Rubiscoおよびアクアポリンの定量 

ATTO compact PAGE twinを利用したSDS-PAGEによるRubiscoの定量(測定が容易)

SDS-PAGEによるRubiscoとタンパクの定量

ウエスタンブロッティングによるアクアポリンの定量

ATTO compact PAGE twinを利用したSDS-PAGEによるRubiscoの定量 

試薬の準備

試薬の略称
・HEPES:2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperadinyl] ethansulfonic acid
・PMSF:phenylomethanesolfonyl fluoride
・LDS:lithium dodecyl sulfate
・PVPP:poluvinyl polypyrrolidone
・APS:ammonium Peroxodisulfate ペルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)
・SDS;sodium dodecyl sulphate ドデシル硫酸 ナトリウム
・BPB;bromo phenol blue
・TEMED;N,N,N',N'-tetramethylethylenediamine

◆RuBisco抽出バッファ 100mL(-20℃保存)
試薬 最終濃度 はたらき
500mM HEPES(pH 7.5、25℃) 10 mL 50mM バッファ。pH調整
Triton-X-100 0.2 mL 0.20% (w/w) 界面活性剤。タンパク質を可溶化する。
2-メルカプトエタノール 0.7mL 0.70% (v/v) タンパク質のSS結合を切断する。
100mM モノヨード酢酸 2mL 2mM モノヨード酢酸 タンパク質のSH基をアルキル化する。
glycerol 25mL 25%(v/v) サンプルの比重を高くしてサンプルがウエルの底に沈むようにする。
100mM PMSF、イソプロパノールに溶解する 使用直前に添加 1mM タンパク質の分解を防ぐ(プロテアーゼインヒビター)。
6% LDS 使用直前に添加 1%( w/v) LDS 難溶解性のタンパク質を可溶化する。
PVPP 使用直前に添加 -- ポリフェノールやアルカロイドを取り除く。
total 100 mL    

◆◆ストック液
試薬 調整方法 保存
500mM HEPES(pH 7.5、25℃) HEPES 11.915 g (1/20 mol)を100mLの蒸留水に溶解しHClでpHを調整する。 4℃
6% LDS LDS 6 g を100 mLの蒸留水に溶解。 4℃
100mM モノヨード酢酸 モノヨード酢酸(ヨード酢酸)1.8595g(1/100mol)を100mLの蒸留水に溶解。 4℃

◆2*Laemliiバッファ(分注して-20℃で保存)
試薬 最終濃度
0.5M Tris-HCl (pH 6.8) 2mL 100 mM
10% SDS 4mL 4%
グリセロール 2mL 20%(v/v)
蒸留水 0.8mL  
1% BPB 適量 液の色が紺色になるまで
Total 10mL  

Rubiscoの抽出 

電気泳動 

◆◆ストック液
試薬 調整方法 保存
30%アクリルアミド アクリルアミド 29.2gとN,N'-ビスアクリルアミド0.8gとを蒸留水に溶解し100mLとする。 4℃、1ヶ月
1.5M Tris-SDS(pH 8.8) Tris 18.2g とSDS 0.4gを蒸留水に溶解する。HClでpHを8.8に調整し100mLにメスアップする。 4℃、1ヶ月
0.5M Tris-SDS(pH 6.8) Tris 6.1g とSDS 0.4gを蒸留水に溶解する。HClでpHを8.8に調整し100mLにメスアップする。 4℃、1ヶ月
10% APS APS(過硫酸アンモニウム)100mgを1.0 mL 蒸留水に溶解する。 -20℃、数ヶ月。
泳動バッファ Tris 1.5g、グリシン7.2g、SDS 0.5gを蒸留水に溶解し500mLにメスアップする。 室温、2ヶ月。10倍濃縮液ならさらに保存期間が長い。

濃縮ゲル、分離ゲルの作成

◆分離ゲル 12.5%濃度 コンパクトゲル2枚分

・30%アクリルアミド  3.75 mL
・1.5M Tris-SDS    2.25mL
・蒸留水     3.0mL
・10% APS    40µL
・TEMED     5µL

