しておく
- A溶液、B溶液、C溶液にろ紙を二枚ずつ浸けておく
- 陽極板の上に A溶液に浸したろ紙、B溶液に浸したろ紙、B溶液に浸したPVDF膜、B溶液に浸したゲル、C溶液に浸したろ紙 の順に重ねる。
- 手袋をはめた手で全体を押して気泡を取り除き、電極と密着させる。
- 一番上のろ紙にC液を滴らし、陰極板をセットし、リード線をつなぐ。 電源を設定し、定電流2mA/cm2ゲル面積(ミニゲルなら144mA 定電流、50V) で通電を開始。
- 30 ~40 分後ブロッティング終了。
抗体反応
- メンブレンをPBS中で5分間振盪する。
- PBS-Tween-milk中で1時間振盪する。
- PBSでしめらせたろ紙の上にタンパク転写面を下にしてメンブレンを置き、50kDa前後の部分だけを切り取る。
- PBS-Tween-milkをナイロンバッグに2mL入れ、1/100倍(20µL)の一次抗体(特異的抗体)を入れ、メンブレンを入れて25℃で1時間振盪する。
- メンブレンを取り出し、DWで軽く洗浄してからPBS-Tween-milkで30分振盪する。2回繰り返す。
- PBS-Tween-milkをナイロンバッグに2mL入れ、1/500倍(4µL)の二次抗体(ビオチン標識ヤギ抗ウサギIgG、バイオラッド)を入れ、メンブレンを入れて25℃で1時間振盪する。
- メンブレンを取り出し、DWで軽く洗浄してからPBS-Tween-milkで30分振盪する。2回繰り返す。
- メンブレンをDWで軽く洗浄し、発色液(AP発色キット、バイオラッド)に入れる。反応が終了したらDWで洗浄する。
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