◆濃縮ゲル  コンパクトゲル2枚分

・30%アクリルアミド  0.45 mL
・0.5M Tris-SDS    0.75mL
・蒸留水     1.8mL
・10% APS    10µL
・TEMED     5µL

泳動

染色:bio radのbio-safe coomasieを使用する場合

SDS-PAGEによるタンパク質とRubiscoの定量

植物の葉からRubiscoを抽出し、SDS-PAGEによって定量する方法を説明します。前述のCompact PAGE twinを利用した方法と重複するところがあります。抽出液は、植物の種類(常緑、落葉、作物など)によって、適宜変えます。

1. RuBisco抽出液の準備 

落葉広葉樹用の抽出液の例を示します。

◆可溶性タンパク抽出バッファ(4℃保存)
・50mM HEPES (pH7.5 25℃)
・0.7%(w/v) ポリエチレングリコール2000
・0.2%( w/v) PVPP (insoluble) 室温保存;使用直前に添加
・1mM PMSF 100mM PMSFを-20℃保存;使用直前に添加

◆RuBisco抽出バッファ(-30℃保存)
・50mM HEPES (pH 7.5、25℃)
・0.20% (w/w) Triton-X-100
・0.70% (v/v) 2-メルカプトエタノール
・2mM モノヨード酢酸
・25%(v/v) glycerol
・1%( w/v) LDS 6% LDSを4℃保存;使用直前に添加

タンパクの抽出

可溶性タンパクの定量

ゲルにロードするためのRuBisco抽出液の準備

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2. SDS-PAGE用 ストック溶液の調整 

●2*Laemliiバッファ(分注して-20℃で保存)
0.5M Tris-HCl (pH 6.8) 2mL
10% SDS 4mL
グリセロール 2mL
蒸留水 0.8mL
1% BPB 1.2mL
Total 10mL

●30%アクリルアミド溶液(4℃で保存)
アクリルアミド(モノマー) 29g
N,N'-メチレンビスアクリルアミド 1g
蒸留水 メスアップ
Total 100mL
アクリルアミドは神経毒なので、手袋・マスクをして作業する.1ヶ月以内に使用.

●10% SDS (常温で保存)
SDS 10g
蒸留水 100mL
低温では結晶が析出するので、ウオーターバスで暖めて使用する

●10% APS (分注して-20℃で遮光保存)
過硫酸アンモニウム 2.0g
蒸留水 20mL
数ヶ月は使用できる。古くなると、ゲルが固まりにくくなる

●1.5M Tris-HCl (pH 8.8)(4℃で保存)
Tris-HCl 54.5g
蒸留水 メスアップ
Total 300mL
Trisを250mLの蒸留水に溶解し、20℃にして(氷で冷却)、HClでpH 8.8に調整する。その後蒸留水でメスアップして300mLにする

●0.5M Tris-HCl (pH 5.8)(4℃で保存)
Tris-HCl 6.0g
蒸留水 メスアップ
Total 100mL
Trisを80mLの蒸留水に溶解し、20℃にして(氷で冷却する)、HClでpH 6.8に調整する。その後、蒸留水でメスアップして100mLにする

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3. ゲルの作成 

ゲルの厚さが薄く、大きさが小さいほど、泳動するときの電流を小さくでき、泳動の時間も早い。また、ゲルが薄い方がバンドはシャープになる(厚さ2mmの標準ゲルでは、泳動時間が4時間も必要)。分離ゲルのアクリルアミド濃度は、濃くなるほど分離できるタンパク分子量は小さくなる。RuBisco定量のためには8%程度(大サブユニットの分子量は50〜55kDa),RuBiscoの分解産物をみるためには12.5%,RuBiscoのsmall subunit をみるためには14%とする。
ゲル濃度 6% 8% 10% 12% 15%
分離できるタンパク量 66〜200kDa 31〜200kDa 21〜200kDa 14〜116kDa 14〜97kDa

試薬の調整
分離ゲル
試薬 濃度 8% 12.5% 8% 12.5%
    ミニゲル4枚 ミニゲル4枚 標準ゲル4枚 標準ゲル4枚
Total - 22.5 mL 22.5 mL 60 mL 60 mL
蒸留水 - 10.6 mL 7.1mL 28 mL 19 mL
30%アクリルアミド - 6.0 mL 9.4 mL 16 mL 25 mL
1.5M Tris-HCl (pH 8.8) 0.375M 5.6 mL 5.6 mL 15 mL 15 mL
10% SDS 0.1% 230 μL 230 μL 600 μL 600 μL
10% APS 0.033% 125 μL 125 μL 333 μL 333 μL
TEMED 0.05% 12μL 12μL 32 μL 32 μL
濃縮ゲル
Total - - 7.5mL 15mL -
蒸留水 - - 4.33mL 8.7mL -
30%アクリルアミド 4.75% - 1.19 mL 2.4mL -
0.5M Tris-HCl (pH 6.8) 0.125M - 1.88mL 3.8mL -
10% SDS 0.1% - 75 μL 150μL -
10% APS 0.033% - 63μL 126 μL -
TEMED 0.1% - 6μL 12 μL -

●泳動バッファ(10倍)常温で保存
Tris-HCl 15.15g
グリシン 72.05g
SDS 5g
蒸留水 メスアップ
Total 500mL
スターラーで攪拌して十分に溶解させる

●前固定液
メタノール 20 mL
酢酸 7.5 mL
蒸留水 72.5mL
Total 100mL
使用直前に調整する

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2. 電気泳動 

ゲル板の組み立て

分離ゲルの作成

濃縮ゲルの作成

泳動

染色

泳動後のゲルの保存

乾燥させずに保存する場合、Bio Safe Coomasieで染色したゲルは蒸留水を入れたチャック付きビニール袋に入れて4℃で保存。割れやすく、 かびやすいので注意。メタノール染色した場合には蒸留水の代わりに前固定液を入れて4℃で保存。

ゲルの乾燥

高価な乾燥用キットが市販されているが、使用しなくても乾燥できる。ただしひびわれてしまうことがあるので、タンパク量の定量のために スキャナでゲルをスキャンするときには、念のために乾燥する前にも行っておいた方が安心。用意するものは

方法

Rubiscoの定量

Rubisco content ( μg/m2) =
  ゲル上での濃度(μg) × {2×(抽出バッファμL+LDS μL)}/泳動したサンプル量(μL) ×1/リーフディスク面積(m2)

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5. SDS-PAGE tips 

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さまざまな組成の可溶性タンパク抽出液 

針葉樹、広葉樹、作物によって、抽出液の組成を変える。抽出を阻害する物質(ポリフェノール、酸化酵素など)が含まれている場合には、これらを取り除く操作が必要。

●針葉樹用 Tissue et al. (1993)の方法 50mg fresh weight (leaf disc 1cm2*2) /1mL buffer
最終濃度 試薬 試薬の濃度
100mM HEPES (pH 7.5、25℃) 1M 10mL
5mM Ha2EDTA 0.5M 2mL
0.70% ポリエチレングリコール20000 100% 0.7 mL
2% PVP 24000 (soluble) 100% 小さじ一杯
14mM β-メルカプトエタノール 100% 1.4mL

●常緑樹用 Kursar & Corey (1992)の方法
最終濃度 試薬 試薬の濃度
50mM HEPES (pH 7.5、25℃) 500mM 10mL
0.20% Triton-X-100 (w/w) 10% 2mL
0.70% β-メルカプトエタノール 100% 0.7 mL
2mM モノヨード酢酸 100mM 2 mL
25% glycerol 100% 25mL
1mM PMSF 100mM 1mL

●広葉樹用 Landry & Pell (1993)の方法
最終濃度 試薬 試薬の濃度
100mM Bicine (pH 8.0、25℃) 0.5M 20mL
0.2mM Ha2EDTA 0.5M 0.04mL
20mM MgCl2    
20mM NaHCO3    
5mM Tiourea    

●草本植物  Eichelmann and Laisk (1999) ヒマワリ・インゲン 6-8cm2/3mL buffer
最終濃度 試薬 試薬の濃度
80mM Tris-HCl (pH6.8) 0.5M 16mL
2% SDS 10% 20mL
100mM dithiothreitol 0.5M 20mL
850mM glycerol 100% 7.80%

●草本植物 イネ
最終濃度 試薬 試薬の濃度
100mM NaH2PO4 (pH 7.0)    
1mM PMSF 100mM 1mL
1% PVP 24000 (soluble) 100% 小さじ一杯
1.00% β-メルカプトエタノール 100% 1 mL

アクアポリンの定量 

使用する試薬類の調整

◆ストック液
溶液の種類 薬品名 分子量 使用量(g) 溶媒量 保存方法など
500mM Tris (pH7.8) Tris 121.14 12.11 200mL DW HClでpH調整。滅菌後4℃保存)
100mM EDTA (pH8.0) EDTA 372.24 3.72 100mL DW NaOHでpH調整。滅菌後4℃保存)
100mM PMSF PMSF 174.19 1.74 100mL DMSO 室温保存)
  DTT 154.25     室温
  スクロース 342.3     室温
500mM Tris (pH6.8) Tris 121.14 1.211 20mL DW HClでpH調整。滅菌後4℃保存)
10% SDS SDS   10 100mL 常温。結晶析出時はウオーターバスで暖める)

◆タンパク抽出バッファ(4℃保存) ・8mM EDTA (pH8.0)
・300mM スクロース
・50mM Tris (pH7.8)
・4mM DTT バッファ 10mLあたり6mg、使用直前に添加
・2mM PMSF 100mM PMSF in DMSOを室温保存;使用直前に添加

100mM EDTA (pH8.0) 16mL
スクロース 20.538g
500mM Tris (pH7.8) 20mL
計 200mL、4℃保存

◆ 2*Laemliiバッファ(0.5mLづつ分注して-20℃で保存 植物のタンパク質実験プロトコルより)

0.5M Tris-HCl (pH 6.8) 5mL
SDS 0.3g
グリセロール 3mL
蒸留水 2mL
DTT 0.93g
BPB 1.2mg
Total 10mL

◆泳動バッファ(10倍)常温で保存。スターラーで攪拌して十分に溶解させる

Tris-HCl 15.15g
グリシン 72.05g
SDS 5g
蒸留水 メスアップ
Total 500mL

◆ウエスタンブロッティング ストック溶液

◆ ◆10×PBS(ブロッキング・ウオッシュバッファ、pH7.4、室温)

試薬      使用量   最終濃度
NaCl        80g   137mM
Ha2HPO4・12H2O 29g   8.1mM
KCl         2g    2.7mM
KH2PO4      2g    1.47mM
Total 1000mL

◆ウエスタンブロッティング 使用溶液(セミドライ式ブロット用、ATTO社による)

ミニゲル1−2枚あたり各バッファ100mL

◆◆ブロッティングバッファA (pH 8.3、調整不要、室温保存)

Tris(MW121.14) 18.2g 0.3M
メタノール 25mL 5%
Total 500mL

◆◆ブロッティングバッファB (pH 8.3、調整不要、室温保存)

Tris 1.51g 25mM
メタノール 25mL 5%
Total 500mL

◆◆ブロッティングバッファC (ホウ酸でpH9.5に調整、室温保存)

Tris 1.51g 25mM
6-アミノカプロン酸 MW131.17 2.62g 40mM
メタノール 25mL 5%
Total 500mL

◆◆PBS-Tween-milk(ブロッキングバッファ、使用直前に調整)

試薬 使用量 最終濃度
10×PBS 40mL
10% Tween-20 10mL 0.25%
スキムミルク 20g 5%
Total 400mL

可溶性タンパク抽出 

SDS-PAGE(ATTO CompactPAGEminiのプレキャストゲルを使用) 

分離ゲルのアクリルアミド濃度は、濃くなるほど分離できるタンパク分子量は小さくなる。アクアポリン(31kDa) をみるためには12.5%とする。
ゲル濃度 6% 8% 10% 12% 15%
分離できるタンパク量 66〜200kDa 31〜200kDa 21〜200kDa 14〜116kDa 14〜97kDa

ウェスタンブロッティング 

抗体反応 

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